第125話 白い世界の中で
――そのとき、空を
まるで
「あれ……さっきよりデカくなってない?」
シャルの声が、いつもの明るさを失っている。
村の広場に立つ
城の底部にある
円形に刻まれた文様は、
その光はまるで液体のように波打ち、中心に向かって集まっていく。
光の
まるで、
太古の兵器が目覚めたような
(やばい! あれ本当に
その考えは正しかったようで、
空気がゆがみ、光の向こうの
頭痛がするほどの
「まずいぞ。屋内――あの
ゴルドーの声が
黒い
まるで
そこまではおよそ900メートル。
その
光の収束が加速していく。空気が
まるで世界そのものが
「急いで! 村のみんなも!」
「お、おお……?」
シャルが
その
ゴルドーも全速力で走り出した。
重たい
さすがA級
その後に、
天から、低い
まるで
それは
音の波が体を
足を
時折足を
「くっ!」
シャルが後ろを
村人の数は明らかに減っている。ついてこれているのは三人だけ。若い男性たちだ。
子供や老人は早々に置いて行かれ、もう見えない。
声すら届かないほどの
光球は今や小さな月ほどの大きさまで
まるで太陽を見ているよう。目が痛くなるほどの光量だ。
「あと少しだ!」
ゴルドーが
足音が石の地面に
近づくにつれ、古い石の
そのとき、背後で何かが
まるで
それと同時に、異様な重圧が背中に伝わってくる。
まるで
「やばっ!」
シャルが
ゴルドーも、ギリギリのタイミングで
黒い
まるで目の前で太陽が
目を閉じていても、まぶたを通して
耳をつんざくような
「うっ……!」
シャルの
心臓が
まるで世界の終わりのような、
おそらく、一分ほどだったのだろう。
でも、その時間は永遠のように感じられた。時間の感覚が完全に
やがて
かわりに、耳鳴りのような音が
頭の中で、金属が共鳴するような音が鳴り続ける。
「み、みんな
シャルの声が、どこか遠くで聞こえたような気がした。まだ耳が正常に機能していない。
視界が
視界が
2人とも無事なようだ。
「ああ、なんとかな。だが、村の
シャルが
その動作に合わせて、
「外の様子……見に行こっか」
シャルの声が、
その声には、これから目にするものへの不安が
足が
そこに広がっていたのは――かつて見たことのない光景だった。
そこにあったのは、色を失った世界。
空は真っ白で、雲も太陽も見えない。ただ均一な白色が広がっているだけ。
まるで
村の建物は形を留めているものの、すべてが白く
民家も、畑の作物も、遠くに見える森も、あらゆるものがモノクロの世界のよう。
地面を
近くの木々は白い
「な、なにこれ……」
シャルの
ゴルドーの黒い
「村の人たちは!?」
シャルが
まるで音が遠くまで届かないように、空間そのものが
歩くたびに、白くなった
家々の窓は暗く、
開け放たれた
「おーい!
シャルの大声が村中に
広場に着くと、そこにはさっきまで
地面には
まるでその場で消えてしまったかのよう。
シャルが民家の中を調べ始める。
「……え?」
家の中に入ると、さらに異様な光景が広がっていた。
テーブルの上には、白くなった食事が置かれている。
スープの湯気が止まったまま。
パンに
まるで時が止まったような、そんな不自然な配置。
でも、人の姿だけがない。
「
シャルの
台所では、まだ白い火が消えていない七輪の上に、白く変色した
中のシチューは完全に
「ねえ、ミュウちゃん……」
シャルが、
「これって……人間、全部消えちゃったの?」
「……どうやら、そのようだな」
村人がいなくなったその光景は、
しかしあくまで冷静さを保ち、
「
「見てみろ。鳥も、虫も、動物の気配すらない。生命を持つものが、すべて消されてしまった」
ゴルドーの言葉に、改めて周囲を見回す。
確かに、鳥のさえずりも、虫の音も、どこにも聞こえない。
完全な
白い世界で、
それは、まるで絵の具を
「……それって、どうすればいいの?」
シャルの声に、
どうすればいいのか。……わからない。まったく、わからない。
……
白く
木々も、野原も、山々も、空も――すべてが色を失い、まるで白紙の世界のよう。
その光景に、
もう二度と、あの
草木の緑も、空の青さも、夕暮れの
何より、この世界にはもう何も――。
「……ん?」
そのとき、シャルが目を細めた。
「あそこ、なんか
白一色の世界の中に、ぼんやりと
「あの方角、まさか……アランシア王国か」
ゴルドーの言葉に、
「そういえば、アランシアはなんかかったいバリアがあるんだったよね! アレで
シャルの声が
その結界は、あのヴェグナトールの
「もしかしたら、アランシアなら……!」
シャルの声が生気を
「そうだ、アランシアなら何か分かる可能性はある。あの国の
ゴルドーの言葉に、
この色を失った世界の中で、アランシアだけが色を保っているということは、それだけの理由があるはずだ。
そして、その中にいる人々は、この
「ミュウちゃん、行こう! アランシアに!」
シャルが
白い世界に染まりきらなかった、小さな
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