コミュ障すぎて会話するだけでMPが尽きる最強ヒーラー〜追放されたけど、うるさい陽キャ剣士と組んで旅に出ます〜

第105話 力を取り戻せ！

　集落を離（はな）れて数時間、私（わたし）たちは道標（みちしるべ）のクリスタルに導かれながら進んでいた。

　当然疲（つか）れ果（は）ててしまうので、私（わたし）はちょくちょく魔法（まほう）で回復しながらだが……。

　イリスが先頭を歩き、その後ろをシャルと私（わたし）が続く。

　蒼（あお）い日差しに照らされたクリスタルの光が、道のりを示す。

　イリスの白銀の髪（かみ）が風に揺（ゆ）れる度（たび）、違和感（いわかん）を覚える。

　人間の髪（かみ）とは違（ちが）い、まるで光を帯びているかのように輝（かがや）いている。

　魔族（まぞく）なのに人間の姿をしているせいか、そういった微妙（びみょう）な違（ちが）いが逆に目立つ気がした。

　足元の暗紫色（あんししょく）の苔（こけ）を踏（ふ）むたび、赤い染（し）みが広がる。その光景に未（いま）だに慣れない。

　生温かい空気が、時折私（わたし）たちの間を通（とお）り抜（ぬ）けていく。

　粘（ねば）つくような感触（かんしょく）が肌（はだ）に残り、まるで温かいゼリーの中を歩いているみたい。どうにも気持ち悪い……。

「あー、そうだ。そろそろお昼ご飯にしない？」

　シャルが突然（とつぜん）立ち止まって声を上げた。

「食事……か」

　イリスがゆっくりと振（ふ）り返（かえ）る。魔界（まかい）の空気の粘性（ねんせい）のせいだろうか、その動きがやけに滑（なめ）らかに見える。

「夜穿（やせん）村でもらった食材、結構たくさんあるし！　それに、イリスもずっと歩きっぱなしだし、少し休んだ方がいいんじゃない？」

　シャルの心遣（こころづか）いに、イリスは少し考（かんが）え込（こ）む素振（すぶ）りを見せる。

　彼女（かのじょ）の瞳（ひとみ）が、陽（ひ）の光を反射してわずかに揺（ゆ）らめいた。

「……そうだな。休憩（きゅうけい）にするか」

　イリスの表情が柔（やわ）らかくなる。今まで保っていた威厳（いげん）のある雰囲気（ふんいき）が、少しだけ緩（ゆる）んだ。

　私（わたし）たちは大きなクリスタルの生えた場所で休憩（きゅうけい）することにした。

　クリスタルの柔（やわ）らかな光が、まるで街灯のように辺りを照らす。

　その光は定食屋のような、妙（みょう）に落ち着く雰囲気（ふんいき）を作り出していた。……場違（ばちが）いな例えだけど。

　シャルはリュックから、受け取った村の食材を取り出し始める。

　茜色（あかねいろ）の実や、紫（むらさき）がかった葉物の野菜のようなもの。それに半透明（はんとうめい）の塊（かたまり）。見たことのないものばかりだ。

　魔界（まかい）の食材からは、人間界のものとは違（ちが）う、独特の生命力のような匂（にお）いが漂（ただよ）ってくる。

　荷物を広げる音と、風にそよぐクリスタルの音が重なり、不思議な雰囲気（ふんいき）を醸（かも）し出（だ）す。

　キラキラとした音色は、まるで小さな風鈴（ふうりん）のよう。

　東方大陸を思い出すなぁ……リンは元気かなぁ……。

　まさか、魔界（まかい）でピクニックみたいなことをすることになるとは思わなかった……。

「イリス、これどう食べるの？」

　シャルが紫（むらさき）の野菜を掲（かか）げる。その葉からは、かすかに蛍光（けいこう）のような光が漏（も）れ出ている。

　まるで夜光虫のように、葉脈に沿って淡（あわ）い光が流れていく。

「ああ、それは生でも食べられるが……少し苦いかもしれん」

「ふーん？　……うわ苦っ！」

　シャキッとした音とともに野菜をかじったシャル。かなり渋（しぶ）そう。

　隣（となり）のイリスもまた、少し苦々しい顔で野菜を食べていた。

「土地の魔力（まりょく）が少ないせいなのか……どうにも味が悪いな」

「へー、前はこんなんじゃなかったの？」

「ああ。我（われ）が魔王（まおう）となり、土地を戻（もど）せればいいが……」

　深刻な顔で考え始めるイリス。……治す。治す、かぁ。

　ふと考えて、私（わたし）は紫（むらさき）の野菜に向かって杖（つえ）を構える。かすかな光が緑色の葉を包（つつ）み込（こ）む。

　その瞬間（しゅんかん）、野菜の色が鮮（あざ）やかになり、葉から漂（ただよ）う光も柔（やわ）らかなものに変わった。

　まるで朝露（あさつゆ）に濡（ぬ）れた野菜のように、みずみずしい輝（かがや）きを放っている。

「うわっ、なんか綺麗（きれい）！　えーと、味は……あっ、うまいかも！」

　シャルは再び一口葉をかじる。

　たぶん生で食べるようなものじゃないんだとは思うけど、それでも味は良くなったようだ。

「おお！　これは……」

　同じく野菜を食べたイリスが目を見開く。

　その表情には、かつての懐（なつ）かしさが浮（う）かんでいるようだった。

「昔、父が魔界（まかい）を治めていた頃（ころ）の野菜の味……。人間の力が、ここまで作用するとは」

　なんか照れくさい。けど、私（わたし）たちは順番に試（ため）してみることにした。

　魔界（まかい）の食材を広げ、私（わたし）の魔法（まほう）で浄化（じょうか）し、みんなで食べてみる。

　それは不思議な、けれど楽しい試食会のようだった。

　――すると突然（とつぜん）、周囲のクリスタルが激しく明滅（めいめつ）し始めた。

　まるで警報のように、けたたましい音を立てる。

「危険が近づいてきたようだな……」

　イリスが立ち上がり、辺りを警戒（けいかい）する。

　それを聞いて、シャルも素早（すばや）く剣（けん）を抜（ぬ）く。金属音が粘性（ねんせい）のある空気を切り裂（さ）く。

　そして、暗がりから姿を現したのは――人の姿をした魔族（まぞく）の一団。

　全員が黒と赤の装束（しょうぞく）に身を包み、胸には何かの紋章（もんしょう）のようなものが刻まれている。

　その紋章（もんしょう）からは、不自然な光が漏（も）れ出ていた。

「おや、これはこれは……」

　先頭の男が、にやりと笑う。

　長身の体格に、額から生えた短い角。真（ま）っ赤（か）な瞳（ひとみ）が、イリスを捉（とら）えていた。

「イリス様ではありませんか。お噂（うわさ）はかねがね……。まさか本当に復活されていたとは」

　男の言葉に、他（ほか）の魔族（まぞく）たちが身構える。彼（かれ）らの手には様々な武器が握（にぎ）られていた。

　剣（けん）に槍（やり）、斧（おの）――。しかし、どの武器からも同じような不自然な光が漏（も）れている。

「クロムウェル様からの命により、この地域の警備を任されている者です。

　イリス様のような……危険分子を殺すためにね」

　男は言葉を切り、イリスを値踏（ねぶ）みするように見つめる。

「何が危険分子だ。クロムウェルこそが簒奪（さんだつ）者だろう」

　イリスの声が響（ひび）く。しかし、その声には以前の力強さが感じられない。

　それを察したのか、男は更（さら）に嘲（あざけ）るような笑（え）みを浮（う）かべた。

「ハァッハッハッハ！　ずいぶんと弱々しい。その様子ではすっかり力をお失いのようで？」

　男が指を鳴らすと、魔族（まぞく）たちが円陣（えんじん）を組むように私（わたし）たちを取り囲んでいく。

　彼（かれ）らの胸の紋章（もんしょう）が不気味な輝（かがや）きを放つ。魔力（まりょく）が渦（うず）を巻くのを感じる。

「クロムウェル様から与（あた）えられし力。これこそが、新しき魔界（まかい）の象徴（しょうちょう）！」

　彼（かれ）らの体から溢（あふ）れ出（で）る魔力（まりょく）に、私（わたし）は鳥肌（とりはだ）が立つ。人間界とは違（ちが）う、重たく濃密（のうみつ）な力。

　それはイリスの持つ魔力（まりょく）と同質のものだった。

　シャルが私（わたし）の前に立ち、剣（けん）を構える。

「魔界（まかい）の事情とかよく知らないけど。旅の邪魔（じゃま）はさせないよ！」

　彼女（かのじょ）の挑発的（ちょうはつてき）な声に、魔族（まぞく）たちの表情が歪（ゆが）む。空気が重く、張（は）り詰（つ）めていく。

「魔王（まおう）の伴（とも）が人間風情（ふぜい）2人とはなぁ！　落ちぶれすぎて見ちゃいられねぇ！」

「まったくです。殺してクリスタルにしてやるのが慈悲（じひ）というものですな」

　男が両手を広げると、その手の先に暗い炎（ほのお）が立（た）ち上（あが）る。

　その炎（ほのお）は、まるで意思を持つかのように蠢（うごめ）いていた。

「では処刑（しょけい）といきましょうか。不穏分子（ふおんぶんし）も、人間の分際で魔界（まかい）に足を踏（ふ）み入（い）れた愚（おろ）か者（もの）たちも、まとめてね」

　一瞬（いっしゅん）の静寂（せいじゃく）の後、戦いが始まった。

　男の放った黒い炎（ほのお）が、シャルに向かって襲（おそ）いかかる。

　シャルはそれを剣（けん）で弾（はじ）き返（かえ）すが、炎（ほのお）は意思を持つように曲がり、再び襲（おそ）いかかってくる。

「チッ、しつこいな！」

　シャルが魔力（まりょく）を纏（まと）わせた剣（けん）で炎（ほのお）を払（はら）いのける。

　黒い炎（ほのお）が四散する中、他（ほか）の魔族（まぞく）たちも一斉（いっせい）に攻（せ）め寄（よ）せてきた。

　私（わたし）は即座（そくざ）に回復の準備を始める。が、イリスの姿が目に入る。

　彼女（かのじょ）は明らかに力が入らない様子で、じりじりと後退していた。

「イリス、後ろに下がって！」

　シャルの声で、私（わたし）はイリスの元へと駆（か）け寄（よ）る。

　魔族（まぞく）の攻撃（こうげき）をシャルが必死で食い止めているが、数が多い。

「くっ……このような下位の魔族（まぞく）に……！」

　イリスの悔（くや）しげな呟（つぶや）き。彼女（かのじょ）の誇（ほこ）りは、今の状況（じょうきょう）を受け入れられないのだろう。

　シャルの剣（けん）が、魔族（まぞく）たちの武器と激しくぶつかり合う。金属音が響（ひび）き、火花が散る。

　黒い炎（ほのお）に赤い魔力（まりょく）。魔族（まぞく）たちの放つ魔力（まりょく）が、まるで網（あみ）のように張（は）り巡（めぐ）らされていく。

　シャルは見事な剣（けん）捌（さば）きで応戦するが、それでも傷が増えていく。私（わたし）は即座（そくざ）に回復を続ける。

　その光景を見て、先頭の男が再び嘲笑（あざわら）う。

「虫けらが、粘（ねば）るだけは得意らしい。さっさと死になさい！」

　彼（かれ）が手をかざすと、黒い炎（ほのお）が渦（うず）を巻いて巨大（きょだい）化する。

　その威力（いりょく）は、明らかに先程（さきほど）より増していた。シャルでさえ一歩後退（あとずさ）る。剣（けん）を構え直し、額の汗（あせ）を拭（ぬぐ）う。

「ミュウちゃん、イリス！　なんか手はないの！？」

　シャルの声に、私（わたし）は必死で考える。回復以外に、私（わたし）に出来（でき）ることは――！？

（回復魔法（まほう）は……異常な状態を正常に戻（もど）すことができる。歪（ゆが）んだ物を元に戻（もど）す……）

　例えば、夜穿（やせん）村の質の悪くなった食べ物も、私（わたし）の魔法（まほう）で回復することができた。

　なら、もしかしたら――クロムウェルから与（あた）えられた魔族（まぞく）たちの力を、元の状態に「戻（もど）せる」のではないだろうか。

　考えるより早く、私（わたし）は杖（つえ）を握（にぎ）り締（し）める。杖（つえ）の水晶（すいしょう）が、かすかに温かみを帯びた。

「ハッハッハァ！　燃えろ燃えろ！　人間の焼け死ぬところを見たいぞォ！？」

　男の巨大（きょだい）化した黒炎（こくえん）が襲（おそ）いかかる。

　シャルはぎりぎりでそれを防ぐが、衝撃（しょうげき）で後ろに吹（ふ）き飛（と）ばされる。

「シャル！」

　イリスの声。が、私（わたし）は動かない。ここが勝負所だ。魔力（まりょく）を集中させる！

（強化浄化魔法（まほう）！）

　私（わたし）の魔法（まほう）が、青白い光となって魔族（まぞく）の男を包（つつ）み込（こ）む。

「なっ……！？　なんだぁ、ち、力が！？」

　驚（おどろ）きの声を上げる男。その胸の紋章（もんしょう）と武器が、不自然な輝（かがや）きを失っていく。

　同時に、紋章（もんしょう）から赤い霧（きり）のような魔力（まりょく）が立（た）ち上（のぼ）っていく。

「あれは……！」

　イリスが目を見開く。立（た）ち上（のぼ）った赤い魔力（まりょく）が、彼女（かのじょ）の掲（かか）げた手に吸収されていく。

「これは……我（わ）が力か……！」

　その瞬間（しゅんかん）、イリスの体が淡（あわ）い光に包まれた。

　銀色の髪（かみ）が風に揺（ゆ）れ、彼女（かのじょ）の周りの空気が大きくうねる。

「なるほど。失われ、封印（ふういん）された我が力。それが『核（かく）』に蓄（たくわ）えられているのか。

　そして貴様らは畏（おそ）れ多（おお）くも、魔王（まおう）たる我が力を我（わ）が物顔（ものがお）で振（ふ）るっていたわけだ……」

　イリスの声が響（ひび）き渡（わた）る。その声には怒（いか）りと、かすかな愉悦（ゆえつ）が混じっている。

「ば、馬鹿（ばか）なっ！　クロムウェル様から与（あた）えられた力が……！？」

「お、おい、おかしいぞ。弱ってるんじゃなかったのか、イリスは！」

　男の動揺（どうよう）した声。他（ほか）の魔族（まぞく）たちも、明らかに怯（おび）えの色を見せ始める。

「クロムウェルのやり口が分かったぞ。道理で他（ほか）の魔族（まぞく）が敵（かな）わぬわけだ」

　イリスが一歩前に出る。その足音に、大地が震（ふる）えたような気がした。

「『核（かく）』に籠（こ）められた魔力（まりょく）は、魔界（まかい）のもののみならず我ら魔王（まおう）の力でもある。

　クロムウェルはそれを独占（どくせん）し部下に与（あた）えている……つまり、奴（やつ）の部下は皆（みな）弱い魔王（まおう）程度の力を持つのだ」

　その言葉に、男の表情が更（さら）に歪（ゆが）む。

「き、貴様――弱いだと！？　俺（おれ）は力を賜（たま）ったんだ！　お前なんぞに負けるわけがないんだァ！！」

　彼（かれ）が再び黒炎（こくえん）を放とうとした瞬間（しゅんかん）、イリスの指が動く。

　赤い光が閃（ひらめ）き、男の体が大きく吹（ふ）き飛（と）ばされた。

「グヒイィ～～ッ！」

　衝撃（しょうげき）で男が地面に叩（たた）きつけられる。その姿を見て、他（ほか）の魔族（まぞく）たちが後退（あとずさ）り始めた。

「イ、イリスの力が戻（もど）ったぞ！？　逃（に）げろ！」

「クロムウェル様に報告を――！」

　魔族（まぞく）たちは慌（あわ）てて逃走（とうそう）を始める。が、イリスはそれを追おうとはしなかった。

　代わりに、そこに倒（たお）れた魔族（まぞく）の男に歩み寄っていく。

「グ、グウゥ……」

「ふん、下級魔族（まぞく）風情（ふぜい）が粋（いき）がってくれたな」

「た、助けてくださいィ！　わっ、私（わたし）はクロムウェル様に命令されただけでぇ……！」

「誰（だれ）が落ちぶれただと？　申してみよ！」

　イリスは男の胸を踏（ふ）みつけ、口端（こうたん）を歪（ゆが）ませる。男の悲鳴と、楽しそうなイリスの笑い声が響（ひび）き渡（わた）る。

　わ、わぁ……。怖（コワ）……。口出さないでおこう……。

「頭を垂れよ、下級魔族（まぞく）。そして真の魔王（まおう）の名を呼べ！」

「ヒイィ！　イッ、イリス様でございま――アッ」

　イリスは叫（さけ）ぶ魔族（まぞく）の頭を、赤い光のようなもので切断した。グロい……。

　生命活動を停止した魔族（まぞく）の体の内部から、肉や皮を突（つ）き破（やぶ）るようにクリスタルが飛び出してくる。

　やがてそれは一つの結晶（けっしょう）になり、残った肉体は消えていった。

　……これが魔族（まぞく）の死。人間や他（ほか）の生き物と違（ちが）いすぎるなぁ。

「すごーい！　なんかイリス、すっごい強くなったね！　……でも、どうしてこうなったの？」

「……ミュウの魔法（まほう）のおかげだ」

　イリスが私（わたし）を見る。その目には、感謝の色が浮（う）かんでいた。

「クロムウェルは『核（かく）』の力を部下たちに分（わ）け与（あた）えていた。

　そしてミュウの魔法（まほう）で、その力が私（わたし）の元に戻（もど）ったというわけだ」

「おお、やるねミュウちゃん！

　じゃあ、クロムウェルの部下を倒（たお）して浄化（じょうか）していけば、イリスの力は全部戻（もど）るってこと！？」

　イリスはゆっくりと頷（うなず）く。その表情には、新たな決意の色が浮（う）かんでいた。

「そうだ。……私（わたし）の力はまだほんの一部しか戻（もど）っていない。だが、これで活路は見えた」

　彼女（かのじょ）の言葉に、私（わたし）も小さく頷（うなず）く。

　イリスの力を取（と）り戻（もど）す方法が見つかった。そしてその力があれば、クロムウェルの城にもたどり着ける。

　そこにあるとされる人間界への門を潜（もぐ）れば、元の世界に戻（もど）れるはず……！

　男の魔族（まぞく）だったクリスタルを再び踏（ふ）みつけるイリス。その水晶（すいしょう）が欠ける。

「クロムウェル……貴様の悪事も、長くは続かないようだな。覚悟（かくご）しておけ……！」

　その言葉が、魔界（まかい）の空に静かに響（ひび）いた。

　……怖（こわ）いなぁ！　やっぱり魔王（まおう）なんだなぁ、この人！