第81話 無限の魔力、その兆し
――一歩足を
その風は、まるで
「ここが、ムゲンキョウ……」
「いや~、馬車旅長かった~! やっと着いたー!」
あちらの
岩場の
(う……これは……)
空気が重い。まるで、この場所そのものに重圧があるかのよう。
大地の
「うわぁ……なんかここ、ヤバくない? ホントに進めるの?」
シャルの声の、いつもの明るさが
その音が、谷の深さを
「ヒスイドウとは全く
リンが
行き着く先を示す
「ところでさ、このムゲンキョウって、実はすっごい歴史があるんだって!」
シャルが、
その声に、リンが顔を上げた。風に
「将軍から借りた資料によると、ここは昔、古代文明の戦士たちの修練場だったんだって!」
「修練……場?」
その言葉に、リンの表情も変化した。
(……修練、か)
何より、ここに来る前に将軍から告げられた言葉が、今も重く
『――そなたたちは十分に強い。しかし、あの
確かに、あの戦いは
岩を
これまで「強くなりたい」なんて思ったことはなかったけれど……今は
「……ここで、新たな力を身に着けることが、できるでしょうか」
リンがゆっくりと顔を上げる。
その
「そうだね。あたしも、そうなりたいな」
シャルも、
でもだからこそ、今よりも強くなれるかもしれない。
「きゃっ!?」
「……
リンの低い声に、
黒い岩の切れ間から、何かが音を立てて
「うわっ、デカいトカゲ! なにあのエラみたいなの!?」
シャルが
金属音が
「陸でも水中でも戦える
リンの冷静な
その動きは、
「はぁっ!」
先制を
「シャルさん!」
リンの警告に、シャルは
「速いし
「ですが、水辺に
リンの冷静な判断に、シャルは歯を食いしばる。
額から流れ落ちる
岩場に
(まずは視界の確保を……!)
切り立った
岩と岩の間から
一方、トカゲは器用にその身をくねらせ、岩場を
その
エラから
「くっ!」
シャルが
むしろその反動で、
足元の
「うわっ!」
「シャル……っ!」
足を
開かれた口からは
「せやぁっ!」
リンの刀が
しかし、傷は深くない。
「これは……ただの
リンが
確かに、今までの敵とは比べものにならないほど
「上!」
シャルの声に、リンは
トカゲの
(このままじゃ……まずい!)
(今までのような戦い方じゃ、通用しない)
シャルの
「シャルさん、このままでは……!」
「わかってる! でも、どうすればいい!?」
(あっ……!)
その時、
「シャル、トカゲの右足! リン、左の岩を!」
思わず声が
この一声が、
シャルが
「はあっ!」
シャルの
岩を
黒い返り血が
「グオォォォッ!」
大きく開いた
「そこだぁっ!」
シャルの
トカゲは大きく
「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……なんとか……」
シャルとリンが、
しかし、その表情には確かな
「さっきのミュウちゃんの指示、めっちゃ的確だったよ!」
「本当にそうですね。あの声がなければ、戦いは
(でも、これはまだ……何か
もっと
何か答えが、
「よーし、これで一歩前進だね!」
シャルが血に
その
「ですが、まだまだ
リンは刀を
そこには
切り立った
(…………)
そんな思いを胸に、
■
「いや~、つっかれたぁ~……!」
夜も
風を防ぐために選んだのは、
中は意外なほど
シャルが集めてきた枝で
「あたし、ちょっともう
「そうですね。簡易的な
「……」
そう言って
シャルとリンは、前衛として激しい戦いを重ねた
シャルの
一方のリンは静かに
足元の
昼間の戦いで、
これでは、パーティーの足を引っ張ってしまう。
(
遠くに聞こえる
(今のうちに、
頭上に
他人のMPを回復できる
単純に、MPの消費量が回復量を上回ってしまい、意味がなかったのだ。
でも、もしこれを改良できれば――。
夜風が
(やってみよう)
まずは通常通り、自分に精神回復
青白い光が
でも、数値にすれば回復したMPが50に対し、消費は70くらい……。
結局は損失の方が大きいのだ。
(この
その気づきから、
何度も何度も
しかし、むやみな練習では進歩がないと
月の光が
そうしているうちに、重要な事実に気がついた。
(
まるで
その量を、もっとゆっくりと、少なく
(
消費するMPと回復量が完全に同値。損得ゼロの
(やった……! でも、これじゃまだ意味がない)
もっと細かな調整ができるはず。
夜風が運んでくる
……
マーリンに
……完全回復
でもそのせいで、今まで
今、初めてその姿を追いかけている。
青い光が
(そうか。こういう流れ方をすれば……!)
回復量も減るが、それでも
(これを
確実に、少しずつではあるがMPが回復していく。
これを
……これは、大きな発見だ。
(成功した……!)
大きな声は出せないが、内心で勝利を
月光に照らされた
これで、もっと
(……いや、無理。無理かも。無理じゃないかな)
その想像に胸が
会話に関しては、まだその準備が心の中でできていない。
(今はまず
夜風が
月の光が
遠くで夜鳥が鳴き、シャルの
リンの着物が風に
今度は、より
一歩ずつ。でも、確実に。
そう心に
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