第80話 目覚めと出立
……
目を開けようとしても、まぶたが
耳だけがかすかに働いていて、遠くの海から届く波音のように、時折話し声が
「……そろそろ目覚めても……」
「……
シャルの声。いつもの
その
すると、まるで
少しずつ、周囲の様子が感じ取れるようになってくる。
「あっ!
シャルの声が、急に大きくなる。
耳元で
「シャルさん、声が大きすぎます……」
「あ、ごめんごめん……! でも、ほら見て! 指も動いたよ!」
シャルの興奮気味な声と、それを
……なんか気まずいその
視界がぼんやりとしている。
古い
「ミュウちゃん! 目、覚ましたんだね!」
シャルの姿がゆっくりと
その向こうには、黒い着物姿のリンの静かな
「ぐうっ……」
「うぅ……ミュウちゃん! もう心配で心配で! 三日も目を覚まさなかったんだから!」
(み、三日も……?)
シャルの体から、
それと、背中に
そこを刀で
「シャ、シャルさん! 傷が開いてしまいます!」
リンが心配そうに制止すると、シャルは
「リン、見てよ! ちゃんと起きたんだよ~!」
「は、はい。本当に、よかったです……」
リンの表情には、確かな
しかし、その
シャルが
「待って! まだ動いちゃだめだよ。もうちょっと休んでからにしよう?」
広すぎず
「ずっとあたしとリンで交代で看病してたんだよ。でも、リンったらここ最近全然休んでなくて」
シャルの言葉に、リンの表情が
「……申し訳ありません。
「もう、そんな暗い顔やめなよ! だって、ミュウちゃんだってリンを助けたくて
シャルの声には、リンを
(リンは、ずっと自分を責めていたんだ……)
それも無理はない。
その上、
話をしようとして、
砂を
シャルが
「はい、ミュウちゃん。まずは水を飲もうね」
「……あ、ありがとう……」
シャルに言われるまま水を飲むと、少しずつ体の感覚が
それらの
「ミュウちゃん、あのジジイのこととか、将軍のことも気になるよね?」
シャルの問いかけに、
確かに、あの戦いの後、何が起きたのだろう。そして、将軍はどうなったのだろう……。
(……でもまずは……この傷を治さないと)
(小回復
まるで春の日差しを全身で浴びているような
傷が
「あっ、そっか! ミュウちゃんなら自分の傷も治せるんだ! やっぱりすごいねぇ」
シャルが声を上げ、
ゆっくりと体を起こすと、
「良かった……でも、まだ無理は禁物ですよ」
リンが心配そうに
「しかし……
「ね! ミュウちゃんはホントすごいの! リンも
シャルの明るい声が
「でも、
「……リン」
リンが
「あなたは……悪くない」
たったそれだけの言葉を
それでも、今は言わなければならないと感じた。
「そうだよ! 全部あの
シャルの力強い言葉に、リンは
「ですが……
リンの声が
「リン
着物の下からは包帯が
足音と共に、
「将軍様! そのような
リンが
シャルが
「心配には
将軍は
その表情には、リンを責める色は
(中回復
青白い光が将軍を
「む……? 不思議な。
「あ、それミュウちゃんの
「ええ……老いぼれに
気まずい空気が流れる。なんかごめんね将軍……。
でも、
「オホン……ミュウ
多くの衛兵の命を救ってくれたと聞く。感謝する」
将軍は
「あの混乱の中、よく傷ついた者たちを
「あ、あの、その……」
「それと、もう一つ。重要な話がある」
将軍はゆっくりと顔を上げ、
その目には、深い決意の色が宿っている。朝日に照らされた
「これより言うことは、
「
将軍の声は低く、しかし確かな重みを持っている。その言葉が、
「そして、その
「
シャルの
「かつての文明の
リンが補足する。その声は、先ほどより落ち着きを
風が障子を
「ヒスイドウと同じく、『
「その通りだ。だが、ムゲンキョウはヒスイドウ以上に危険な場所として知られている」
将軍の言葉に、
あの
風で
「三人とも。激しい戦いの直後に、このような任務を
将軍は
その
「しかし、もはや我々に
「行きます」
リンの声が、静かに、しかし力強く
「これは
「あたしも行くよ! リンはもうパーティーの仲間だもん。ねぇ、ミュウちゃん?」
シャルが
将軍は
朝日が
「では、正式な任務として
将軍は一呼吸置き、重みのある声で続ける。
「
「
「はーい!」
「……!」
三者三様の返事が、
「準備が整い
そう言い残し、将軍は静かに
しかし、
(どうして
答えは、きっと
……今のままでは勝てないかもしれない。
朝日が
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