第68話 言葉の壁を越えて
アズールハーバーの街並みは、
通りには青や緑の色とりどりの旗が風になびき、活気あふれる
潮の
リンは
しかし、いわゆる言葉の
「
リンが指さす先には、
ガラスケースの中には、黄色い四角い
「カステラ? アレの名前かな?」
包装紙のカサカサという音と共に、さらに強い
「■■■、食べる、■■■」
リンの言葉は分からなくても、その仕草で
シャルが一口かじると、その顔が
「うわー! すっごく
ふわふわとした食感と上品な
口の中で
そんな
「■■■■喜ぶ、■■■」
街を歩きながら、リンは様々な場所を指差しつつ説明を試みる。
そのうちの一つ、大きな赤い門をくぐると、
両側には見たこともない形の照明が並んでいた。
(石でできた照明……? なんだかノルディアスみたい……)
「
「トーリー? この門のことかな?」
「
リンは
階段を上がると、大きな建物が見えてきた。
赤い柱と金色の
建物の前には、手を洗うための
リンは
「うわー! うわーっ、冷たい! メッチャ冷たいんだけど!」
身が清まる、ような気はするけど……! それにしたってすごい。手が
リンはそんなふうに
足音が
リンは像の前で手を合わせ、目を閉じる。
「…………」
リンはどこか熱心に何かを
ここはもしかして、教会みたいな場所なんだろうか?
よくよく
(マーリンが見つかりますように。あと、シャルと
後半は、我ながららしくない
もっとシャルと
いつまでもこんなふうにいられたらいいな、と思っていた。
街を歩き回るうちに、リンは
中では、白い布を頭に巻いた人が大きな
湯気が立ち上り、食欲をそそる
「ラーメン! ■■■……
テーブルに
中には黄色い
スープの
「で、えーと……? パスタみたいなものかな? フォークとかない?」
「
食器を求めているシャルの思いを察したのか、リンはカチャッという音と共に2本の木の棒を
……なにこれ?
リンは
(……えっ!? 何今の、どうやったの)
「えー!? 何今の、どうやったの!?」
シャルの言葉が
リンの動きを
リンは
「んん~! これ、
シャルが目を
スープを
そんな食事を終え街を歩いていると、シャルが
「そうだ! せっかくだから、図書館に行ってみない? マーリンの手がかりが見つかるかもしれないよ」
そのためリンに「図書館」と伝えようとするが、言葉が見つからない。というか、こっちの言語は全くわからない……。
「えっと……本がたくさんある……場所!」
シャルが
リンは少し
「トショカン?
リンに導かれ、
入り口には、見慣れない文字で何かが書かれている。
中に入ると、本の
大陸を
高い
リンは小声で何か説明しようとするが、やはり言葉が通じない。
言葉は読めなくても、
そんな中
手に取ってページをめくると、様々な言語らしき文字が並んでいる。
不思議に思いながらも、その本を持ってシャルとリンのもとへ
歩く足音が、図書館の静けさの中で大きく
「どう? 何か見つかった?」
「へぇ、これは……多言語が書かれた本だね。でも、この国の言葉で書かれてるからよくわかんないねぇ」
リンも興味深そうにページを
そして、何かを思いついたように目を
「
本の
ページをめくる音が静かに
その指さす先には、複雑な文様と共に、不思議な文字が並んでいる。
「■■■■、
リンの
どうやらこの本には、言葉に関する
「へぇ、言葉の
シャルの声が図書館に
リンは何か
パタンという音が周囲に
「んんっ。ええと……はじめまして、よろしくお願いします」
その言葉には、かすかに
まるで、リンの言葉が直接心に
空気が
「すごい! 今のははっきりわかったよ!」
「伝わったみたいですね。よかった。これは
リンの説明が、まるで母国語のように聞こえてくる。そんなものがあるなんて……!
「そうなんだー! よく見つけてきたね、ミュウちゃん! これがあればどこでも話し放題だよ!」
シャルは
それにしても、言葉に
リンは
(よし、やってみよう……)
「あ、あ、あの……こここ、こんにちは」
言葉を発した
まるで、言葉が空気中を泳ぐように相手に届いていくのが感じられる。リンが首を
「うまくいってないんでしょうか……? 言葉がブレて聞こえますね」
(そ、それはただ
そんな空気の中、シャルが勢いよく前に出る。
「ミュウちゃん、すごい! あたしにもやらせて!」
「こんにちは! あたしの名前はシャルです!」
「おお……シャルさん、はじめまして!
言葉が通じ始めたことで、2人の間に新たな活気が生まれる。
(うう……頭が……)
……ちょっとさっき一言
「ミュウちゃん、
リンも
「ごめんなさい。あんまり
(MPはあるんだよ。ただ使い過ぎなだけで……)
シャルは困ったように
「
リンは子供に言うように
(……ちょっと
「こんにちは。
「サムライ!? なんか聞いたことある! なんかかっこいいやつだよね!」
シャルが目を
「まだ
シャルとリンの会話が
……割といつものことだ。
リンは
「この街は、古くから交易の要所でした。大陸を
「へぇ、だからいろんな国の人がいるんだね」
「はい。でも、最近は少し
その言葉に、
どうやら、この街にも何か問題があるようだ。リンの表情が少し
それから話が進むうちに、話題は
「マーリン……?」
「そ! ミュウちゃんの
こっちの大陸の、『
「『
そして、古ぼけた一冊の巻物を持ってきた。
「これです。古い伝説なんですが……」
リンが巻物を広げると、そこには独特な画風で
これが
「具体的な場所は明らかになっていないんですが……ここに行った人は永遠の命を得るとか、
「何それ!? すごっ!」
(永遠の命……)
マーリンはもしかして、それで今まで生きていたんだろうか……?
「とにかく、そこに行けばなにかわかるかも! ……でも、どこだかわかんないんだよね?」
「ええ……。ただ、そうですね。近々、将軍が『
もしかしたら、それがなにかの助けになるかもしれません」
「
その言葉にシャルは興味深そうに身を乗り出した。
「やりたいやりたーい! 2人だけで探すより良さそうだしね!」
「そうですね。よければ、簡単に案内します――けどミュウさんがすごく
そりゃそうだよ。コミュ障は大勢のパーティが苦手なんだよ。
やだなぁ。すごくやだなぁ。
「
「!?」
「そうなんですか。じゃあ、案内しますね」
「!?!?」
……こうして、
やだなぁ。すごくやだなぁ。
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