第66話 入港と旅の始まり
潮の
しかし、その静けさはすぐに打ち破られる。
「全員、持ち場に着け!」
ガランの号令と共に、船員たちが
武器を手にする者、
それぞれが役割を果たすべく、
金属のぶつかる音、ロープを引く音が入り混じる。
「ミュウちゃんは回復に専念して。あたしが前線で守るから!」
シャルが
木材が割れる音と、人々の悲鳴が混ざり合う。
「くっ! てやああっ!」
シャルが
切られた
「やったぞ!」
再生する際の、ギチギチとした不気味な音が耳に届く。
「な、なにぃー!? 再生した……って、それはもういいか」
たしかに、なんでか
その時、別の
船員たちが転げ、悲鳴が上がる。体が宙に
「ミュウちゃん!」
シャルの
(全体回復
青白い光が船全体を
転んだ船員たちの傷が
「す、すげぇ……! お
感謝の言葉が飛ぶ中でも、クラーケンの
次々と
「このままじゃ船が持たねぇ!」
ガランの声に
(物体回復
「おお! 船が……マジかよ!?」
船員たちの
しかし、それも
「先にこいつをどうにかしないとね。船を治し続けても限界があるし!」
シャルはそう冷静に
しかし、切断された
クラーケンも
だが、クラーケンの
「くそっ! 何でこんなやつがいるんだぁ!?」
「こいつ、どうすれば死ぬんだよ! デカすぎるぞ!」
戦いが続くにつれ、船員たちの
動きが
「ぐあっ!」
悲鳴と共に、骨の折れる
(中回復
船員の体が光に包まれ、骨が元の位置に
「いでええ、ほ、骨がぁ……!? な、なんだ? 痛くねぇぞ!?」
船員は
そんな中、シャルの
「みんな、あれ見て! あいつの頭が出てきたよ!」
言葉の
それは、まるで小さな島が
やがてその正体が明らかになる。丸々とした
タコのようなクラーケンの頭部が、ついに姿を現したのだ。
クラーケンの体からは、
「な、なんてでかいんだ……! こんなやつは初めてだぞ!」
ガランの声が
これだけ大きな船でも、クラーケンにとっては
クラーケンは大きく空気を吸い
「
ガランの号令と共に、船は大きく
同時に、クラーケンの口から黒い
かろうじて
「うわあっ!」
それを見た
ロープが張る音と、救助される人々の悲鳴が混ざり合う。
「た、助かった……ありがとう!」
「おう! もっと
しかし、
「このままじゃ船が
ガランの声に、
でもそうなったら
そんな中、シャルが再び
「あいつの目を
その言葉に、船員たちは
「よし、みんな、目を
ガランの号令と共に、
しかし、クラーケンは
「まったく、めんどくさいなぁ! だったらもう……!」
シャルは
「はあああああっ!」
そのまま
「くらえぇっ!」
そしてついに、シャルの
「ギャアアアアアアアア――!!」
その
海面に黒い血が
「や、やった! やったぞ!」
「でもおい、
船員たちの
シャルが
クラーケンの頭はどんどん
これしかない。
千切れた小さな
「……シャルっ!」
「おおっと!?」
ぎりぎり残ったクラーケンの頭部の足場で、シャルはなんとか投げられた
同時に、
(物体回復
「わっ!? ひ、引っ張られる!?」
船に残った
それを手にしたシャルも
そうして、シャルは無事に船まで
しばしの
「や……やった! あんなのを
「お
喜びに
「やったねミュウちゃん! ありがとね、助けてくれて!」
「悪いが、また船を修理してもらっていいか? さっきの
ガランの声に、
再び船に物体回復
「すっけぇな、オイ。船の整備士とかやっても
「だめだめ! ミュウちゃんはあたしと
シャルの体温と、潮風で冷えた
「へっ、『そういうことなので……』みたいな顔しやがって。わかったわかった」
ガランは
■
クラーケンとの戦いから数日が
船の
まだ暗い夜明け前、
潮の
木の
空はまだ暗く、星々が
東の空がわずかに明るくなり始めているのが分かる。
空気は冷たく、
「ミュウちゃん、こんな早くから起きてたの?」
シャルの声に
「朝は寒いからね。これ、使って」
シャルが差し出した毛布を受け取り、
温かい。シャルの体温が残っているようだ。毛布からは、かすかに
「もうすぐ東方大陸だね。楽しみだな~!」
シャルの声には、期待と少しの
暗かった海面に、かすかな光が差し始める。海の
「おお、見てミュウちゃん! 日の出だ!」
シャルの声に
水平線の向こうから、赤い太陽が顔を
その光が海面を照らし、きらきらと
空の色が変化していく様は圧巻だった。
雲の
空気が少しずつ暖かくなっていくのを感じる。
「わぁ……きれい……! 海の上で見る太陽っていいね!」
シャルが息を
日の出とともに、海も活気づき始める。
波の音が大きくなり、風も少し強くなった。
カモメの鳴き声も増え、朝の
「おはよう、お
ガランの声がする。
「船長、おはよう! 東方大陸はもうすぐ?」
「ああ、その通りだ。見ろ、あそこに見えるだろう?」
ガランが指さす方向を見ると、かすかに陸地らしきものが見えた。
まだ
「本当だ! ミュウちゃん、見える?」
シャルが興奮した様子で
そ、そんなことしなくても見えるって……!
水平線の向こうに陸地の
遠くに山々の
山々の頂きに雪が光っているのが見えた。
「あれが今回の目的の港町、アズールハーバーだ」
ガランが
「アズールハーバー……」
シャルがその名を
船は、ゆっくりとその港に近づいていく。波を切る音が大きくなり、潮の
白い建物が立ち並び、その屋根は赤の
港には大小様々な船が
町の中心には大きな
遠くから、
「すごいねぇ! ホントに海を
シャルの声が感激に満ちている。
あんまり遠くに行くのは好きじゃなかったけど、シャルに
海を
港に近づくにつれ、町の
魚の
「よし、入港の準備をするぞ! みんな、持ち場に着け!」
ガランの号令で、船員たちが動き出す。
船が
波を切る音が小さくなり、かわりに港の
人々の声、荷物を運ぶ音、商人たちの
それらが混ざり合って、独特の
「ミュウちゃん、ついに着いたね!」
シャルの顔には
船が
港の作業員たちがそれを受け取り、しっかりと結び付ける。
「よし、
「
シャルが
「へっ、そりゃ
「ありがとなぁ、
船から降りる準備をしながら、
未知の大陸での
朝日に照らされたアズールハーバーが、
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