第64話 出港前夜
「ほら、ミュウちゃん。これ少し早いけど、
シャルが満面の
「さあ、これで思う存分祭りを楽しめるね!」
シャルの声には期待が
確かに、警備の仕事も一段落したし、少しくらいは祭りを楽しんでもいいかもしれない。
「よーし、じゃあ行こう! まずはあっちの
シャルに引っ張られるまま、
通りには色とりどりの旗が
最初に立ち寄ったのは、キラキラと
「わぁ、きれい……! ねえミュウちゃん、これ見て! この青い石、ミュウちゃんの目の色にそっくりだよ」
シャルがそう言って、サファイアのような青い宝石を手に取る。
そ……そう、かなあ!? そんなことないと思う!
「そう? 似合うと思うんだけどなぁ。でも高そうだし、もうちょっと見て
次は
「へぇ、これがあの有名なサフランかぁ~。金より高いってホントだったんだね!」
「ああ、そうなんだ。一キロのサフランを得るために、十万以上の花が必要でね……」
シャルは
店主が軽く
その後も、
見たこともない形の
シャルは
「あ、ミュウちゃん! 小腹空いてない? あそこで何か食べよう!」
シャルが指さす先には、様々な国の料理を売る屋台が並んでいた。
「うーん、どれにしようかな……あ、この葉っぱみたいなのにしよう! ミュウちゃんは?」
シャルが選んだのは、大きな葉っぱに包まれた
「おお、いいチョイス! じゃあ、それぞれ半分こしようね」
シャルの選んだ
「うん、
「……うん」
シャルの問いかけに、
確かに、見知らぬ街で
「よかった! ……ねえ、なんかさ。これってデートみたいじゃない?」
「……っ!」
その言葉に思わず息を
「あはは、顔
シャルがそう言って笑い、背中を
食事を終え、
「わっ、すごい人だかり! あれ、なんだろう?」
シャルが
人々の間を
「おぉ……きれい!」
シャルが目を
司会者らしき人物が前に出てきて、声高らかに告げる。
「ご覧いただいたのは、東方大陸セレーネ王国の
交易祭の目玉、世界芸能ショーはこれからも続きます!」
(東方……)
「へぇ、世界中の
シャルの声には期待が
勇ましい
どれも目を見張るような
ショーの合間に、
「さっきの
「ありがとうございます。東方大陸は神秘の地と呼ばれています。
広大な大地に古代の
「へぇ! すごく行ってみたくなっちゃった! ねえミュウちゃん、絶対行こうね!」
そうでなくても、その地を見に行く価値はありそうだ。
「近くの港から東に向かう船に乗れば、約2週間で東方大陸に
ただ、航路の
「ふむふむ……
「そうそう、港の『海鳴り
「よーし、決まりだね! この祭りが終わったら、さっそく東方大陸を目指そう!」
シャルの声には、
再び始まった
■
夕暮れ時、祭りの熱気もやや落ち着いてきた
潮の
「海鳴り
シャルが指さす先には、古びた木造の建物が見える。
看板が風に
中に入ると、独特の
木の
客はほとんどが日に焼けた男性たちで、
ドアが開いた音だけが
「あん? お
カウンターの男性が、
「いやいや、ちゃんと用があってきたんだよ! 東方大陸行きの船の情報が
シャルが
「へっ、お
海を
「ふふん、それはどうかな? あたし
その言葉に、店内からどっと笑い声が上がる。グラスを
しかし、その中に一つ、興味深そうな声が混じった。
「ほう、
それは風格のある中年の男性が放った声だった。
日に焼けた
「
「うん! 東方に用があるんだ」
ガランは
「よし、わかった。丁度いい話がある。一週間後に出航予定の商船があって、護衛を探しているんだ。
お
「ほんと!? やった! ねえミュウちゃん、いいよね?」
「よし、決まりだ。
その時だった。シャルが
「よーし! これは
「おいおい……」
ガランが制止しようとするも
「
ガランの持つ酒とジョッキを合わせて、一気に飲み干すシャル。
その姿に、店内から
「おっ、お
「こりゃあ
周囲からの声に気をよくしたのか、シャルは次々とジョッキを重ねていく。
アルコールの
(ちょ、ちょっと……シャル……)
制止しようにも、もう
あっという間にシャルの顔は赤く染まり、目がトロンとしてくる。
「んふふ~、ミュウちゃ~ん。なんかフワフワするよ~」
シャルが
「おおっと……やれやれだな」
ガランが心配そうに近づいてきた。
「
お
なんか
「ミュウちゃ~ん、なんかね、
シャルが楽しそうに言う。その様子に、思わず
ガランは前の席に
航路の危険性や、必要な準備、様々な情報。
「……というわけだ。護衛の仕事は簡単じゃないぞ。
ガランの問いに、
「ふむ。お
ガランが満足そうに
「あたしたち、絶対に……東方大陸に……行くんだからぁ! ねえ、ミュウちゃん!」
そう
「あいたぁ……」
「……っ!」
顔が近い。シャルの
アルコールの
周囲から笑い声が起こる中、
「はっはっは!
ガランが
結局、その日は
重いし、道中ずっとわけのわからないことを
後衛職にこんなことをさせちゃだめだよ。
■
「う゛へ~……あったま痛ぁ……ここら辺の酒、ちょっと質悪いよ……」
翌日、
シャルの顔色は悪く、目の下にクマができている。ちなみに
そこで正式に、東方大陸行きの商船の護衛として
紙の
「よし、これで決まりだ。1週間後の出航を楽しみにしているぞ」
「あい……よろしくぅ……」
シャルはふらつきながらもガランと固い
……
事務所を出ると、シャルが申し訳なさそうに
「うう……ごめんねミュウちゃん……一週間前は
「…………」
「ぐうっ、そんな目で見ないで……!」
よよよ、とわざとらしく泣くシャル。
でも
「……よし! これからの一週間、しっかり酒を
シャルが自分の顔を
その声には
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