第62話 交易の街サンクロス
サンクロスの街に一歩足を
街全体が活気に満ち
市場の
それらが混ざり合い、サンクロス特有の音の風景を作り出している。
色とりどりの
その種族も、アランシアほどではないが様々な種がいるようだ。
エキゾチックな
「わぁー! すっごい
シャルの声が、周囲の
街を縦横に走る運河には、
水の
「ねえミュウちゃん、あれ見て! 水上バス!」
シャルが指さす先には、
金色と赤色を基調とした船体に、
乗客を乗せ、ゆったりと運河を進んでいく。オールの水を
「乗ってみない? きっと街がよく見えるよ!」
シャルの提案に、小さく
確かに水上から街を
木の
周囲の乗客たちも、観光客らしき人や地元の人など様々だ。
異国の言葉や、
船が動き出すと、サンクロスの街並みが少しずつ視界に広がっていく。
運河沿いに並ぶ建物は、どれも
赤や青、黄色など、様々な色の
「ねえねえ、あの建物見て! すごい変な形してるよ」
シャルが指さす先には、らせん状の
確かに
それぞれの建物が独自の物語を語っているようだ。
水上バスは、大きな市場の近くを通過した。
そこでは、色とりどりの
「あ、ミュウちゃん! あそこでアイスクリーム売ってるよ! 食べに行こう!」
シャルの声に、思わず顔を上げる。
確かに、運河沿いの小さな店で、
水上バスが停留所に着くと、シャルは急いで降りようとする。
その勢いで、船が大きく
「わっ!」
「……っ!」
シャルが
「ご、ごめんねミュウちゃん! 急ぎすぎちゃった」
シャルが申し訳なさそうに笑う。その
店先には様々な色や形のアイスクリームが並んでいる。
パステルカラーから
「わぁ、すごい! どれにしようかな……ミュウちゃんはどれがいい?」
シャルの問いかけに、少し考えていると
その
「……あれは?」
「おお、いいね! じゃあ、その
「あいよ!」
シャルが店主に声をかける。店主は
スコップでアイスをすくう音と、コーンにのせる時のカリッとした音がする。
受け取ったアイスクリームは、予想以上に冷たい。
一口食べると、
舌の上で
「
シャルが目を
確かに、今まで味わったことのない風味だ。
「これはジュビルって
「へー、聞いたことないなぁ。今度見つけたら食べてみよっか!」
「……!」
道行く人々の笑い声や話し声、船乗りの笛、市場の
それらの音が混ざり合い、サンクロスの昼下がりの独特の
■
夕暮れ時になると、街はまた
街灯が次々と
昼間とは
「ねえミュウちゃん、お
シャルの言葉に
お
「よし! じゃあ酒場に行こう!
その言葉に、少し
(シャル、お酒には弱いんだよね……)
以前、シャルは
お酒は
「あれ? どうしたの、ミュウちゃん?」
「お、お酒は……ほどほどにね」
小さな声でそう言うと、シャルは
「あはは、そっか。前に
シャルの言葉には半信半疑だが、とにかく
足を進めるにつれ、酒場からの
木の
焼き肉の
木のジョッキが
……相変わらず苦手な空気だ。できるだけ縮こまってシャルと
ランプの
「わぁ、すごい
シャルの声が、周囲の
ウェイトレスが近づいてくる。
いくつかの色の布を組み合わせたようなドレスで、動くたびに布地が
「いらっしゃいませ。お
「えーっと、ビールをジョッキで一つと……ミュウちゃんは?」
シャルに
羊皮紙に書かれたメニューは、
「あ、フルーツジュースですね。かしこまりました」
ウェイトレスが去ると、シャルが小声で話しかけてきた。
「ねぇねぇ、みんななんか話で盛り上がってない? 聞こえる?」
確かに、周囲のテーブルからは興奮気味の会話が聞こえてくる。
耳を
(……「交易祭」、ってみんな言ってるみたい)
「交易祭? なんだろう」
シャルが首をかしげる。その時、
「ほう、交易祭を知らないのかい? 君たち、外から
男性は、赤ら顔で温和な
「うん、
シャルが酒を飲みながら
ビールの
「サンクロス最大のお祭りさ。年に一度、この街に世界中の商人が集まってね。
「へぇ~、すごそう! それっていつ?」
「
確かに、街を歩いているときに、祭りの準備らしき光景を目にしたかも。
通りに旗や
「あ、そういえば見たかも! でも、お祭りなのになんかこう……たまに心配そうな顔をしてる人がいるけど?」
(……?)
シャルの言葉に、男性の表情が
相変わらずすごい観察眼だ。全然気付かなかった……。
「ああ、それはね……」
男性は少し
「最近、商人たちの荷物が
「えっ、そんな!」
シャルが
「警備は強化されているんだが、それでも不安なんだよ。せっかくの交易祭なのに、こんな
男性は深いため息をついた。その息に、アルコールの
その
「……護衛、
「そうじゃん! ねぇおじさん、その商品の護衛とか
「おや、君たち
「うん! もし護衛が必要なら
シャルが元気よく答える。
男性は
「そうだな……確かに護衛は足りていないんだ。
「そうこなくっちゃね! 喜んで!」
シャルが
その後、男性――ガストンさんという名前だと分かった――と色々な話をした。
交易祭の様子や、サンクロスの文化について教えてもらった。
酒場を出る
街灯の
「ミュウちゃん、さっそく仕事見つかりそうだね! 楽しみだな~」
シャルの声には楽しげな期待が
確かに、これは良い機会かもしれない。
お金も
宿に
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