第60話 戦争の終わり
ヴェグナトールが飛び去ってから数日が経過した朝。
グレイシャル
冷たい空気が
台無しになった講和をやり直すためだ。
会議場は
テーブルの表面は
テーブルの周りには両国の代表者たちが着席し、その表情は
窓から
七色に
ゴルドーやリンダといった
ルシアン王の
代わりに、
「では、和平会議を始めよう」
ルシアン王の声が、
「まず、グレイシャル
ルシアン王の言葉に応じて、グレイシャル
聖女アリア――つまりヴェグナトールによって、無実の罪で
その顔には、苦難の日々を
ヴェグナトールの正体が明らかになったことで、
同時に、多くの「反逆罪」の要人が解放されている。
「はい。まず、
そのため、
その言葉に、会議場にいる全員が顔をしかめ、空気が
たしかに、講和会議における
だがそこまでとは
「……我々は今回の戦争の責任を痛感しております。
アランシア王国、そして
ロイドは深々と頭を下げた。その姿に、会議場の空気が少し
しかし、とロイドは続けた。
「
どうか、我々の
「……ああ。ロイド
しかし、だからこそ我々は協力し合い、この困難を
ルシアン王の言葉に、会議場の
対立ではなく協力を
「そして、この戦争の真相を知る者として、ミュウにも話をしてもらおうと思う」
「!?」
なっ、なんだってー……!?
なんで
うう、話をしなきゃいけないのか……しかもこんな何人もの人の前で。胃がキリキリと痛むのを感じる……。
「たしかにね。こればっかりはあたしじゃ助けられないし……
シャルが
でもすごく
「え、ええと……
声が
本当は
「100年前……聖女アリアとヴェグナトールは、なんというか……
けど、当時の人
会議場が静まり返る。
針が落ちる音さえ聞こえそうな
「……
昔の人間はそのことを、少なくとも大々的に
ロイドの声が
「……ヴェグナトールは、ひどいことをしたけど……。なんでそんなことをしたのかは……みんなが、知っていいと思います……!」
各国の代表者たちが、
小さな議論の声が、あちこちで聞こえ始める。
ああ、すごくきつい……MPがほぼほぼなくなりかけている……。頭がぼんやりしてくる。
ルシアン王が立ち上がり、
「ありがとう、ミュウ。その言葉、大いに参考にさせてもらう」
「ああ。我々は過去の
ロイドの言葉に、会議場全体が
「では、具体的な和平条約の内容に移るとしよう」
ルシアン王の声が
書記官が
「まず、両国の国境線の再
ロイドが地図を広げる。地図を広げる音が、
両国の代表者たちがその地図を
紙の上に
「そうだな。では、まず北部の
ルシアン王が指を地図の上で動かす。その指先が、国境線をなぞっていく。
討議は白熱し、時には激しい言葉の
しかしアリアがいたときと
昼食を
……夕方近くになって、ようやく和平条約の
窓の外では、夕日が雪原と街を赤く染めている。
「では、以上の内容で和平条約を
ルシアン王の声に、
「よろしいだろうか、ロイド
「はい、これで問題ありません」
ロイドも同意し、両者が和平条約書に署名をする。
その
「これにて、グレイシャル
ルシアン王の宣言に、会議場全体が
長い
深いため息が、あちこちから聞こえてくる。
「そして、グレイシャル
その言葉に、グレイシャル
「ありがとうございます。
会議はそれからも少し続いた。
戦争で
頭の中で言葉が
しかし、両国が協力して平和な未来を築こうとしている姿に、
これが
これで、収容所や村で出会った
そして会議が終わりに近づくころ、ロイドは
「ミュウ
その言葉に
もうかなり
「――では、これにて和平会議を
ルシアン王の言葉と共に、長い会議が幕を閉じた。
■
別室に入ると、そこには小さな応接セットが置かれていた。
窓からは夕日が
ロイドが
長時間の
「ミュウ
「え、えっと……そ、そんな……」
シャルが
「だからこそ、君にお願いがある」
ロイドは
「グレイシャル
「えっ!?」
思わず声が出る。その声が
聖女?
「え、えと、どどど……どういう……」
「グレイシャル
君の力があれば、戦争で
ロイドの言葉に、
でも、ここに
「ミュウちゃん」
「ど、どうしよう……」
シャルは少しだけ
しばらくの
「ご、ごめんなさい……。で、でも……わ、
言葉が
一つの国に
そういうふうに
「そうか……」
「で、でも! その、定期的に……
言葉を
「そうか。それでも大きな助けになる。ありがとう、ミュウ
話し合いが終わり、
すると、後ろからシャルが
「ミュウちゃん、よく言えたね!」
「……っ」
「正直、ここに残るって言われたらどうしようかと思っちゃった。ここ寒いしね!」
シャルの声には、少し
確かに、ここに残るという
そして、なによりシャルと
「どうしたの、ミュウちゃん。じっと見て」
「う……ううん。なんでもない」
心臓が少しどきどきする。顔が熱くなるのを感じた。
■
翌日、アランシア王国への
荷物をまとめながら、これまでの
雪の中で必死に走ったこと、収容所での
出発の日、グレイシャル
寒気の中、息白く、
その顔々には、感謝と希望の色が
「ミュウさん! あのときは本当にありがとうございました」
「また来てください!」
「聖女様、お元気で!」
次々と感謝の言葉をかけられ、
「さあ、行こうか」
ルシアン王の声に、
馬車の木の
馬車が動き出し、車輪が雪を
グレイシャル
窓から見える
「ねえ、ミュウちゃん。いろいろ大変なことも終わったね。これからどこに行こうか?」
「ど、どこでも……シャルと
「そっか。じゃあ、もっともっと色んなところに行こうね!」
シャルの声が
そう、これからも
冷たい空気が
馬車は雪原を進み、遠くに見える山々へと向かっていく。
その
こうして――後に
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