第59話 心を癒やす魔法(後編)
時は流れ、場面は一転する。
グレイシャル
冷たい風が
空には灰色の雲が低く
雪がちらつき始め、冷たい
広場には大勢の民衆が集まり、ざわめきが
不安と興奮が入り混じった声が、寒気と共に広がる。
その中心に、一つの
その周りを、重装備の兵士たちが取り囲んでいる。
「聖女アリアを連れて参れ!」
群衆が静まり返る中、両手を
その姿は、かつての
しかし、その目には今なお強い意志の光が宿っていた。
「聖女アリア。
裁判官の声が
声が広場全体に
「
アリアの声が
「
群衆からも非難の声が上がる。
かつては
その視線が、まるで有形のものであるかのようにアリアを
アリアは静かに目を閉じる。
その表情には、悲しみと共に、何か
長い
「
再び
兵士が
そのとき、アリアは群衆に向かって静かに語りかけた。
「
「火を放て!」
裁判官の声と共に、
「――――っ!!」
アリアが声にならない悲鳴を上げる。その声が、群衆の心を
「グオオオオォォォ!!」
その
その姿を見た群衆が悲鳴を上げ
足音と悲鳴が入り混じり、
「ガアアアァァァ!」
ヴェグナトールの
しかし、すでに
熱波が
ヴェグナトールは地面を
木材が
「アリア……」
ヴェグナトールの声には、
その目には、今まで見たことのない感情が宿っている。
その声が、周囲の
その声は、
「ヴェグナトール……約束は、守ってくださいね」
その声は弱々しく、しかし決意に満ちていた。
「
そうすれば、こんな人間どもは
ヴェグナトールの声が
「人間は……美しいものなのです。たとえ、こんな時でも……」
アリアの声が
ヴェグナトールは動けずにいた。
アリアが焼けていくのを、ただ
そして、アリアの肉体は
焼ける肉の
ヴェグナトールは首をもたげ、人間たちを見る。その目には、底知れぬ
「や、やはり……アリアが
「あの
人々の声が、
「グァアアアアアッ!」
ヴェグナトールの
やがて
ヴェグナトールはその灰に顔を近づける。
その目には、深い悲しみと
鼻先から
「アリア……。
約定は守ってやろう。今後100年、我がこの国を
その言葉と共に、ヴェグナトールの体から黒い
その
「くく……100年か。くっくっく……! たかが100年!」
ヴェグナトールの目に、
「100年の
その言葉と共に、ヴェグナトールは大きく羽ばたき、空へと飛び立つ。
■
――場面が変わる。
結界の中、
(……これが……心を
その経験が、
ヴェグナトールの目には、かつて見たことのない感情が宿っている。
「おまえは……
その声には
そして、
「アリアは……最後まで、
ヴェグナトールの声が
気付けば、
「……っ」
「
ヴェグナトールは
その目は
「……わからない……けど……」
言葉にならない感情が、
とても悲しい出来事だった。そして、
ヴェグナトールの目から、とても大きな
その
「
ヴェグナトールの声が、
なんとなくだが、
ヴェグナトールは、本当は悲しみたかったし、泣きたいとも思っていた。
それほどにアリアを大切に思っていた。その思いが、
しかし、その別れが
そして
その
アリアの体を借りて
アリアの
その
その
ヴェグナトールは今初めて、アリアの死と向かい合ったのだ。その現実が、
ゆっくりと、
ヴェグナトールが
「ミュウちゃん!」
「ミュウ、すぐにこっちに!
シャルやルシアン王がこちらに手を
「……悲しかった、ね……」
その声は小さく、
「――ああ――」
そう一言だけ答えると、ヴェグナトールはその
そして、あっという間に飛び去って、どこかへ行ってしまった。
その姿が空の
……足の力が
「ミュ、ミュウちゃん!
「信じられん……
ルシアン王の声には、
シャルが
周りの
「よ……よしよし。もう
シャルの声が、
その声に包まれながら、
周りでは、兵士たちが
金属の
空には、まだ灰色の雲が低く
「あの
その目には、
「……心を、
「心を
ルシアン王が、深い考えに
シャルが
「ミュウちゃん、本当にすごいよ。あんな大きな
シャルの声には、
周りを
その視線に、少し
「さあ、みんな。ここはもう安全だ。各自、持ち場に
ルシアン王の声が
「ミュウ、シャル。少し休んでいいぞ。この後、
足取りは重く、
一応の修復の作業が始まっているが、直すにはかなり時間がかかりそうだ。
「ミュウちゃん、本当によく
よくわかんないけど、アリアに化けてたドラゴンがいなくなったってことは……戦争も、これで終わるのかな?」
シャルが
「うん……」
小さく答えながら、
まだ、ヴェグナトールとアリアの物語が、頭の中でぐるぐると回っている。
その悲しみと、ヴェグナトールの複雑な感情が、
(戦争は終わった。……けど、これからだよね。めちゃくちゃにされた
そんなことを考えながら、
「おっ、どうしたの?
……シャルがなんだか楽しそうに笑いながら、
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