第58話 心を癒やす魔法(前編)
結界の
耳を
意識が、まるで時空を
(……っ!)
目を開けると、そこは見知らぬ風景だった。
雪に
遠くには氷に
緑と
美しい
(ここは……グレイシャル
そのとき、遠くから人々の
風に乗って
中央には石造りの教会がそびえ立ち、その
村の入り口には「聖女様、ご来訪を
そして、村の広場に集まった人々の中心に、
長い
その姿は、まるで絵画から
「アリア様、ありがとうございます。あなたのおかげで、主人はすっかり良くなりました」
「それは何よりです。力を
アリアの声は、
その声を聞いているだけで、心が温かくなるような感覚に
アリアは、村人たちに
病に
その一つ一つの
(これが……100年前の聖女、アリア)
そんな思いがよぎったとき、
村の上空に、
黒い
その
「グハハハハハ……! 消えろ人間ども!」
ヴェグナトールの
その声に、村人たちが悲鳴を上げ、
「
アリアの声は、
そんな
「フン。お前は人間の聖女とやらか。人間どもの
ヴェグナトールの声には、明らかな
その声に
「そう。
「見下げ果てた
ヴェグナトールはそう言って
そんな
「どうか、この村を去ってください」
アリアの言葉は、静かだが力強かった。その声に、村人たちの希望の
ヴェグナトールは高らかに笑った。その笑い声は、まるで
「グハハハ……! 構わんぞ、こんな粗末な村。だが願いを口にするならば
ヴェグナトールの目が
「村を
村人たちから悲鳴が上がる。その声が、寒気とともに広がっていく。
その表情には、
「わかりました。でも、約束してください。二度とこの村を
「ククク……。聖女の仮面はまだ
そうして、ヴェグナトールはアリアを
村人たちの悲しみの声が、遠ざかっていく。その声が、
場面が変わる。
今度は、雪山の頂にある
そこでアリアとヴェグナトールが向かい合っているのが見えた。
「なぜだ。なぜ
ヴェグナトールの声には、いつもの尊大さがない。
代わりに、
「あなたは
「……
「だって、殺すつもりならとっくにやっていたはず。村人の目の前で。
アリアの言葉に、ヴェグナトールは言葉を失う。その
「
「……
ヴェグナトールの声が
その声には、
「でも、本当よ。だからこそ、
アリアの言葉に、ヴェグナトールは激しく首を
その動きで、
「
くだらぬ
ヴェグナトールが大口を開き、
空気が
そのまま
少しでも
「
アリアの
ヴェグナトールが
「頭がおかしいのか。本気で我と友になれるとでも思っているのか」
「ええ。あなたには言葉を伝える力があり、頭脳があり、心がある。
ドラゴンと人間であっても、わかり合うことはできるはず」
「
「あなたには、別の生き方だってできるはずよ」
まったく
その背中には、何か言い表せない感情が
「興が冷めたわ。山を降り、消えよ」
「……また、
アリアは不敵に
再び、場面が変わる。
それは同じヴェグナトールの
雪解けの季節を
「
アリアの手には、色とりどりの野花が
「くだらぬ。草など腹の足しにもならぬわ。人間の幼体など、ますます胸が悪くなる」
ヴェグナトールの声には、いつもの
しかし、その目には
アリアは負けじとヴェグナトールに話しかけ続けているようだった。
(コ……コミュ力が高い!
「あなたは人間のことを誤解しています。人間は、あなたの言うような悪しきものではないのですよ」
アリアの声には、
その言葉に、ヴェグナトールは鼻を鳴らす。
「ハ! たかが10か20年程度生きた
我に言わせれば、
ヴェグナトールの声には、長年の経験に裏打ちされた確信が感じられた。
その目には人間への
それから、ヴェグナトールはずいと頭をアリアに近付けた。
その鼻先から熱い息が
「
ヴェグナトールの声には、
「
「簡単なことだ。貴様が
アリアはその言葉に目を
「死ぬ
「まぁ……それは、なんですか?」
「100年の間、人間を
ニヤリとヴェグナトールが笑う。
その表情には、
アリアがやがて人間の
そうしたら、やはり人間などくだらない生き物だと笑い飛ばして、
そんなヴェグナトールの
その
「いいですよ。もっとも、
「グハハハハハ……! まぁ見ておれ。貴様もすぐに理解するぞ、『聖女』よ……」
ヴェグナトールは「聖女」、という言葉を強調してみせた。
その言葉の意味と重さを、
そうして
アリアは相変わらず村々を
そしてヴェグナトールは、空や山から
(これが、ヴェグナトールとアリアの関係……)
そこには、
時の流れが、まるで水の流れのように
人間の願いを聞き入れ、
そして、その行動を
その
そこには、
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