第55話 邪竜の猛攻(後編)
ドラゴンの
耳をつんざくような金属音と共に、結界にヒビが入る音が
ギギギ、と重たい金属が
「……っ!」
『ゾグ、ブラゾガ ナ……ダゴ ヴォズマゲ ゲズバグ ゾルダグ ガナ』
城の外から、
「ミュウ! 結界の回復を
その声に、
そうだ、
青白い光が結界のヒビを
光の温かさが、指先から体中に広がる。
しかし、ドラゴンの
「きゃあああああ!」
「な、なんて
もしもあれが結界なしで
『ゾガ ガゾ ブラゾグ ゲズバグ ドゥルゾッゲ……ダゴ ゾガ ヴォズマゲ ゾグ ガナ!』
「口を開いた……! ブレスが来るぞ、ミュウ!」
「おお……聖女様……っ! 我らをお救いください……!」
(
修復と
額に
(もう、どれくらい
時間の感覚が
ただ、結界を守ることだけに集中する。視界が
(回復……回復を……っ!)
そんな中、シャルの声が聞こえてきた。
「ミュウちゃん!
しかし、それでも
ドラゴンの
「
シャルが
「……う、うん」
かすれた声で返事をする。
(あとどれくらい……
そう考えていると、再びドラゴンの
大きな
「くっ……!」
しかし、今度は修復が間に合わない。結界のヒビが、みるみる広がっていく。
ガラスが割れるような音が、
(もう、
そう思った
「
……そうだ、ここで
深呼吸をして、もう一度
「
その
(もう一度……!)
全身の力を
青白い光が、これまで以上の
結界のヒビが、みるみるうちに修復されていく。
それだけでなく、結界全体が以前よりも強固になっているのが分かる。光の波動が空気を
空中から
金属音と共に、ドラゴンの
「すごい……!
『ゾガダ ガッ……!? ゾガ ガゾ ゾガダ ゲズバグ ブラゾガ!
ゾルダグ ドゥルゾッゲ ガ ブラゾグ ヴォゾゲガ ゾガダ!?』
しかし、
全身から力が
「ミュウちゃん!」
シャルが
シャルの体温と、心臓の
「
シャルの声には心配が
「……まだ……終わって、ない」
「もう、無理しないの! 少しだけ休んで。ドラゴンも今は
シャルが
その
外では、まだドラゴンの
しかし、その音は少し遠ざかっているような気がする。風の音が、以前より大きく聞こえる。
(もしかして……)
そう思った
「ドラゴンの勢いがなくなり始めた! もう少しだ!」
その言葉に、希望が
「聞いた? ミュウちゃん、もう少しだよ!
どんなモンスターだろうと、ずーっと暴れ続けることはできないんだ!」
(最後まで……
それは弱々しいものだったが、それでも結界を少しずつ修復していく。光の波動が、空気を
ドラゴンの
そして――
「やったぞ! ドラゴンが……去っていく!」
ルシアン王の声が
「やったぞ! 助かったんだ!」
「さすがは聖女様……! この国を守ったんですね!」
そして、
「ミュウちゃん! よく
シャルの声が、遠くなっていく。しかし、その声には温かさが満ちていた。
とても
シャルの体温と、かすかな
シャルの
体は
それでも、かすかに聞こえてくる声に耳を
「諸君、我々はドラゴンの
かすれたルシアン王の言葉に、会議室が静まり返る。息を
「
「ああ。何をすればいい」
「今すぐグレイシャル
(え……?)
ルシアン王は続ける。
「
あのドラゴンを出した以上、今はまともな戦力は準備していないはずだ。今こそ
会議室に
(……たしかに、あのドラゴンが国を
力を体感したからこそわかる。あのドラゴンの力を疑う人間なんて、
ルシアンの言うとおり、いま
「陛下。作戦の
「簡単だ。
シャルが
「マジで!? それって、さすがに危険じゃない?
「危険は承知だ。しかし、これ以上の好機はない。フェルナヴ
あの地を
話を聞いていたゴルドーが一歩前に出る。
エルフたちも、独特な礼をした。
「わかった。任せてくれ」
「我らの弓が、あなた方の
ルシアン王は満足げに
「よし……では直ちに出発だ。勝利を
それと同時に、ルシアン王もその場に
「ちょっ、
「あ、ああ、問題ない……。さすがにあれだけ結界を
「そっか。よく
シャルが
それを見てルシアン王がにまにまと笑っている。……元気そうで何よりだ。
「ミュウ。よく
ルシアン王の表情には希望が宿っているようだ。
「さて……。あとは、結果を
だけどせめて、と
アランシアの勝利を。……グレイシャル
その思いを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます