第50話 宣戦布告
アーケイディアの王宮。その姿を見るのは二度目だが、その美しさは変わらない。
夜空に
その光が、夜風に
「うわぁ……やっぱりすごいよね、この
シャルが
何度見ても圧巻の光景だ。風に乗って花の
門番たちは
「お、お
「どもー! こんな格好で悪いんだけど、ルシアン王に会えないかな?」
シャルは
門番たちは
「ええ、お
「あたし
「ええ、構いません。どうぞ」
「いやー、あたし
シャルが明るく笑う。
なんとかして取り返せないだろうか。
そんなことを考えながら
足元の
「おや? これはこれは! ミュウとシャルではないか!」
若々しい声が
アランシア王国の王、ルシアンだ。
「ルシアン王! 久しぶり! ってほどでもないかな?」
シャルが元気よく手を
ルシアン王は両手を広げ、
「おお! 予の最愛なる
「カップルではないんだけど……」
シャルが苦笑いしながら、半歩後ずさる。
相変わらずテンションが高い……。ルシアン王の
「ふむ、まだ自覚がないと言うのか……。まぁいずれその自覚が芽生えていくさまも美しいものだからな。
ところで、その後ろにいるのは……?」
ルシアン王の視線が、リンダとロイドに向けられる。
「あ、
シャルが簡単に説明すると、ルシアン王は深刻な表情になった。
「なるほど……。
王は長いマントをはためかせ、
「さて、話を聞こう。グレイシャル
実のところ予も、
シャルが
リンダとロイドも、自分たちの知る情報を加えていく。
話を聞きながら、ルシアン王の表情が
「……なんと
「そこじゃないって」
「何なのこの男?」
(リ、リンダ……! 一応王様だから……!)
王の
そのリアクションは
「それはそうと、あの国おかしいんだよ。なんか聖女がどうとか言って、
「聖女、だと? ミュウのことではないのか?」
ルシアン王が身を乗り出す。その目が
「うん。なんか、聖女アリアっていう人が出てきて、それ以来国の様子が変わったみたいで」
「聖女アリア……。その名前には聞き覚えがあるな。だが――」
ルシアン王は
「――アリアは確か100年以上前の
王が
「え……どういうこと? 100年前の人って、もう死んでるよね?」
「そうだ。聖女アリアは『
それらの言葉を聞いていたロイドが補足する。
「歴史上、アリアは確かに死んでいる。
だが今のアリアは当時の記録と何も変わらぬ姿で現れ、当時の歴史を事細かに語り、そして……
「
「ああ。水を酒に変えたり、
ロイドの
自分の目で見てもなお信じきれない、といった様子だ。
「そのアリアが
「ああ……。あの聖女を止めない限り、
再び重い
「とにかく! 予が愛する
ルシアン王が立ち上がり、窓の外を見つめる。
その背中には、
「ねえ、ルシアン王」
シャルが少し
「なんだ?」
「あたしたち、しばらくこの国に
ルシアン王は
「無論だ!
その言葉に、
ようやく、安全な場所にたどり着いたのだと実感する。
「ありがとう! 本当に助かるよ」
シャルが頭を下げる。
「気にするな。さて、予はお前たちのために最高の
ルシアン王はにやりと笑った。その
「
「あー……まぁ気が向いたらね」
シャルが遠回しに断る。
その後、
食事は、アランシア名物の
シャルは
ロイドも少し
久しぶりの安らぎに、
しかし、グレイシャル
あの国の人々は、今どうしているのだろう……。食事の
そんな思いを
窓の外では、アーケイディアの夜景が静かに
■
翌朝、リンダとロイドを置いて
テーブルには色とりどりの
朝の
「さて、
ルシアン王の質問に、シャルが苦笑いを
「だから、そういう関係じゃないってば……」
ほんのりとしたベルガモットの
そのとき、
「陛下!
「なんだこんな時に? 落ち着いて話せ」
「グレイシャル
その表情に、周囲の空気が一気に
「その使者がどうした?」
「聖女アリアと名乗る者です!」
その言葉に、場が
テーブルの上の紅茶の湯気さえ、
「なに!?」
ルシアン王が立ち上がる。
「すぐに
心臓の
長い
そんなドレスにも負けない神々しいまでの肉体と
そして――人間
その
背筋が
(この、人……。いや……人間じゃない)
同時に直感した。
「アランシア王国の
しかし、その底に
「聖女アリア……。100年前の
ルシアン王の声が、
「時を
アリアの目が、
その
「グレイシャル
その言葉に、
紙の音、
「
「理由は
アリアの視線が、
「あの……聖女さん?」
シャルが一歩前に出る。
「グレイシャル
「そうですね。確かに変革の過程で、一時的な混乱は
アリアの口調は変わらず
しかし、その言葉の中に
まるで氷の
「聖なる国って?
「シャル」
ルシアン王が、シャルを制する。
「聖女アリア。
宣戦布告を受け入れよう。だが――」
ルシアン王の声が強く
「――我々は、正義のために戦う。グレイシャル
アリアは、
「そうですか。では、戦場でお会いしましょう」
そう言うと、アリアの姿が光に包まれ、消えていった。
残されたのは、
ただ心臓の
「さて」
ルシアン王が深いため息をつく。その息が、重苦しい空気を
「これより、
書類をめくる音、急ぐ足音、小声で
「ミュウ、シャル」
ルシアン王が
「
「おっけー、任せて! 今のやつを見て、あたしも
シャルは強く
「ありがとう。
その言葉が、
窓の外では、アーケイディアの街に
「戦争
平和だった街が、
アリアの正体、グレイシャル
胸の中で、不安と決意が
風が
その向こうに広がる青い空が、まるで
戦争の幕が、今、切って落とされたのだ。
その重みが、
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