第34話 障壁を解除せよ
アーサーが連行されていく足音が遠ざかり、
その静けさの中で、
心臓の音が、胸の中で大きく
ルーク――いや、ルシアン王が
「さて、ミュウ、シャル。お前たちには説明しなければならないことがある」
それでも、その声には王としての重みが感じられる。その声に
「実は、予はお前たちのことを以前から知っていた」
その言葉にシャルの目が大きく見開かれ、
「特にミュウ。『
……
シャルが広めたあの
「ノルディアスでの『石の密議』の
君の功績は、
ルシアン王の口元に、
その
「やるねミュウちゃん! でも、まさか王様まで知ってるとはね」
シャルの声には、
「ああ……実は予、
だから、君たち2人の女性
「ええ……アレ変装の
「そうだ。
ルシアン王はどうかしていた。
王様にあんまりこういうこと言うのはよくないけど……こういうこと言うから身内から反逆者が出たんじゃ……。
「アーサーにも言ったとおり、予は王である身を
そこで
この調子でどこに行っても目立つようになったりしたらどうしよう。
考えただけでもくらくらしてくる。
「さて、アーサーの件は一段落したが、まだやるべきことがある」
ルシアン王の表情が再び
「やるべきことって?」
「王宮の
「
シャルが思い出したように言う。
「そうだ。アーサーが
予は
「そっか……それって、中の人たちの食べ物とかは
「食料や水はある程度
ルシアン王の言葉に、
「ねえ、それミュウちゃんの
シャルの声が、その重い空気を破った。
「え?」
思わず声が出る。シャルの目が、期待に満ちて
「だってさ、アーサーの
「そうか! たしかに、それは可能性がありそうだ」
ルシアン王の声に、希望の色が混じる。
「どうだろう、ミュウ。
もし君が
でも、王宮全体を
「……や、や、やって……み」
「やってみるって!」
「ウーンなるほど、
ルシアン王は何事かメモを書いている。
その筆記音がかすかに耳に届く。何を書くつもりなんだろう……。
とにかく不安はあるが、今は
「よし、では急ぎ王宮へ向かおう」
ルシアン王の声に、
■
王宮までの道のりは静かだった。
夜の街を歩く
時折、遠くで犬の鳴き声が聞こえる。その声が、夜の空気に
冷たい夜風が
その風に乗って、かすかに花の
「あれが王宮だ」
ルシアン王の声に、顔を上げる。
月明かりに照らされた
その姿は
しかし、その美しい建物の周りを
その表面には複雑な文様が
文様が動くたびに、かすかに空気が
近づくにつれ、
それは、
その
「さあ、ミュウ。
ルシアン王の声に、
冷たい夜気が肺に入り、少し落ち着きを
(状態異常回復
青い光が
光の
「……あれ、効かない?」
シャルの声が聞こえる。
光が
「もう一度、ミュウちゃん!」
シャルの声に、
しかし、結果は同じだった。
「……っ」
歯がみする。これほどの規模の
そう思った
「
シャルの声が、
その手の
その言葉と手の温かさに、
シャルの言葉に勇気づけられた
今度は、これまでとは
本当は人前であんまり
深呼吸をすると、夜の冷たい空気が肺に広がる。
その空気は、かすかに花の
目を閉じ、心の中で言葉を
「乱れし波を
その声は、周囲の空気を
自分で言うのもなんだけど、それは
「
その
その光が、夜の街を昼のように照らし、
光の
光が
まるで水面に石を投げ入れたかのような、美しい同心円が広がる。
熱の中で氷が
「お、おお……!」
シャルの
その指の力から、
「これは……」
ルシアン王の声にも、明らかな
その声には、
まるで
「すごい、ミュウちゃん! 効いてるよ!」
シャルの声が興奮に満ちている。
やがて、
ガラスが
その音は、周囲の空気を
そして――
「やった!」
シャルの
月明かりに照らされた王宮は、まるで
「
シャルが
「ミュウ」
ルシアン王が、
「今の
何か問題があっただろうか。不安が胸の中に広がってしまう。
「その
ルシアン王の声には、
「え、えっと……む、昔……」
「千年以上の昔……アランシア王国の初代王は、
だが
その
ルシアン王の表情は、これまで見たことのないほど
「なんかゴルドーも似たこと言ってたよね。昔の人なんだっけ」
シャルの声が、
「ああ、昔どころではない。伝説の人物だ。
……もしやミュウ、君の使った
ますます体から力が
しかし、その問答を終わらせる間もなく、王宮の中から人々が出てきた。
「……まずは
ルシアン王は
その姿に、
「!?」
「ありがとう、ミュウ。そしてシャル。君たちの助けを、アランシア王国は決して忘れない」
ルシアン王の声には、深い感謝の念が
その言葉に、
夜風が
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