第3話 馬車に乗り行こう
――結局あのあと、完全に出来上がるまで酒を飲んでいたシャルは酒場で
「ごめんごめん、ホントーーにごめん!
シャルは起きた
その
それを見ていると、先行きが不安になった。
(はぁ……この人はお酒飲ませないほうがいいのかもなぁ……)
通りには人々の
色とりどりの
「これが必要だ」「あれも
人付き合いが苦手な
人ごみの中を歩くたび、周りの雑音がMPを
そんな歩くだけで
「ねぇミュウちゃん、アレ見て」
シャルが指差した先を見ると、そこには馬車が1台
その周りには、浅黒い
どこかから
シャルの目が
何をしたいのかわからずに不安になりつつ、
「ねえねえ、あなたたち行商人?」
「オー、そうダヨ。これカラまた別のとこに売りに行くネー」
「オーゥ、そりゃ
なぜシャルまでが
「あたし
「ハァ~? ありえナイネー! 馬車は商品積むものヨ~!」
「その代わりに、あたし
「ヒィ~! マジィ?」
「そうそう、マジ! でも
とはいえ金がないのなら労働力を
シャルの熱心なトークの末、商人たちも、護衛がついてくれるメリットを理解したようだ。
「フゥ~! そりゃ悪くないかもしれんネー!」
「よしっ、じゃあ
「よかったね! タダで馬車に乗せてくれるんだって!」
(全部聞こえてたからね。タダじゃないでしょ)
(ま、行商人だけなら……
■
馬車は、ゆっくりと街を出て行った。
車輪が
荷物の
木の
「ねえねえ、あなたたちはどこから
「オー、遠い南の国カラネー。ここまで2ヶ月以上かかったヨ」
「へぇー! そりゃすごいね! どんな国なの?」
「とっても
シャルの
街を出てしばらくすると、周囲の
馬車の
遠くには山々が連なり、青い空に白い雲がゆっくりと流れていく。のどかな風景だ。
(……なんか、
ギルド
この1年間で見ていた
たまに外に出ても、街の建物に
こんなふうに空や地平線を見たのは、いつぶりだろう。
世界の広さに、青々とした草の
風に
ふと、シャルが
「ねえ、ミュウちゃん。あんまり
むしろ、こうして
「そっか、よかった! でもさ、せっかくだし少しお
……
でも、シャルの期待に満ちた目を見ると、何か言わなければという気持ちになる。
「ぁ……あの……え、えっと……ヘヘッ……」
目を泳がせ
木箱が
「……っ!」
「なんだ!?」
シャルが立ち上がり、前方を見る。
そこには、大きな
その
「
行商人の
荷物が
シャルは
「よーし、
オーガは大きな声で
地面が
「行くよ!」
シャルが
その
シャルの
金属音と木の
空気を切り
シャルの動きは
その
しかし、オーガの力は人間に比べてはるかに強大だ。
オーガの
シャルが
そのとき、
「くっ!」
オーガの
――その
「……って、あれ?」
青白い光が
光の消えた後には、きれいな
「……!? あれ!? 今あたし
シャルの声が
「いや、なるほど、わかったよ。これがミュウちゃんのヒールってことね!
実質
新たな気力を得て、オーガに立ち向かっていった。
今までは
だが今度は
ヒールの力を確信しての、
それがかえってオーガの意表を
「そりゃああああっ!!」
一気に、
巨体が地面に
戦いの終わりを告げるかのように、風が
■
「やったぁ!」
シャルが両手を挙げて喜ぶ。その赤い
(よかった……シャルも、他に
ヒールを使用した
人の
「ねえねえ、ミュウちゃん! あたしが
シャルが
その目は
「……」
戦いで上がった
「オーゥ! みんな無事カ!?」
行商人たちが、
シャルが元気よく手を
「
その声を聞いて、行商人たちがホッとした表情を
しかし、その
「ヒヒィィィィン!」
(えっ、何!?)
馬は目を見開き、前足で地面を
その体は
「どうしたの!? なんか馬暴れてるよ!」
「ちょっと、おとなしくシロッテ! オイ、
行商人たちが
しかし、馬は
……どうでもいいけど、
「クソッ! まずいゾ、このままじゃ馬車ガ……!」
木箱がぶつかり合う音が
見かねたシャルも馬に近づこうとするが……。
「お、落ち着きなって
「ヒヒィィーーン!!」
「ダメだ! 近づくナ! そいつは人間を
(このままじゃ……)
(ヒール
迷う時間はない。
「ミュウちゃん!?
シャルが心配そうに
でも今は、
馬は
ゆっくり動いたおかげだろうか。
馬の
(お願い……うまくいって……!)
馬の体温と
馬の体が緑の光に包まれた。その光は
(精神回復
「……あ!」
シャルが小さく声を上げる。行商人たちも、息を
空気が
光が消えると、馬の
その目は
「す、スゲェ!」
「馬が……おとなしくナッタ……! 助かっタ!」
行商人たちが
「ミュウちゃん! すごいよ! どうやったの!? 人間だけじゃなくて馬までヒールできるなんてねぇ!」
シャルが
「……っ!」
「やっぱりミュウちゃんって
続いて行商人たちも近づいてきて、お礼を言ってくれた。
「本当に助かったヨ! ありがとう!」
「お
頭を下げると、ほんのりと
(……自分の力を
全然知らなかった。見返りとか、
これからは、少しくらい――。求めてもいいのかもしれないと思った。
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