賞レース 十三歳の援助譚

SHOW RACE 十三歳の援助譚


明保野書房小郡店に在庫を持っていった。

店長が来店している日を見計らって。

結果は「NG!」だった。

書籍に魅力がない、というよりは

書籍を置くスペースがないみたいだ。


どうぞ、とばかりにフロアを案内されたが、

特に平積みZONEは、学生のためのコーナー

夏休みの課題図書や、夏文庫に占拠されており

例え、ぼくが店長だったとしても

新規の書籍を持って来られても

「一体、どこに置けばいいのやら……」

額の汗を拭き拭き対応である。無い袖は振れぬ、か。


だったら、夏休みの課題図書や夏文庫がはける、

秋季に標準を合わせるのはどうか?

巧みに交渉してみたら、返事はすこぶる良かった。

次の交渉は一応、長月元日……

9月1日でオナシャス!(古い若者言葉)


「明保野書房、意外にも在庫を一冊も置けなかったよ」

「橙本の時はウェルカム・ムード全開だったのにねえ」

「緑本の方が質は高いけど、立ち止まって読む時間がないよね」

「店長の過重労働をお察しするわ。私だったら音を上げそうよ」


「紫本を書こうとしてたじゃん。緑の続編に当たるの?」

「勿論、そのつもりで書くけど、未だノープランなのよ」

「それは際どい計画だね。もう原稿を金庫に入れているのかと」

「イギリスの児童文学じゃないんだから。でも、急がなきゃ!」


「紫本のキャッチコピーってBILLIONのアレでしょ?」

「そうね。ONE,TWO,BILLIONで〆たいのよ!」

「短編連作を編んで来たから、最後も因果を持たせたいね!」

「橙本に繋がるもの、緑本に繋がるもの。Wの仕掛けで、ね」

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