第7話 美影の思わぬ才能?
美影と初めて会った日は日曜日だが少しトラブルがあったらしく授業だった為、学校だった。そして今日は金曜日。つまり明日は休みである。僕は明日の休みに期待を膨らませながら図書室の扉を開けて中へ入る。
「夕樹、暇。なんか面白い話して」
「うん、無理だよ?」
開いた本を顔に乗せ、椅子に座って力なくだらけている美影がそんな無茶振りをしてくる。
「面白く無かったら死刑ね」
「罰重すぎない?!」
口を開いて1発目から無茶振りをして来た上に罰が最高刑って。鬼畜じゃん。
「だってもう折り紙飽きたんだもん」
「折り紙?」
僕は美影の前にある机をみてみると、「折り紙の折り方」という本、そして美影が折ったであろう折り紙達があった。数十枚というほどの量だが、僕が1番驚いたのはそこではない。
「これは鶴。これは鳩かな? 蛙にユリの花、それに立体的な兎。え〜と、これは……桃の花? え、折り紙で桃の花なんて折れるの?」
「うん。まあこの本にあったやつを適当に折ってただけだけどね。久しぶりに折ったけど意外と楽しかった」
美影の手先の器用さに驚く。これが久しぶりって……僕なんて紙飛行機しか折れないのに。もしかしたら美影には才能があるのかも?
「夕樹もやる? 簡単なやつなら教えられるけど」
「……簡単なやつとか言っておいて龍を折る、みたいな感じじゃないよね? 美影ならやりそう」
「……私はそんな事しない」
「……ふふ」
僕の冗談に頬を膨らませ、反論する美影。いつも揶揄われる側だからか新鮮で面白い。
「……今、私の事揶揄ったでしょ?」
「いや、ごめんごめん。悪気は無かった。……ふふふふ」
「夕樹なんて知らない。もう帰って」
子供のようにぷいっとそっぽを向く美影。僕は揶揄いすぎたと反省して美影を宥める。
「本当にごめんね。いつも美影に揶揄われてるからちょっとした仕返しのつもりだったんだ」
「……反省してる?」
「してます」
「なら許す」
美影は満足げに頷いた後、すぐに「折り紙するなら座って。教えてあげるから」と隣の椅子をぽんぽんと叩く。
今から僕達が折るのは桜に決まった。美影が桜にしようと言った為そうなったが僕は内心不安である。だって折り紙で花を折るって難しそうじゃない?
僕がその席に座るとすぐ美影先生による折り紙のレッスンが始まった。
「そこはこう折って……うん、そうそう。上手いね夕樹」
僕はたまに躓いたりしたが何とか折り進めていく。ちなみに美影も一緒に折っている。
美影、本当に手先器用なんだ。僕に教えながらも淡々と自分の分を折っていて尊敬せざるを得ない。僕なんて自分ので手一杯なのに。
「よし、ここまで来たら後はこの本の通りにハサミで切るだけ」
その後、本を何度も読み直して苦戦しながらもなんとか切り終わり、開いてみる。
「え、凄い。本当に桜だ」
「だから言ったじゃん、簡単だって」
少し不格好だが、桜に見えなくもない……と僕は思う。
「と言うか、本当に久しぶりなの? 凄く上手いけど」
僕の所々変な桜とは違い、美影のはまるでプロが作ったかのような綺麗な桜だった。折り紙にプロがいるかはわからないけど。
「うん、久しぶりだよ。前に人間の女の子と折ったくらい」
「え、人間の女の子?」
美影は「そうだよ。懐かしいな〜」と零しながら天井を見上げる。
「その子、花が好きって言ってたから一緒に折ったの。あと夕樹と同じように色々な事に対して鋭かったかも。今どうしているのかな? ちゃんと大人になれたかな?」
「大人って事は結構昔?」
「多分そうでも無いと思うよ? う〜んと……12か13年前くらい?」
意外と近かった。美影は幽霊なので長生きしているから数百年みたいな数字が来るのかと思った。高校生って事は15〜18歳。その数字に12か13を足して……最小が27歳、最大が31歳かな?
「その時はまだここで授業をやってたから噂を聞いた人間達がいっぱいトイレに来てね。良い加減面倒だなって思って1人脅かしてみんなに広めてもらおうって思ったんだけど……」
「だけど?」
「運悪く、その子が幽霊とかに興味がある子で……毎日出て来て〜って大声で言われて、私が根負けした感じ」
「あ〜……成程」
僕はホラー系とか苦手だからなぁ。僕だったら初めて美影に会った時みたいに動けなくなると思う。
「ま、そんな事は置いておいて。この後はどうする?」
「ごめん、僕今日は用事があるから帰らないと」
「わかった、また明日ね。あ、この桜あげる」
「うん、また明日」
そして僕は図書室を後にし、旧校舎の昇降口で靴を履いて歩き出す。
明日は休みだし何をしようかな。ゲームをする? それとも漫画を読む? あ、録りためてたアニメも見ないと。やっと来た休みだし楽しまなきゃ。
だが、僕はそこで先程の美影と僕の言葉に違和感を持った。
「また明日? ……美影、まさか……いや、流石にね、うん。気にしないようにしよう」
そして僕は南さんに頼まれてた買い物をした後、帰路に着くのだった。
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