第3話:はじめまして、メイです。

「お〜来たか、新一」


「完成したって?博士・・・もう忘れてるのかと思った」

「そういうの、今までいっぱいあるもんな」


「バカもん・・・わしを見くびっては胃肝臓・・・いとかんぞう、なんちゃって」


「そんなの、いいから・・・」


「おう、これから進水式だ」


「それ、船だろ」


「なんて言っていいか分からんからそれでいいんだ」


「完成式とか除幕式とかっていうんじゃないか?」


「勉強できんわりに、どうでもいいことはよく知っとるんだな」

「なんでもいいわい」

「お前にその除幕式とやらをやらせてやろう」

「そこの白い布・・・それををひぱってみ・・・」


その薄汚れた布はなにかを覆っていた。


「これか、白いって・・・ずいぶん汚ったない布だな」

「なんかこう劇的にやりたいよな」


「オーケストラを雇う金はないからな」

「せめてアマチュアバンドでもと思ったが予算がな、要は中身だからの」


それじゃ〜って言うので新一は布を取った。

すると、どこかのメイド喫茶からスカウトしてきたの?・・・と思うような

可愛いメイドさんがちょこんと椅子に座っていた。


この可愛さは博士のセンスじゃなくオリジエント工業の技術の賜物であった

のだろう。


「お〜可愛い、めっちゃリアル・・でも誰がモデル?」


「そんなことはどうでもよかろう・・・」


博士は言葉を濁した。

誰かに似てるって言えば、まじで肖像権侵害になるから、適当〜。


「この子動くのか?」


「誰が作ったと思ってるだ・・・」


「だから不安なんだよ」


「やかましいわ・・・汚い手で触るなよ・・・」

「起動するぞ・・・」


そう言って博士はメイドさんの腰のあたりを指で押した。

するとメイドさんは大息をついて、まばたきした。


「ほほ・・・動くぞ〜」

「驚くのはこれからじゃ」


「メイ、聞こえるか?」


「聞こえる・・・」


「この子メイって言うのか・・・」


「メイの名前はメイク・ザ・イントロダクション「創造のテクノロジーの導入」 と言う意味から頭文字をとってメイと名付けたのだ・・・ハイカラであろうが

未熟者」


「ハイカラってなに?」


「おしゃれっちゅ〜ことじゃろ?・・・古すぎて分からん」


「知らないで使ってたの?」


「話の腰を折るな・・・そんなことはどうでもよかろう」


「メイ、こいつは新一・・・星野新一だ・・・」


するとメイが新一のほうを見て言った。


「星野新一?、話の腰を折るな・・・未熟者」


「わ〜博士と似てクチわる〜」


「言語能力はわしがインプットしたからな」


「もっと女らしくならない?・・・可愛げがないんだけど」


「今更な、修正するのに何時間もかかるからのう・・・面倒くさい」

「少しづつ自分で修復していくじゃろうが・・・」


「そうじゃ言葉は、新一おまえが教えろ」


「俺が?」


「それもまあ不安じゃがな・・・」

「言語以外は、どこもバグはないと思うが・・・メイ立って歩いてみろ」


そう言われたメイは、椅子からひょこんと立って自分の足で歩いて、そしていきなり裏の河川敷に向かって走り去って行って、あっと言う間に見えなくなった。


「歩けって言ったんじゃがのう~・・・」


「足はや・・・え、目覚めた一気でもう家出かよ」


3分ほどして、向こうからメイが走って帰ってきた。

手にソフトクリームをふたつ持っていた。


「この子どっかでアイスパクって来たぜ」


「ま、道徳心やモラルも今後の課題かのう」

「ちゃんと動いとるようだから多少のことは目をつぶろう」

「さて、これで毎日ラーメンだの焼きそばだの即席物から解放されるわい」


「こんにちは新一、メイです、はじめまして、よろしくね」

「ほいっ、あげるアイス」


今度は、めっちゃぶりっ子だった。

メイはパクってきたばかりのアイスを新一に差し出した。


「食え!!」


「おうっ、ありがとう」

「俺のこと新一でいいから・・・メイちゃん、改めてよろしく」


つづくぞ。

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