第2話:博士と信一。

ここは、まほろば商店街。

哀愁のある名前に名前負けしている商店街・・・町民によって賑わう気配など、

どこにもないさびれた商店街。


大手スーパーの進出により、ここにもシワ寄せが来たがなんとか持っている。

世間ではさびれた商店街のことをシャッター商店街などと言われているが、

ここもご多分に漏れずだ・・・。

そのうち町自体、ゴーストタウンって呼ばれる時が来るかもしれない。


その商店街の中ほどに商売とは、まったく関係ない家が一軒あった。

家と言うか、鉄骨とスレートでできた鉄工所のような建物だった。


そこは発明家の「お茶柱 立蔵博士おちゃばしら たつぞうはかせ」の研究所だ。

商店街にはそぐわない、しっかり場違いな存在だった。


時々博士の研究で電力を使いすぎて商店街が停電することがありよく周りから

クレームが来た。

商店街の中に無理やり建てたのか、それとも商店街ができる前にすでに建って

いたのか、それはさだかではない。


その博士の家の裏に広場があって、一角に「星野 新一ほしの しんいち」の家があって、その向こう側が河川敷になっていた。

新一は子供の頃から親戚みたいに博士の研究所に出入りしていた。

半ば、勉強そっちのけで博士のパシリや助手のようなこともしていた。


博士もなにかとひとりだと不便とよく働く新一の存在を重宝していた。


その日、新一が博士の研究所を尋ねると博士が急にメイドのアンドロイドを

作るといい出した。


「メイド?」

「博士、メイドのアンドロイドって?・・・あられちゃん?」


「違うわ・・・もうちょっと年上のメイドだわい」


「厳密にはアンドロイドじゃなくてガイノイドって言うんじゃがな」

「男性型がアンドロド、女性型がガイノイドっちゅうんじゃ」


「そろそろ自分で飯を作るのもめんどうになってきたからな」

「それに最近わしの研究を狙って妙なやつらの不穏な動きがある」

「だから、わしのボディガードも兼ねての・・・」


「研究を狙って?って・・・物好きなやつらもいたもんだな」


「やかましいわい」

「よってメイドを作ってわしを守ってもらおうと思ってな」


「それならメイドなんかじゃなくマッチョなロボット作ったほうがよかないか?」


「バカか?、おまえは・・・ターミネーターじゃあるまいしそんなもの、

作って何が楽しい・・・筋肉バカなどいらん」


「じゃあ、いっそ奥さん作れば? 」

「それも、つまらんだろうが・・・年相応の地味な奥さん見るよりピチピチの

若いメイドのほうが見てて毎日楽しいだろ 」


「言えてる・・・動機は不純だけど・・・賛成」


「ビッグサービスだ・・・メイドの顔、お前の好みの顔にしてやるぞ」


「??まじで?」


「そこに雑誌があるからその中から誰か選べ」


「どれどれ・・・」

「これ昔の邦画特集じゃん・・・」


「普通の女子高生を撮ろうとしたら盗撮だと思われて、 捕まりそうになった

からな・・・」


「俺の知らない女優さんばっか・・・

高峰三枝子?・・・草笛光子?・・・岸恵子?・・・なにこれ、犬神家の一族?」


「やっぱりここは旬の女優さんかグラビアでしょ」

「つうか博士が好むタイプ以外なら誰でもいいんじゃないか?」


「まあ、その中から選べと言ったが、やはり芸能人の誰かに似てるってのも、

まずかろうな・・・」

「肖像権の問題もあるしのう」

「ま、それは追い追い考えることにしよう」


「俺も手伝うよ」


「いやいや、作るのは女の子じゃ、未成年には刺激が強い工程もあるからな・・・」

「なんせガイノイドと言ってもセクサロイドでもあるからな」


「なにそのセクサロイドって?」

「ちゃんとエッチできる機能も備わったガイノイドのことじゃ」


「まじで?・・・めちゃ本格的じゃん」


「それがないと女性とは言えんじゃろ?」

「だからわし一人で作る」


「オリジエント工業にも協力してもらわんといかんしな」

「ロボット研究者の石川 なにがしにも協力を願わんといかんし・・・」


「刺激が強すぎるから未成年は立ち入り禁止じゃ」

「完成間近になったら、連絡してやるから、しばらく来るな」


って博士が言ってから、3年がすぎた。


その間も新一は博士の研究所にときどき顔をだしたが、一向にメイドを作っている

気配はないように見えた。


もしかしたら極秘裏にことが進んでいたのかメイドを作ると博士が言い始めた頃、

新一は14歳だった。

あれから3年・・・新一は高校生になり17歳になっていた。

メイドのことなど、すっかり忘れてた頃に博士から連絡が入った。


「完成したぞ、新一・・・研究所まで来い」


「また、ガラクタ?」


「見せてやらんぞ・・・メイドが完成したんじゃ・・・バカもん」


つづくぞ。

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