「脳筋令嬢」と「激重執事」のコンビが繰り広げる、異世界転生ものの常識をぶち壊す笑いと涙の大冒険譚。ヒロイン・ロコスが持つ二つの武器、前世の乙女ゲーム知識とまさかの筋肉で困難をゴリ押しする解決する様は、ハリウッドアクション映画のヒロインが突然ラブコメに紛れ込んだような痛快さ。婚約破棄の儀式で「もう頭に来て大暴れ!!!」と叫びながら会場をメチャクチャにするシーンは、作者が読者に投げかける最初の笑撃弾です。
ショタ顔の執事少年ペリットの「お嬢様」という甘い呼びかけと、その裏に潜む「骨まで愛したい」という激重な愛のコントラスト。生死をかけた緊張感の中、突然「筋肉で水分補給」と言い出すヒロイン。読んでいる途中で腹がよじれるほど笑い、次のページでは喉が渇き、そのまた次で目頭が熱くなる、そんなジェットコースター感覚が味わえます。
文明社会と野生の狭間で揺れる二人の関係。ロコスの「推し活」ならぬ「推し守り」に奔走する姿と、ペリットの重い過去から浮かび上がる社会の偏見と身分差の恋が、コミカルな描写の中にしっかりと流れています。甘いだけではなく、中から塩キャラメルがじんわり広がるような深みがあります。
ラストに向かう展開は、読者の予想を軽々と超える疾走感。これが「誘拐されたい」というタイトル回収か! と膝を打つ瞬間からはもう、最後のページまで目が離せません。筋肉自慢の令嬢が繰り出す物理的解決と、執事の激重ラブパワーが化学反応を起こし、物語は常識の枠をぶち破っていきます。
乙女ゲーム転生のテンプレを筋肉で捻じ曲げ、異種族恋愛を骨まで噛み砕いた破天荒な物語。笑いの弾幕と切ない描写が交互に襲いかかり、読者は最後までその波間に翻弄されるでしょう。読み進める途中で頬が痙攣したら、それは本作の「パワー系」エネルギーが伝染した証拠。その筋肉痛のような笑いの後には、きっと心がほぐれる温かさが待っています。