第19話

感想を書いているときに、『それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている』と、書くことが多いなと感じています。

中心軌道というのは、物語を貫いている主人公の葛藤の流れです。

どういう流れかというと、次のとおりです。


xはyを誘導したり騙したりするが、zを手に入れるため。

やがてyは本来持っている力を発揮。

xとyの関係性は逆転する。

xはzを失うか自ら放棄し、yとの関係性が再構築される。


別れや悲恋、すれ違いなどによく見られます。

それ以外に、成長や読後の良い作品もありました。

二人の主人公が出てくるので、三人称なら書きやすいかもしれません。

でも、一人称でも十分書けますし、多くの人が書いています。

どのように書かれているかといいますと、主人公が人で相手が物、あるいは逆、主人公が物で相手が人。他には、前半がAという子、後半がBという子で書いたり、AとBの視点を交互に切り替えて話が進んだり。現在と過去という扱い方もありました。

いろいろなパターンと組み合わせで、上手く描いているのです。

とくにショートストーリーで見かける気がします。

4000字と短い字数の中で読者を楽しませようと、描写や比喩表現、見せ方描き方、いろいろな工夫がされているのを読むと、本当に凄まじいなぁ、と感服します。


ただ、視点は変えないほうがいい気がします。前後半で主人公を変えると、前半の主人公に共感してきたのに、後半で新たなキャラに共感し直さなくてはならなくなるので、集中が途切れてしまいかねません。

AとBの視点を交互に切り替えて話が進む作品は、初見ではわかりにくいかなというのが難点に感じました。気づけば、やっていることがわかるので、共感も感情移入もしやすくなるのですけど。

二度目はしっかり読める作品でした。でも、途中のモヤッとするものがあるから、読み手はなんだろうと思って深く読もうとするのだから、悪い試みではないですよね。

そういうことも見越して書いている作者さんは、読者を信じているのです。

こういう書き方をしても、伝わる人には伝わる、と。

そんな作品に出会うと、本当に、ため息が出ます。

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