第9話

毎年、一人か二人、すごい出来の作品を書く作者に出会います。

だからといって、最終選考に残るかといえば、残らない。

厳密にいえば、残って受賞した人もいました。

そういう作品は、どちらかといえば純文学というよりも、エンタメ要素が強かった印象です。読後も、いい作品です。

残らなかった作品が、けっして悪いわけではないのです。

尖った作品で、文章も描写も いいけれども、求められているものと少し違うのだろうなと思うことがあります。


どんな作品を応募してもいいですよと謳っていっても、それぞれの賞にはレーベルカラーがあり、求めているものでない作品は、いい出来だとしても弾かれてしまうのは当然です。

たとえば、講談社の児童文学新人賞という賞があります。

はじめて物語に出会う子どもから、ヤングアダルトまでを対象とした独創性ある作品、ジャンルは童話、少年少女小説、ファンタジー、SF、推理小説、探検冒険小説など、幅広いジャンルを受け入れるとしているけれども、時代性があり現代的な少年少女が登場するエンタメ作品を求めている傾向があります。昔ながらの、暗くて重いような内容は、今の時代に合わない印象です。

また、登場人物が動物たちのファンシーなものを応募しても、通らない。読者をヤングアダルトにしているけれども、大人が読んでも楽しめる幅広い読者層が求められているのが、過去の受賞作品から感じられます。


また、景気が悪く社会不安がある時代だと、暗い話よりも明るめの話が好まれます。せめてお話の中だけでも夢を見たいと思うものです。

景気に波があり、いつも一定ではないので、昔流行っていたものが再ブレイクすることもあれば、いまの流行りがいつまでも通用するわけでもありません。


純文学を謳って募集しているところ以外は、どこもエンタメ色の作品を求めている気がします。カクヨム甲子園も、そうだと思います。断言はしませんが。


エンタメ系にしろ純文学にしろ、自作のウリがどこにあるのか説明できない作品は、最終まで残るのは難しいかもしれない。

そんなことを、たまに考えながら、読んでは書いてます。

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