第7話 聖女サリー ②

「ど、どどどど、どうしま、しょう!」


いつでも落ち着いて、声を荒げることさえ無い母が、吃るほどの物が箱の中に有るのだろうか。


「………………………………………ヒッ!」


私の後ろでは、家令のジョンが、悲鳴を上げた後白目を剥いて絶句していて。

トレイに乗せられた革袋を、使者を迎え入れた応接間のテーブルに置いて封印された革紐を解いて中を覗き込んで動かなくなっていた。


「お、おっ、王家に伝わると言われている、魔除けの宝玉に劣らない………………………」


母の言葉を聞いて、見るのが怖くなるわね。


「………………………………………初めて、見ました。」


ジョンの方も、想像を超える物が入っていそうだわね。


「………………………………………お父様、何が起きているのでしょうか。」


私に対して聖女の名が出て来ている以上は、魔王討伐が始まるのでしょうね。

と言うことは、勇者候補が見つかったのでしょうか。

父からの返事が無いので、母の手元を覗き込んでみる。


「………………………………………え?」


箱の中身は、鮮やかな赤いドレス一式と、透明度の高い大きな青色な宝玉のペンダントだった。


「………………………………………これ、貸してもらえるのよね?」


「………………………………………いや、下賜するとある。これは、もうお前の物だ。だが、恐らく、これ一つで我が領地の年間予算の何倍にも匹敵するだろう。」


「………………………………………旦那様、こちらも。」


ジョンに促されて、父に続いて母と私も彼の手元を覗き込んで。

袋の中身をトレイの上に一枚ずつ並べていく。

それらは、大白金貨一枚と、大金貨数十枚だった。


「………………………………………初めて、見るわね。」


「ああ、私も、初めて見るな。本当に存在したんだ、大白金貨。」


父でさえ初めてなのね。

私は大金貨も初めて見るわよ。

私、王城に登城して、生きて帰れるのかしら。

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