第2話 報奨授与
「勇者サチには、魔王討伐の功績により子爵位を授ける。異議の有る者は、この場で申し出よ!」
謁見の間なのだろうか?
一瞬だけざわついたが、周りにいる貴族然とした人々は不服そうな顔をしたものの誰も声を上げることは無かった。
………………………………………ここで俺が異議あり!なんて申し出たら、不敬で死罪にでもなるのかな。
爵位なんて、正直要らないんだけど。
「異議無ければ、報奨の授与に移る。約束通りに、領地と王女の中から望みの者を授ける。領地は後ほど代官を付けるよって、相談して選ぶが良い。王女はこの場で選ぶように。」
………………………………………そんな約束、俺はしてないんだけど。
でも、俺の中に残っているサチの意識は、第一王女を選んでいて。
でも、俺の記憶の中では、第一から第七王女までの誰かを選ぶと破滅まっしぐらの運命が待っているんだぞ。
王座の前に並べられた豪奢なドレス姿の女性達。
サチがすかさず進み出ようとするのを必死に押し留める、俺。
目の前に並んだ、八人の王女達。
………………………………………あれ、八人?
俺の記憶でも、サチの記憶でも、王女は七人だったはずで。
八人目は誰だろうと、端から目を凝らして確かめる。
第一から第七までは、姿絵が公開されていたからサチの記憶の中に有って確かめられて。
残り一人は、黒目黒髪の背の低い女性だった。
これは、賭けだな。
そう思いながら、サチの記憶の抵抗を無視して、黒髪女性の前に進み出て片膝をつき名乗りながら尋ねてみる。
「サチと申します。勇者と呼ばれております。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
場が凍りついたのが、わかった。
特に第一から第七王女が、息を呑むのが感じられた。
それはそうだろう。まかり間違えば、それぞれの王女が俺と意に沿わぬ婚姻を結ばされるのだからな。
王族の義務としての政略結婚、それがこの場では自身から消え去った瞬間なのだから、当然の事だったろうし。
「………………………………………わ、私は、ぁ、あの、え、うわぁ?」
まさか声を掛けられるとは思わなかったのか、動揺して要領を得ない返事で。
落ち着くまで、その黒目を見つめながら待った。
「ふぅ、ぁ、メグミ、と、も、もうしまぁ、すぅ?」
やはり、聞かない名前で。
俺の知るストーリーには無いキャラだ。
王女達の誰を選んでも破滅が待っているなら、好みの容姿の彼女に賭けてみようと思って右手を伸ばして誘ってみた。
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