夢は醒める
夢を見た。
「それは卑怯だ!」
叫んでいたのは父の実子で『弟』だったろうか?
「なぜ来たばかりのお前が、お前だけが認められる!」
吠える弟は私を睨んでいた。
「癇癪は良くないな」
静かな声は王子だったろう。
弟は狼狽していただろうか? あまり記憶に残っていない。
「本をとってくださるお約束でしょ?」
聖女に腕を取られて書庫に連れられたんだ。確か。
「約束?」
記憶になかった。
使用人が脇に寄って頭を下げる回廊で幼い聖女は澄まして笑う。
「面倒ですもの。身分ある特別な者に刃向かえないことがわかっている方で幸いでした」
ぐいぐいと私の腕を掴む聖女の温もりはいつしかあって当然のモノだった。
ああ。卑怯だ。王子も聖女も私が自覚する必要もないとばかりにあたりまえにそこにいた。
二人がなぜ私につきまとっていたのかは知らない。
ただ、そのことで私が大きな恩恵を受けていたことは知っている。
王子も聖女も私と違って特別で人に望まれていた。
だからこそ私はうとまれつつ、致命的に排除はされずにいた。
弟が叫んでいた。「どうして!?」と。
そんなことは私は、私だって知らない。
無事着いたという内容の手紙を二人に送ったら聖女から返事がきた。
『予定が突っ込めれたら遊びに行く』
と。
あの女、王子との婚約はどうした?
一緒に来るのか?
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