がんばれ

 旦那様がガートンと砦街へ出かけたタイミングを狙ったように坊ちゃんからの通信がきた。


『坊ちゃんはそろそろやめておくれよ。ニュー』


 通信機越しでも坊ちゃんが苦笑いしている姿が想像できて笑みがこぼれる。


『ニュー、スコット君はうまくやっているかい? 魔力は高いはずだから条件は満たしていただろう?』

「そう、ですね。魔力は品質良く潤沢。問題はお屋敷入りの初動時にニューを排除しようとなすったことですね。困っちゃいます」


 一拍沈黙を挟んで弾けるように笑い声が響いた。

 殴打音すら聞こえるので坊ちゃんは腿を叩いて笑い転げているようです。ニュー、拗ねますよ。


『まぁ、人付き合いが得意な子ではないからね。んー、そう悪い子ではないと思うからよろしく頼むよ』

「王都に連れ戻す予定があったりするんですか?」


 有能な人材だというのなら可能性がないとは言えない。


『ないよ』

 ニューの疑問に返ってきた答えは実に簡潔。

 ニュー、旦那様は生活ポンコツですけどお仕事はできてたんじゃないかなーって思うのですよね。生活ポンコツ対人無能ですけど。


『魔力も高く使い道は多い子だけど、それを踏まえても対人関係が拙過ぎる。それだけでいい道具ならともかく、甥っ子達も気に入っている。使い道は考えないといけない。でなければ、あの子自身が変わらなければいけない。使い捨て以外の道具になれるようにね。だからね、ニューのところで過ごすことが有益だと思うんだよ』


 そうですか。

 坊ちゃんからのニューへの信頼が重いですね。やはりおねしょの隠蔽とかも手伝ってきた長年の信頼ですね。坊ちゃんかわいい。


「つまり、このニューが旦那様のしたいこと。本当の旦那様らしさを見つけて育てていくワケですね! 坊ちゃんがニューならできるとおっしゃるなら、ええ! ニューは頑張ってみせますよ!」

『え? ああ。うん。ニューならできるよ。ニューだからね。でも無理しないでほしいな。人にはそれぞれ許容範囲ってものがあるからね?』

「まずは、おいしい食事で体重増加からの健康生活です!」


 気合いが入りますね!


『ぁー。スコット君、がんばれ』


 通信は切れ、ニューは旦那様が帰ってきた後に食べるお食事の仕込みに入るのです。

 食べやすく、消化良く身につくお食事を心がけますよ!

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