額縁に彩られた寂寥
「ニューはそれ嫉妬だと思います」
勝手口周りの裏庭で薪割りやら掃除やらの手解きを受けながらの雑談だった筈だ。
嫉妬?
よくわからないな。
ローレンス邸が記憶にあると思って突き詰めた結果が幼子が笑顔で手を広げた絵の背景がローレンス邸だったと思い出せた。それだけだ。
都市部の集合住宅以外はみなローレンス邸と同様の外観だというのなら不明だが。
王都では全てがひとつの建築物に内包されていた。
貧しい者、才のない者は生涯『空』を知る機会を得ない。いくつもの庭の下で生活する者に空とは天井であるから。
私は才を認められ父を得て空を知り、いまや夕暮れや虹を知る。私は王都で在った時から既に幸運な人生であった。ちゃんと理解している。
なにを嫉妬するというのか?
ただ、ローレンス邸を背景としたあの絵はとても広く見えた。ただの絵なのに。王都の外観を描いた絵より記憶に残っているのだ。
「どれほど恵まれていても嫉妬はするものですよ? それに恵まれているって主観、旦那様の気持ち次第ですもん」
私の気持ち次第?
「不合理では?」
「ニューにはわかりません。ニューはいま旦那様と夕暮れを見ながらお片付けできるしあわせに満たされてますから」
無責任な笑顔をむけてくる小娘を苛立たしいと感じる。
片付けの手際の悪さに自己嫌悪が存在する。
できるはずだ。
父に選ばれ空を知ったように。
自分の部屋を与えられたように。
それなのにいま私は染まる赤に見惚れた。
空はどこまでも届かない。
父に連れられて見た空はどこまでも眩しかった。
あの時、私はなにを望んだのだろう。
◽︎▫︎◻︎
『夕暮れ/嫉妬/写真(または絵画)』のキーワードを使って5ツイート以内で今日のネタを作りましょう。【フラグポイント:+0】
#odaidegoal #shindanmaker
https://shindanmaker.com/320594
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます