額縁に彩られた寂寥


「ニューはそれ嫉妬だと思います」


 勝手口周りの裏庭で薪割りやら掃除やらの手解きを受けながらの雑談だった筈だ。

 嫉妬?

 よくわからないな。

 ローレンス邸が記憶にあると思って突き詰めた結果が幼子が笑顔で手を広げた絵の背景がローレンス邸だったと思い出せた。それだけだ。

 都市部の集合住宅以外はみなローレンス邸と同様の外観だというのなら不明だが。

 王都では全てがひとつの建築物に内包されていた。

 貧しい者、才のない者は生涯『空』を知る機会を得ない。いくつもの庭の下で生活する者に空とは天井であるから。

 私は才を認められ父を得て空を知り、いまや夕暮れや虹を知る。私は王都で在った時から既に幸運な人生であった。ちゃんと理解している。

 なにを嫉妬するというのか?

 ただ、ローレンス邸を背景としたあの絵はとても広く見えた。ただの絵なのに。王都の外観を描いた絵より記憶に残っているのだ。


「どれほど恵まれていても嫉妬はするものですよ? それに恵まれているって主観、旦那様の気持ち次第ですもん」


 私の気持ち次第?


「不合理では?」

「ニューにはわかりません。ニューはいま旦那様と夕暮れを見ながらお片付けできるしあわせに満たされてますから」


 無責任な笑顔をむけてくる小娘を苛立たしいと感じる。

 片付けの手際の悪さに自己嫌悪が存在する。

 できるはずだ。

 父に選ばれ空を知ったように。

 自分の部屋を与えられたように。

 それなのにいま私は染まる赤に見惚れた。

 空はどこまでも届かない。


 父に連れられて見た空はどこまでも眩しかった。


 あの時、私はなにを望んだのだろう。



 ◽︎▫︎◻︎


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