第4章 悪夢の王国記念日編
第1話 夢見る少女と潜む影
「ありがとう、市長! またねー!」
「はい、またお会いしましょう。ハンターが多いので、道中お気をつけてください」
アリアはシュルト市長に元気にお別れを告げました。
「わぁ、もう王都に着いた! 市長、すごーい!」
シュルト市長はシュルトシティと王都の間に新たに道を開拓し、さらに多くの人が利用できるようにと簡易機関車を開発したのです。以前はトロッコで片道に約一年かかっていた道のりが、多少歩くことがあっても、今では一週間ほどでシュルトシティと王都を往復できるようになりました。
アリアはその機関車を利用し、三日間かけて王都に戻ってきました。
「えっと、学園長室に行けばいいんだったよね」
そう独り言を呟きながら、アリアは冒険者学園の学園長室に向かいます。
学園長室の扉の前で、アリアは『コンコンッ』とノックをしました。すると、奥の方から「開いていますよ、どうぞ」とビーリスの優しい声が聞こえてきました。
「失礼しまーす!」
アリアが扉を開けると、そこにはビーリスと学園長が机を挟んでお茶を楽しんでいる姿がありました。
「あら、アリアさん。早かったですね。いらっしゃい」
「学園長、こんにちは! ママからの手紙、読んでくれた?」
学園長は少し困った表情を浮かべながら、「え、えぇ、読ませていただいたわ」と返答します。
「ママ、なんて書いてたの?」
「えーっと、娘をよろしくねって書いてあったわよ」
アリアの勢いに少し圧倒されながらも、学園長はなんとか対処しました。
「そうなんだ!」
アリアが話し終えると、ビーリスは優しく微笑みながらも、申し訳なさそうに言います。
「せっかくの帰省なのに、私のお願いのために申し訳ありません。夏季休暇も別の形で必ずお返ししますので、今は、どうか私に力を貸してください」
アリアはすぐに元気よく答えます。「うん! 大丈夫だよ! 私で力になれるなら頑張る!」
「ありがとうございます。その慈悲に深く感謝いたします」
ビーリスは感謝の意を込めてアリアに頭を下げました。
アリアはビーリスとの約束を果たすために、学園へと戻ってきたのでした。
「私はここで何をすればいいの?」とアリアが問いかけます。
ビーリスは優しく微笑んで答えます。「いえ、ここでは何もしませんよ。私の領地――つまり家で行います。ここに来てもらったのは、分かりやすい説明のためです。――では、学園長、先ほどのお話、よろしくお願いしますね」
「はい、前向きに進めさせていただきます」と学園長が穏やかに返答します。
ビーリスは学園長に軽くお辞儀をして、アリアに向き直り、「では、アリアさん。早速ですが、私の家に向かいましょう。そこで詳しく説明させていただきます」と言いました。
「はーい!」とアリアは元気に応じ、二人はその場を後にしました。
二人が退室して数分後、学園長は静かに「もう出てきていいですよ」と呟きました。
「やれやれ、やっと終わったか。本当に長話が好きだよなぁ、人間って」と言いながら、机の裏から姿を現したのはシャーリーでした。
「これも我々の女神様が願いに近づくためです。我慢なさい」学園長は淡々と答えます。
シャーリーは肩をすくめながら、「まぁ、女神様のためなら頑張るか。あ、そうだ、フィーダー。さっき手紙を読んだって言ってたけど、他に何が書かれてたんだ?」と尋ねました。
学園長をフィーダーと呼ぶシャーリーに対し、フィーダーは軽く笑いながら答えます。「読むわけないでしょう。すっかり忘れていましたよ。私の代わりにあなたが読みますか?」
「いや、興味ない。それより、まずはビーリスと一緒に、王様を拉致および殺害する作戦を立てるのが最優先だ。まだ日程も固まっていないし」とシャーリーは真剣な表情で言いました。
フィーダーは立ち上がり、学園長の机まで歩きました。そして、何もない空間の前で止まり、1と0を使って文字を打ち始めました。
すると、何もなかった空間が歪み始めました。
「はい、こんにちは。本物の学園長と……誰でしたっけ?」とフィーダーが尋ねます。
「グスタフだよ。なんとかって集団のリーダーだ」とシャーリーが答えます。
フィーダーは「あー、そんな名前でしたね」と軽く言いながら、本物の学園長とグスタフを確認しました。彼らの体は光の鎖で縛られ、口をテープで塞がれているため、呻くことしかできません。
「パルス、本日のご飯は与えたのですか?」とフィーダーが問いかけます。シャーリーをパルスと呼ぶことから、二人が偽物であることが明らかです。
「もちろん。死なれたら変身できなくなるからねー」とパルスが答え、続けて言います。「さて、ビーリスの奴から連絡が来るまで何をしようかなー」
フィーダーは何かを思い出したかのように、急いで机に戻りました。そして、アリアから預かった手紙を取り出し、中を開けて内容を広げます。
「何を急いでるんだ?」とパルスが尋ねます。
フィーダーは少し焦りながら答えます。「ギルドマスターとの打ち合わせを忘れていました」
「なるほど」とパルスは納得した様子で頷きます。
フィーダーは学園長の元に手紙を置き、話を続けます。「さて、ビーリスとともに計画を進める準備を始めましょう」
「これはメディからあなた宛のお手紙です。読んでおいて下さいね。戻ってきた時にまた、あなたをコピーさせていただきますので」
フィーダーは手紙を渡しながら準備を整えます。
「ではパルス、お留守番をお願いしますね」
「もちろん。気をつけてー」とパルスが穏やかに返答します。
こうして、フィーダーは学園長の姿のまま静かに部屋を後にしました。
魔法使いを夢見る少女の冒険譚 夢達磨 @yumedaruma15
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