第12話 夢見る少女と競い合う二人
裁判の結果、カルナには夏季休暇までの謹慎処分が言い渡されました。しかし、彼女自身が推薦教室での生活が難しいと感じたため、今後は勉学教室への移動が決定しました。
カルナの行為は非常に悪質であると認められましたが、被害者であるアリアとメルジーナが「気にしていない」と寛大な姿勢を見せたため、比較的軽い罰で済むことになりました。ただし、爆発によって洞窟の一部が損傷し、その修復工事費はカルナの両親であるマテリア夫妻が負担することになりました。
前日、アリアたちは筆記試験を終え、今日は一学期最後に行われる実力考査の実技試験の日です。この試験に合格しないと、夏季休暇の半分を補習に充てることになります。実技試験は二日間にわたり、初日は基礎体力テスト、二日目はサバイバル生活が課されます。
まずはスパイク先生からの話が始まりました。
「えーっと、カルナの件は残念だったが、みんな気持ちを切り替えていこう。ほら、実技考査のルールが書かれた資料とチェックシートだ。各自で取って確認しておけよ」
アリアはメルジーナとソフィアと共に行動することにしました。スパイク先生はいつも通りの気だるそうな態度ですが、どこか元気がない様子です。おそらく、カルナの件が少なからず影響しているのでしょう。
アリアは人数分のチェックシートと資料を手に取り、メルジーナとソフィアに渡しました。資料には、かわいくデフォルメされた動物たちのイラストが描かれています。
資料に書かれていたメッセージはこうです。『仲間と助け合い、仲間と競い合い、ライバルと励まし合い、ライバルと高め合い、
今回の実力考査では、能力や道具を自由に使用しても問題ありません。各種目ごとに得点が割り振られており、クリアタイムや結果に応じて得点が与えられます。合計で六十五点以上を獲得した生徒は、一日目の考査に合格となり、残りの時間を自由に過ごせます。また、二日目のサバイバル生活考査への参加資格も得られます。
例えば、シャトルランでは三十回から得点を獲得でき、その点数は五点です。そして、最大回数の百回をクリアできたら二十点が与えられます。
この試験では、得意な種目や好きな種目を選んで挑戦することができるのです。
「また可愛い資料ね。……なるほど、チェックシートに名前を書いて、全ての項目をやればいいのね」
項目を見たソフィアは嫌そうな顔をして呟きました。
「中庭ダッシュ、十五メートルダッシュ五本、シャトルラン、持久走……ふむ、めんどくさい、帰ろう」
そう言ってスタスタと歩き出すソフィアの腕を、メルジーナは素早く掴みました。
「逃がさないわよ」
ソフィアはメルジーナの手を振り解こうと力を入れましたが、びくともしません。
「離したまえ。私は急用を思い出したんだ。帰って実験の続きを……」
「ずいぶん勝手な理由ね。昨日あれほど私を煽ったんだから、今日は私が煽る番よ」
――昨日の学力考査の時間――
テストの出来具合が不安だったメルジーナは、教室で大きなため息をついていました。それを見たソフィアは、メルジーナに近づいて言いました。
「何をため息なんかついている? 普通に授業を聞いていれば、答えられる問題ばかりだったろ?」
「最近までサボってたソフィアに言われたくないわよ。最近寝不足でね、授業にも集中できなかったのよ……ふわぁぁっ」
大きな欠伸をするメルジーナに、ソフィアはからかうように言いました。
「ほほぉ、貴族の娘というのはあれかね? 自分の落ち度を認めず、寝不足のせいにするのが好きなのかい?」
「なんですってー!?」
「そうカリカリするんじゃない。カルシウムが足りてないんじゃないのか? ほら、『スリープシープ』から搾り取ったミルクで作ったスリープストロングだ。茹でたジャガイモを潰して棒状に伸ばし、フライにしたお菓子みたいなものだ。食べたまえ」
「あ、ありがと……料理みたいなこともできるのね」
「天才美少女科学者である私に不可能などない。まあ、学力凡人の君には理解できないだろうけどね」などと、ソフィアは余裕の笑みを浮かべてメルジーナを煽っていました。
メルジーナは左手で口元を隠し、ニヤニヤしながら言います。
「あれれー? もしかして、天才で不可能はないと言っていたソフィア様は運動が苦手なのかなー? あー、確かに、ジュニアスクールの時も体育の時間いなかったもんねー? 人には得意不得意があるんだから、今までのことを謝るならサポートしてあげてもいいわよ? 運動音痴の天才、ソフィア様?」
「ほぉ? 取り消すがいい、その言葉。私は『天才美少女科学者』……だ! いいだろう。私を本気にさせたことを後悔させてやろう」
「ふっ、ハッタリね。なら、どちらが早く合格するか勝負よ」
「望むところだ。アリア行くよ」
「うん!」
こうして、メルジーナとソフィアの二人は競うことになりました。
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