第34話 7分の1エッチ ステージ2
明日は入れてもらおう。どんなに痛くても入れてもらおう。指が入ったんだから、これも入るはず。恐れと期待と憧れ。私の心はいろいろな感情とそれらの絡み合いで複雑だ。でもそんなまだら模様を大きく
私のために一生懸命男の欲望を我慢してくれているジュンくんは本当にいい人だ。本当に私のためを思ってくれる人なんだ。本当に私を愛してくれているんだ。でも、これ以上彼に我慢させるのは忍びない。ジュンくんに甘えすぎるのはいけない。私の方から勇気を出さないと。
そう、明日にはきっと‥‥‥。
挿入を保ったまま3分ぐらいじっとしていた。ジュンくんの指が私の深い所になじんでいく。侵入者に敵意をむき出しにしていた襞が留飲を下げ、反応を探るように彼の指にまとわりつきだした。愛液が指の表面をふやかし、溶かし、膣壁と融合してゆくような錯覚にとらわれる。
「少しずつ動かしていくよ」
「う、うん」小さく頷く。「ゆっくりね。ゆっくりだよ」
私は完全に赤ん坊だ。慈悲と憐みに頼らなくては今にも命が尽きてしまいそうな無力な存在。ジュンくんの優しさにやっと生きることが許されている小さな小さな存在。
「ふふふ」ジュンくんが鼻から息を吐いて笑った。「臆病だな、サキは」
小学生のころ、愛光園の前に小川が流れていた。今ではコンクリートに囲われ、ブロックで蓋がされていて見えないのだが。
流れが緩やかで、春になると桜の花びらが水面に散り、ゆっくり、ゆっくり……、本当にゆっくり流れていくのだった。花びらどうし寄り合ったかなと思ったら、また離れていく。ゆるゆると流されながら、くっついたり離れたりを幾度となく繰り返す花びらをまだ小学生だった私は飽きずに眺めていた。その場面が脳裏によみがえった。
私は流されていく。流れに身を委ねていれば、きっと海にまで行ける。広くて真っ青で光に満ち満ち溢れた海へと。喜びと希望に満たされた自由な世界へと。
ゆらゆら。ゆらゆらと……。離れたりくっついたりしながら……。
ジュンくんは指の先だけで根気よく膣の奥の方を拡張してくれる。決して無理はせず、ゆらゆらと漂うように。膣の奥が彼の指とくっついたり離れたりしながら、次第に、──それは本当にゆっくりではあるけど、───次第に馴染んでゆくのだった。
さっきまで難関として立ちはだかっていた狭隘な中間部は指一本だけ許したきり、まだキツキツだ。
痛みが膣の一か所にいつまでも点のように存在していたが、全体的にはいい感じだった。奥の方をいじられると、クリトリスで味わう目くるめく快感とは一味違う、仄かな温かみを伴った快感がじんわりと広がって来るのだった。湖畔に打ち寄せる小波のようでもあった。「いい感じ」が「快感」に変わりつつある。
「あぁ……」
とても穏やかな声が漏れた。
「んん‥‥‥」
ジュンくんも穏やかな声で返してくれる。
痛みが軽いのは貞利博士の鍼のおかげかもしれなかった。しかしそれ以上に大きいのは、やはり何と言ってもジュンくんの優しさといたわりだと思う。初エッチの時は、男の人が欲望に駆られて、レイプのような、目も当てられない悲惨な様相になることが多々あると聞く。そう涙目で告白したクラスメイトもいた。それと比べるならジュンくんはなんて優しいんだろう。彼だってオトコの欲望は持っているはずなのに、それをいきなり放つことはせず、私を守ることを優先させてくれる。私は世界一ラッキーな女の子なのかもしれない。
ジュンくんの指がゆっくりと抜き差しを始める。ドーナツの穴が摩耗したからだろうか、出入りに余裕が出てきたように感じられる。穴の周りを縫っていた糸が切れて広くなったようだ。でもまだ狭隘な部分が残っていて、擦れるたびに虫刺されを掻きこわすような不快感が灯る。が、さっきよりはだいぶ落ち着いてきた。
「っあぁ……」
「んんー‥‥‥」
くちびるからほんのりした声が漏れると、ジュンくんもおおらかにうなずきながら鼻声で返してくれる。
膣がまた蜜をにじませ快感を探し始める。そうなのだ。膣は私の性格の投影だ。ちゃっかりしている。痛いときはあんなに怯えていたのに、危機さえ脱すればすぐまた愛嬌を振り撒こうとする。気持ちいいといつまでもそれに甘えていようとする。こわがりで欲張り。──それが私の膣だ。
出血があるようだ。ジュンくんがティッシュで拭いてくれる。
「あぁん‥‥‥」
また静かな声が漏れた。いい感じだ。とても満ち足りている。ジュンくんの顔もさっきよりだいぶ穏やかになっている。
「ジュンくん‥‥‥」
「ん?」
私の中で指がゆっくりと引いてゆく。
「この時間がね‥‥‥、ジュンくんにとっても‥‥‥、思い出深い時間になってくれたらいいと思うの。……ああ……」
「そうだな‥‥‥」
指が引き返してくる。襞の一枚一枚を撫でるように、いとおしむように。狭かった部分にだんだん余裕ができていくように感じる。
クチュッと小さな水音がする。
「んふっ!」
クチュッ!
クチュッ!
クチュッ!
そこが子宮口だろうか? ジュンくんの指がとても気持ちいいポイントを突いた気がした。
「はあぁ……」
息が漏れ、ピクッと腰が動いてしまった。
──そこよ、そこ!
指がくねっと曲がって、またポイントを突いてきた。
「あっ……」
灯った快感が肺を絞り、漏れた呼気が声帯を震わせる。
「ここなんだね?」
ジュンくんも嬉しそうな表情で私を覗き込む。
「うん……、そこ……」
いま、私とジュンくんはふたりで宝物を見つけたのだ。Gスポットと呼ばれている快感ポイントだろうか。
「そうか……、ここか……」
ジュンくんは満足そうに私に微笑みかけ、指の動きを加速する。ツンツンツンと四分音符で突いたいたのを、ツツツツツツと八分音符で突き始めたのだ。
「はあ! ジュ、ジュンくん! ううっ! いいかも……」
「そうか……。感じるんだな? さあ、サキ! 感じるだろ? もっともっと感じてくれ……。どうだ?」
彼の指がますます早く刻みだす。膣の全体と子宮の全体が細かく揺れ動く。振動は熱エネルギーに変換され、性器全体が熱くなってくる。
「いい……」
快感が高まる。呼吸が加速する。いい! とってもいい! 子宮がもぞもぞと動きだし快感の火花を散らす。
ジュンくんの胸にしがみつく。もっともっと強く抱いてもらいたい。もっともっと指で突いてもらいたい。
「イっちゃうよ……。ジュンく……、ふああぁあ、んんんっ!、ジュンくん、イっちゃうの、イっちゃうの!」
声がどんどん大きくなる。狂ってしまう。叫ばずにはいられない。マグマが、ものすごく熱いマグマが内臓を焼きながら湧き上がってくる。とてつもなく大きい快感が怪物のようにぐわーっと押し寄せてくる。
ジュンくんに必死に抱きつく。
「ご、ごめんね! 一人でイっちゃってごめんね、ゆるしてね、ジュンくん!来る、来る、くる、クルぅううううう! ぐわー!」
ひとりでに体がピーンとすごい勢い突っ張り、反り返った。ガタガタ地震のように痙攣し、理性を形作っていたガラスの建物がパーンとはじき飛び、破片が躰じゅうの性感帯に突き刺さる。爆風のように過ぎ去ったと思った快感が脳髄に衝突し、跳ね返ってまた帰って来る。
「いい! あああああっ! いいの! いいの!」
夢中になって彼にしがみつく。
ああ、彼が欲しい。指じゃなくて、もっと大きなもの、もっと逞しいもの……。指じゃなくて……、彼自身が……ジュンくん自身に入って来てほしい!
切なる願いが沸騰する。すると躰はまた弓なりに反り返り、痙攣し、わけの分からないことを叫んだ。そして、とうとう意識を手放してしまったのだった。
失神していたのは、ほんの数分のことだったと思う。気がつくと、私は仰向けに寝かされていた。
視界に広がった光景について考えている。ぼうーっと考えている。
──何だろう……。この奇妙な形をした天井は……。いや、天上からにょっきり伸びた肉の塊は……?
手を伸ばして触ってみてわかった。
──ジュンくんのペニスだ。
ジュンくんが私の顔をまたいでいるのだとわかった。それと同時に、甘美な快感が下半身から伝わってくるのも感じている。
「あー……」
ジュンくんが舌で私の性器を愛撫してくれているのだった。
無重力状態だった。一度絶頂に高められた余韻に浸りながら、私の躰はいま適度な、ゆるい快感の雲に乗ってゆらゆらと漂っているのだった。
このままずっとそこをなめていて欲しいと思った。
しかしその時、ジュンくんをいとしく思う感情の奥底に一点の灯がともった。それがだんだん明るさを増して、私はその正体がなんであるのかに気づいた。
──ジュンくんに奉仕してあげたい……。
彼を愛してあげたい思いがひしひしと湧き上がって来るのだった。奉仕と言えば聞こえはいい。利他的な行為だから。しかし私のその思いは極めて利己的な思いだった。「私が」ジュンくんを気持ちよくしてあげたい。「私が」ジュンくんの躰を独占したい。──そう、それは「私がジュンくんに」「私がジュンくんと」「私だけがジュンくんに」と何度もしつこく反復したい利己的な欲望にほかならなかった。
「私もね‥‥‥、ジュンくんにね‥‥‥、っんんー‥‥‥、ほ、奉仕してあげたいの‥‥‥」
「ん? ‥‥‥奉仕?」
ジュンくんはちょっとまごついた。まごつきながらペチャペチャと飴玉をしゃぶり続けている。時々指が、さっき探し当てたばかりのポイントを突いてくる。そのままそこを迫られたら、またオルガズムを迎えそうな予感があった。
「これ‥‥‥」
私はジュンくんの赤紫色に充血した太いモノに指を絡ませた。
「こうしてあげたらいいのかな?」
私はそれを指を絡め、ゆっくり上下させた。余裕のある皮膚が被さったり剥かれたりしている。
「ああ……、サキ、そ、それ‥‥‥ううっ……」
「気持ちいい?」
「う、うん」
視界には彼の巨大なペニスしかないけど、じわじわ寄せてくる快感に眉をしかめているジュンくんの表情が見えるようだ。膣の中の彼の指の揺れ幅が大きくなり、それにつれ私の快感も徐々に高まる。
「両手でやってほしいんだ」
「両手?」
下半身の方から聞こえてくるジュンくんの声には女の子のような恥じらいさえ感じられる。もうかなり切羽詰まった状況に追いやられていることがうかがえた。そんな彼をかわいいと思ってしまった私はいけない女なのだろうか。
「じゃ、ちょっと姿勢を変えようよ」
と私の方から提案する。
せっかく子宮口前の快感のポイントを舐められ突かれているのを放棄するのは惜しかったけど、ジュンくんにも気持ちよくなってもらいたかったから。
膣から彼の指がチュルンと抜かれた。血が少し滲んでいる指をウエットティッシュで拭いてあげる。同じティッシュで自分の股間にこびりついた血も軽くぬぐう。
彼をベッドの縁に座らせ、私はその正面にしゃがみ込んだ。膣からピチュッと水音を立て空気が漏れた。
──やっぱり、ジュンくん、かなり我慢してたんだ。ほら、こんなにビンビンになっちゃってる。こんなに脈打ってる。はやく開放してあげなくちゃ。大好きなジュンくんを。
彼の脚の間に入り込み、膝を床に付ける。近くで見ると、彼のモノはとてつもなく大きい。大きくて嬉しい。こんな黒くて頼もしい。こんなに粘液が溢れさせてかわいい。──数えきれないほどの愛情が湧いてくる。それを一つの言葉で表現することは到底不可能だ。
ジュンくんのペニスは言葉を超越しているのだ。
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