第28話 ふたりにイかされる

 違和感に気づいたのはそれから数秒、いや数分の後だったかもしれない。快感の荒波の中、時間感覚が麻痺してしまったようだ。


 左の臀部を施術しているのは明らかに二本の手。お尻の腰側と性器側に手のひらが置かれ親指で脂肪がぐいぐいと押し上げられている。それは見ていなくても触覚でわかる。右の臀部を撫でているのも二本の手。やはり二つの手のひらがお尻の丘を包み親指で力強く揉み上げられている。


 え? お母さまのほかにもう一人?


 頭を上げて振り向くと確かにもう一人女性がいる。お母さまと同じ黒いユニフォーム。逆光の中でスラリとしたシルエットが黒ずんで見える。髪の毛が長い。バリ風の巻きスカートの色合いだけが違う。


 愛理だった。彼女が右のお尻をなでながら、私の恥ずかしい部分をのぞき込んでいる。


「ア、アイリ……。いや、恥ずかしい……」


 私は背中から手をまわしワレメを隠そうとした。しかしそれはお母さまに捕らえられ、「こら!」と手の甲をピシリとはたかれた。すごく痛かった。


「愛理はまだ高校生だけど、私の立派な片腕なの。エステティシャンとしてのテクニックは一人前よ。それは尊重してもらいたいの」


「はい、すみませんでした」


 お母さまのおっしゃることは絶対だ。素直に服従する。でも、かつてはジュンくんのカノジョではないかと疑った子。いくら叔母だとは言っても私に対抗意識みたいな感情はないのだろうか。そんな落ち着かない感情を抱いている人に自分の躰を触られたくないというのが本心だ。


「お母さま、サキのお尻って5月の時はこんなに膨らんでなかったんですよ。どちらかというとちょっと発育不足かなって感じ。でも、今は……、ほら、お母さま、こんなに丸くて、こんなにきめ細かくて……」


「それが、博士のすごいところなのよ。数本のはりで女体を改造しちゃうの……。サキさんってすっごくラッキーなのよ。覚えておきなさいね」


「は、はい……、うう……」


「お母さま、サキちゃんの躰、お尻もおっぱいも成熟しちゃったから、また測りなおさないといけないわね。許してくださるでしょ?」


「ええ、もちろんよ」

 

 この時、右のお尻を大きく一周してきた手の先が、お尻の穴から滑り落ちるように谷間に食い込んで来た。グイっと奥深く入れられクリトリスを突いてきた。


「んんあっ!」


 腰がピンと反り返り、また「へ」の字型になった。子宮がキュウーと収縮し目のくらむような快感が絞り出された。この時、震えた膣口からピチュッと音がして、ダラーンと粘液が垂れた。


「夏帆さん、見て見て。ほら、サキの膣の入り口、こんなに小さいの」


 指でそこを広げられた。照明器具の熱が感じられる。


「フフフ…‥、本当に小さいわ。たぶん小指も入らないわよ。バージンピンクってこういう色を言うのね。かわいいわ。羨ましい……」

「夏帆さん、ほら、こんなにヒクヒクって! かっわいい!」

「よかったわ。息子の嫁のまんこがこんなに奇麗で」


 お母さまは「まんこ」と言った。牧村家の人々は皆「まんこ」って言って恥ずかしくないんだ。


「サキさん、あなた、自分のまんこ、見たことあるの?」

「な、ないです……。ううっ……」

「ジュンにロストバージンされる前に、一度見ておいた方がいいわ。本当にきれいよ。こんなに鮮烈なバージンピンクの女の子っていないんだから」


 そう言ってお母さまは膣の入り口を指でくりくりと回した。


「ああっ! お、お母さま……。か、感じます! んんあ! 感じます!」


 快感のレベルが一段階高くなったのを感じる。自分の呼吸が熱い。ほら、少しずつ上がってゆく。頂上に向かって進んでゆく。ああ、あそこに目くるめく快感の頂点があるんだ。あそこまで送ってほしい。オルガズムまで送ってほしい。私は大陰唇の丸みを臀部の頂上よりも高く隆起させるような感覚でお尻を突き出す。からだ中に散っている快感を一カ所に集中させたくて括約筋をしきりに動かす。


 からだを裏返された。素早くアイマスクを被せられた。


 すぐにブラが奪われた。覆いを失った乳首が冷たい空気に露出し、キュウッと縮こまる。


「あっ、ダ、ダメです!」


 羞恥心におそわれ、両手で胸を隠す。同時に脚を捩り一番恥ずかしいところがじかに見られないようにした。もうお母さまにも愛理にもバージンピンクの膣口さえ見られているというのに、羞恥心はなくならない。


「あら、サキさん、とっても奇麗なのに……」


 お母さまが子供のいたずらを叱るように私の手を剥がす。「ホントに奇麗」と賛辞を繰り返しながら、目を見開き、私の乳房をのぞき込んでいる。乳首で感じられるほどに眼圧が鋭い。


「サキ、すごいよ。乳輪がくっきりとして来たのね。ほら、引っ込みがちだった右の乳首もツンと出て来たよ。奇麗……。とってもセクシー……」

 

 愛理も賛辞を惜しまない。でも、いくら褒められても恥ずかしいものは恥ずかしい。隠したくて躰を捩ろうとすると、愛理に両肩を押さえつけられた。その手で乳房を丸っと撫でられた。


「あっ、アイリ……」


 胸が隠せないのなら、せめて下半身だけでもと思って脚を捩った。すると、いつのまにか下に移動したお母さまに膝を押さえれらた。足の裏どうし合わされた結果、下半身がダイヤモンドの形を描いている。もちろん股間は最大限に広げられている。羞恥心で肺の奥の方が震える。


「恥ずかしいです、お母さま……。本当に恥ずかしいんです。イヤです、イヤです、お母さま……」


 訴えかけるが、手足が抑えられ躰が完全に開かれた状態は解消されなかった。恥ずかしくて涙が流れる。


「大丈夫だから……。落ち着いて……。私たち女どうしよ。私はジュンの母親。あなたのためになることをしているの。ジュンと幸せなセックスができるように。私を信じて。落ち着いて、落ち着いて……」


 愛理が乳房の担当。お母さまが下半身の担当。

 

 お母さまはさっき、「一部分に集中している性感帯を全体に広げていく」とおっしゃった。しかし、私には、躰に分散している性感を二つのポイント、つまり乳首と性器に集めているように感じられた。


 愛理の動きはおおむね規則的だった。腋の下から乳肉を集め、下乳をすくい上げるようにして全体を包み込んでゆく。そんな動作の反復の合間に10回に1度の割合で不規則的に乳首を指先でつついたり、弾いたり、摘まみ上げたりするのだった。規則的な動きは神経を弛緩させる。不規則な動きは覚醒させ、次の不規則を期待させる。その反復が、まるで階段を一段一段上がるように性感を高めてゆくのだった。


 お母さまのマッサージははじめ内股、鼠径部、そして子宮回りが中心だったが、その範囲がだんだん狭まり、性器回りに集中して来るのだった。脚は相変わらずダイヤモンド型に広げられている。


「さあ、いくわよ」


 お母さまが合図を出すと二人同時に息を吸いこんだ。それはオーケストラの指揮者がタクトを振り下ろす瞬間に似ていた。演奏者たちが呼吸を合わせ楽器に命を吹き込む、あの瞬間に。


 奏でられた音楽は圧倒的に美しいものだった。


「はあっ!」


 弾けるような快感が躰に流れ込んで来る。私の小さな身体がたちまちのうちに快感に満たされ、膨らみ、容量の限界を超え溢れ出て来るのだった。


「ああ、いい! す、すごい! ひいぃいいー!」


 野生動物にも似た喘ぎ声を上げてしまった。腰がひとりでに突き出される。ブリッジになり隆起の頂点で激しく痙攣する。

 

 ワレメの左右の丘を撫で上げられ撫で降ろされている。毎回圧力を変え、指が這いまわる。ヘアが薄いから、というか、ワレメの周りはほとんど毛がないから動かしやすいのだろう。オイルに導かれるように指は大陰唇を上から下へ、下から上へ自由に往復している。目くるめく快感に踊らされた小陰唇が自ら口を開け、ダラダラと蜜を垂らしている。お尻の穴まで垂れた蜜を利用し、お母さまの指が食い込んでくる。


「あっ、お母さま、お尻はダメです!、お、お尻の穴はダメです! はあーん!」


 指は穴には入らず、その周りに軟膏を塗りこめるように何度も何度も徘徊する。いつ肛門に侵入してくるかもしれないという危機感が一層快感を深めているようだ。膣壁がペチュッ、ピチュッと淫らな音を吐きながら痙攣する。膣襞が表裏ひっくり返り、処女膜が露出しているような感じさえする。


「はあっ! お母さま、いいです! ダ、ダメです! あ、そこ、そこ、いいの、いいの、ダメ!」


 もっと快感が欲しくて、私は持てる力全てを集め腰を突き出す。圧倒的な快感に頭が真っ白になる。


 お母さまと呼吸を合わせるように、愛理の指も私の乳房を揉み上げ、乳首をなぶっている。指を高速で動かし、乳首の先端をペチペチと弾く。私の腰の突き出しが頂点を極めると、愛理も私の乳首をつまみ上げ、頂点に導く。ちぎれそうに痛い。本当にちぎれるかもしれない。なのに、なのに……、それが快感だ。苦痛が快感だ! 


 来る……、来る……、オルガズムが……、私が待ち望んだオルガズムがやって来る…‥。


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