第17話 このみちゃんが死んじゃう!
「イヤ! イヤだってば!」
阿久津先輩の手に何か黒くて太いものが握られているが私からも見える。その先端がこのみちゃんのお尻に突き立てられているようだった。
「さあ、力を抜け! 大丈夫だ、オレに任せて。オマエのマンコはそんなにヤワじゃないだろ!」
「イヤ! 破れちゃう!」
鏡に肩手をつき、もう一方の手を自分のお尻を塞ぎながら、このみちゃんは必死に訴えている。
「キャッ! 痛い、ダメダメダメ!」
「行くぞ! 力を抜け!」
「はあっ!」
このみちゃんが鏡に手を当てたままのけ反った。後ろから突かれた勢いで頬が鏡に押しつけられ、いつものあどけない童顔が歪んでいる。
「ぐわっ……、うっ……。は、入っちゃっ!」
マジックミラーがグワンと
「ほら、オレの言ったとおりだろ?」
「ああ……、きつい……。げ、限界……」
このみちゃんがだらしなく口を開き恍惚としている。その視線はどこか遠くの世界に向けられている。
「Lサイズだからなあ……。コイツ見たとき、このみならゼッタイ入るって確信した。で、どうだ? 気持ちいいか?」
大鏡に両手を当てたまま首をガクリと落とすこのみちゃん。前髪が滝のように垂れて顔の表情が見えない。苦痛に耐えているのだろうか、快感をかみしめているのだろうか。どっちだろう? 私にはわからない。
「よし、スイッチ入れるぞ……」
阿久津先輩が悪魔的な微笑を浮かべたとき、マジックミラー越しに私と目があった気がした。そんなはずはないのに私は慌てて視線を逸らせる。
グワーン。不気味な振動音。
「あっ、イヤ!」
このみちゃんは小さなからだを震わせながら床にガクンと膝を落とした。両手を絡ませ祈るような格好で鏡にもたれかかって来たかと思うと、嬌声を絞り出しながら腰を振りだした。
「ああっ、ダメダメ! はあ、はあ、はあ、イっちゃうよ、イっちゃう! ダメ! 大きすぎぃー!」
腰のふりがますます激しくなる。狂ってる……。このみちゃんは狂ってしまったのだ!
「オマエにも見せてやるよ。挿入の深さ18センチ、太さ4.5センチのディルドがオマエの完熟ビラビラを征服した雄姿を!」
阿久津先輩が両手でこのみちゃんのお尻を掴み、大鏡と平行になるようにずらせた。今や私の視界には、四つん這いになった全裸のこのみちゃんが写り込む。そのお尻からは動物の尻尾のように真っ黒なシリコンが伸びている。全裸の彼は、それを
「ひいっ!」
私はショックでのけぞった。だって、あの長さ! あの太さ! 女の子にあんなものを入れるなんてひどい! 殺人行為だ!
生理用タンポンを3本ぐらい重ねたような長さ。6本ぐらい束ねたような太さ。タンポンが入らなくてナプキン派の私にはとてもとても信じられるような代物ではなかった。私の心臓が恐怖でバクバク言っている。血管が縮みあがってこめかみがズキズキする。
膣口から抜かれ全貌を現したディルドは、またゆっくりと沈んでゆく。剛毛の密林を奥へ奥へと侵入してゆく。阿久津先輩の腕に筋が浮かび上がる。あの筋肉であの巨大な器具が押し込まれたら、普通の女の子より躰の小さいこのみちゃんが大丈夫なわけがない。ドーナツの穴に、コーラのペットボトルが押し込まれるようなものじゃないか。膣襞が裂けてちりじりに大破する場面が脳裏に浮かんだ。いくら愛しているからといって、このみちゃんはこんなことを阿久津先輩に許すのか。阿久津先輩以上にこのみちゃんの方が狂っているのではないだろうか。
巨大物を吞みこんだ壺口からダラーンと粘液が糸を引いている。躰の痙攣にシンクロして、糸も微妙に震えている。赤みが混ざっているのは膣が破れ血を吹いたのか、それとも単にカーペットの色が映り込んでいるだけなのか。
このみちゃんには鏡に映った残虐劇がすべて見えているはずだ。そして私がこれを見ていることももちろん知っている。
このみちゃんと目が合った。1ミリのずれもなく私の視線を捕らえた。彼女は……、笑った。
笑ったのだ。大きな前歯を見せながら。
阿久津先輩と同じ悪魔のほほえみ。彼女は恐怖に青くなっている私の顔を見て、悪魔の微笑で笑ったのだ。目は怪しげな光をたたえている。
───見て。私は幸せなの。阿久津先輩のおもちゃにされて最高に幸せなの。
このみちゃんの目は、オンナの目は、そう語っているのだった。
膣の奥まで挿入されていた巨大物が、再度ぎりぎりまで抜かれた。そして阿久津先輩の唸り声とともに、またメリメリと音を立て体内に沈んでゆく。男の腕に筋肉の形が浮き上がる。
「うっ……」
苦悶のうめき声を上げたのは私の方だった。その時私は自分の処女膜が切れる音を聞いた気がした。私は慌てて開いていた股間を閉じ、両手で覆った。どうかあの悪魔的に巨大なものが私の中には入ってきませんようにと念じながら。
ヌチャッ、ピチャッ、ズチャッ……。
何なの、この水音は?
このみちゃんの性感を焦らすように何度も何度も、呆れるほどゆっくり反復される抜き差し。それを涎を流さんばかりに鑑賞している阿久津先輩の悪魔的な表情に私は吐き気さえ覚えた。
「どうだ、いいだろ?」
「んんっ……、んんぁ……、ふうっ……」
「そっか、そんなに気持ちいいか。じゃ、今度はこれだ。どうだ?」
振動音がキュイーンと高くなった。
「んんぁああああ! ああっ、ダメダメダメ! 壊れちゃう! 壊れちゃうよ!」
器具の発する不気味な振動音の高まりにともなって、このみちゃんの嬌声も高まっていく。限界にまで広げられた女の襞が裂ける音さえ聞こえるような気がする。躰はますますピンク色に染まってゆく。細かい痙攣の波が這う。
「どうだ、いいか? 気持ちいいか?」
「いい! きついけど、いい! ふわぁあああ!」
四つん這いになった彼女の乳房が踊っている。色素が濃く、乳輪の輪郭のはっきりした彼女の乳房が躰の痙攣に合わせて踊りまくっている。
阿久津先輩の筋肉質の高身長に比べあまりにも小さいこのみちゃんの裸体。しかしどんなに躰は小さくても性感の高まりは大人のオンナだ。彼女は背筋をますますピーンと反らせ、もっともっととおねだりするようにお尻を阿久津先輩に突き付けるのだった。
「オレ、嬉しいよ。このみならこのディルドで喜んでくれると思ったんだ」
「いい、すごくいい! 先輩、大好き!」
「このみ! このみ!」
阿久津先輩は感動極まってディルドを深く深く差し入れた。18センチの全長が彼女の膣にすっぽりと埋まった。信じられなかった。あんな長いものがこのみちゃんのあんな小さな躰に入ってしまうなんて。私なんて小指の先っちょさえ入れたことがないのに。
あの長さなら、子宮口に届いている。そしてあの太さなら彼女の子宮をずたずたに破壊するのに十分だ。それなのに……。
それなのに、このみちゃんの顔は歓喜で輝いている。西洋画に描かれた天使のように晴れ晴れとした笑顔を浮かべているのだった。
このみちゃん、そんなに嬉しいの? そんなに幸せなの? 女の喜びを知っているんだね。私、全然知らなかったよ。このみちゃんがこんな世界を知ってたなんて。あなたに比べたら、私なんて本当に子供だ。やっとオナニーを覚えたばかりの処女の私が恥ずかしい。でも、私は怖くて、このみちゃんの世界にはたどり着けそうもないよ。
文学少女で友達がほとんどいない彼女を私は見下してなかったか。そんな彼女がかわいそうだから仲良くなったのではなかったか。としたら、見事な逆転劇だ。このみちゃんはこんなにも大人で、私はこんなにも子供。彼女は天に与えられた躰を余すことなく楽しんでいる。躰が神さまから与えられたものだとしたら、きっと神さまは喜んでいるだろう。それに比べて私ときたら……。処女を守ることで自己満足に浸っているおバカさん。せっかく素晴らしいものをプレゼントしたのに、どうしてそれを開発しようとも、楽しもうともしないのかと、神さまはさぞかしがっかりしているだろう。
やがて、女体が狂ったように震え出した。最終スイッチが入ってしまったようだ。腰の痙攣が全身に広がり、その振動がミラーを超え、私にも伝わって来る。私は怖くなった。正気の人間の躰に起こった現象とは思えなかった。てんかんの発作かと思った。このまま彼女が心臓麻痺で死んでしまうのではないかと思った。どうしよう。このみちゃんが死んじゃったら、覗き見していた私も共犯になるのかしら。怖い。このみちゃん、このみちゃん……。私が助けてあげなくちゃ。このみちゃんが死んじゃう。親友が、私の大好きな親友が……。
私はビーズソファーから立ち上がろうとして床に手を突いた。その時だった。
「ぐぅわあああああああ!」
甲高い嬌声とともに、ピンク色に染まった華奢な女体がピーンと弾け反り返ったのだった。それは体中の関節がはじけ飛ぶような勢いだった。え⁉ 何が起こってるの⁈ 私は這って行き、マジックミラーに顔を寄せ彼女の顔を覗き込む。死人のように大きく開かれた口から涎が糸を引き、ゾンビのように白目をむいている。とても天真爛漫な高校生の表情とは思えなかった。
そして、バターンと脱力。床から振動が伝わって来た。
このみちゃんの裸体が床の上にうつ伏せに伸びた。身動き一つしない。股間に突き刺さった真っ黒な器具だけがいつまでもグイングインと音を立ててベチョベチョに濡れたワレメに突き刺さっていた。
死んじゃった……。
このみちゃん、このみちゃん、目を開けて!
お願い、目を開けて!
どうしよう。このみちゃんが死んでしまった!
呼吸ができなかった。私もこのまま窒息して死んでしまいそうだった。頭が痺れて言葉が出ない。手足が震えて這うことも立つこともできない。悲鳴を上げたような気もしたし、しないような気もした。
「こ、こ、このみ……、目を開けて……」
阿久津先輩が立ち上がった。股間のモノが赤黒く膨張し今にも血を吹いて弾けそうだ。先端からダラダラと粘液が糸を引いている。精液が混ざっているのか、白く濁っている。どす黒く濁った顔はさっき以上に悪魔的だ。頬まで裂けた真っ赤な唇。熱病に浮かされた瞳で女の死体を見下ろしている。
「このみちゃん‥‥‥、ご、ごめんね、このみちゃん‥‥‥。私が‥‥‥、私の‥‥‥」
恐怖と失意のあまり私は失禁してしまった。生暖かい液体が太腿を濡らし、床にしたたった。
その時だった。
「ああ……、先輩……、す、素敵よ……」
このみちゃんの声だ。よかった、死んでなかった! 動いたわ! このみちゃんが動いた。ああ、助かった。よかった、よかった!
私は自分の心と身体を統制しようと心臓を押さえ何度も深呼吸を繰り返した。気管支がヒューヒューと摩擦音を立てた。
唾を飲み込むとゴクンと頭蓋骨に響いた。あたかもその音が聞こえたかのように阿久津先輩は目を上げ鏡を覗き込んだ。と、私と目が合った。
「んっ‥‥‥」
両手で口を覆った。それでも、声が少し漏れてしまった。
勃起したものの鈴口から大量の粘液を垂らしている男と、初めて生の濡れ場を覗き見し太腿まで粘液でヌルヌルになり、おまけに失禁までしてしまった処女がマジックミラー越しに見つめ合っている。
え、ウソ⁈
私が見えている?
慌てて両手で躰を隠し背を丸めた。顔を背け、垂れた横髪でさえぎる。
──そ、そんなはずはない‥‥‥。
目をつむり、大きく三回深呼吸をし心を落ち着かせる。
視線を上げていく。ゆっくり。恐る恐る。
男のモノはまだ、たくましく反り返り、先端が臍についている。白濁した液がダラダラと竿を伝っている。
さらに視線を上へ滑らせて行く。
「ひっ……」
また視線が合った。
思わず声が漏れ、後ろに尻もちをついてしまった。
いや、大丈夫。視線は微妙にずれている。私が尻もちをついても視線は揺らがなかった。見えていない。大丈夫。
ふーっと、安堵のため息を吐く。
阿久津先輩はこのみちゃんからディルドを抜くと、躰を仰向けにひっくり返し脚の間に膝を進めた。抜かれた人工物があまりにも大きかったから、新たに挿入されようとしている肉棒がものが頼りなく見えた。
「先輩のが……、先輩のが欲しい……」
幼児のように小さな手が、巨大な怒張を掴む。
「オレの……何が欲しいんだな?」
悪魔の顔がこのみちゃんをのぞき込む。
「先輩の……、これ……、大きくて力強いこれ……、精子も……、全部注ぎ込んで……ほしいの」
このみちゃんの顔は思いっきり緩んでいる。幸せ過ぎてどうしようもないといった表情だった。
「よし」
悪魔的な顔が一層悪魔的になり、その黒くいきり立ったものでペチャっとはたく。そのまま密林の奥に息づく泉に身を静めてゆく。
私は結合部分が一番よく見える場所に移動した。馬のたてがみのようにぼうぼうと逆立つ茂みの奥。そこには真っ赤はくちびるが欲望の涎を垂らしている。うっすら血がにじんでいる。そこに抜き差しされる水音を私は確かにとらえている。
私もゆっくり股を開く。指をあてがい、このみちゃんに教えられたように動かしてみる。
このみちゃんの水音と、私の水音が協和音を奏でる。マジックミラーを挟んで奏でられる二重奏。
先輩と同級生が繰り広げる淫靡な光景を、ひとりエッチの私は長いこと楽しんでいたのだった。
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