第14話 セクシーランジェリー愛好会
夏休み中でもバイトを続けた。毎日朝8時から午後3時までだが、土曜日だけは鍼治療のため空けてもらった。店長は「えー、土曜日は会えないのか」と言って残念がった。どうせリップサービスだろうと高を括っていたら、バックヤードに戻った時、事務机越しにほんの瞬間のことではあったのだが、恨みがましい視線に刺された。まんざら社交辞令でもなかったことに気づいた。
──この店長、こじらせたら面倒かも……。
ジュンくんも土曜日に治療を受けに来ると言っていた。私にとって土曜日は鍼の日というよりも、ジュンくんと会えるかもしれない日だ。なのにあれ以来一度も会ってない。
「結婚しよう」というのはやはり「仲よくしよう」程度のノリだったのだろうか。「結婚」などという人生最大のイベントにまで言及してしまったことを家に帰ってから後悔したのかも。それで避けられている? 毒のきいた冗談だったのかしら? 私は想像の中で、店長以上の恨みがましい視線をジュンくんに浴びせかける。
──あなたはオママゴト感覚で私とカップルを演じてみただけだったの? たとえオママゴトだったとしても、私たち高校生だよ。本気で恋愛して、駆け落ちする人だっているんだよ! 本気で子供作っちゃう男女だっているの知らないの?
電話するという手段もあった。お互い番号を教えあったから。しかし、まだ一度もかかってきたためしがない。私からかけてもよかったが……、それをためらわせている現実がある。噂が本当なら、彼の正直な心を打ち明けられた途端に地面にたたきつけられるだろう。
ジュンくんには付き合っている女子がいる。
噂ではそういうことになっている。それを裏付ける現実が目撃されている。だが、女子高生の世界のやっかいなのは、噂からも現実が生まれるということだ。バレー部でも16HRでもそういう噂があるということは、湖南高校の女子の世界はすでにそういうことになっていると覚悟しておいた方がいい。
でもそういう世界からどうして「結婚しよう」なんて言う言葉が飛び出してくるのだろうか。私は噂を裏付けする出来事をこの目で見たわけではない。私にとっての現実は、ジュンくんが「結婚しよう」と言ってくれたことだけ。それが私とジュンくんの間の唯一の事実だ。だが「唯一」ということは「一回だけ」ということ。そう、「結婚しよう」と言われたのは一回だけ。なんかの聞きまちがえか、ジュンくんの言いまちがえということもある。そのへんがどうも心もとないのだ。
ジュンくんと噂の女の子が16HRではもう公認のカップルなのだという噂。そんな噂があるなら16HRの生徒に確かめてみればいいじゃないか。本人に直接問い詰めてもいい。でも、それが怖いのだ。だって、だって……。
誓ったわけじゃないわよ。でも、結婚しようと言った仲だよ、私たち。そんな状況で彼に実は彼女がいましたなんていう現実が付きつけられたら、私はただのバカじゃない?。すごく怖いよ、自分の愚かさ加減に気づくことって。
結婚の練習期間──。
それは、ジュンくんのお祖父さんの家で再会してからすぐに始まるべきものだった。せっかくの夏休みなのだ。一緒に海にいったり湖に行ったりして、映画とかカフェに行ったりして、お互いのことをもっと知り合うチャンスに溢れているはずだった。なのに、なのに……。現実が暴露されることが怖くて私は何もできないでいる。せめて、「ごめん、ごめん。バレーボール部の練習で忙しくてさあ」なんて、言い訳でもしてくれたら私の心はどんなに軽くなるだろう。
そう言えば彼、膝が悪いんだった。練習ができるような状態じゃないと言ってた。じゃ、何をしているのだろうと疑問に思っていたら、体育館の床拭きをしたり、掃除をしたり、練習試合の日程を決めたりというマネージャーのまねごとをやっているという。誰よりも早く体育館に来て、だれよりも遅くまで残って体育館やボールや道具の管理をしているという。
「え? このみちゃんがどうしてそんなこと知ってるの?」
フィアンセの私が知らないことをどうして? ほんの一瞬だけ嫉妬した。嫉妬と同時に安心感もあった。朝早くから晩遅くまで体育館にいるんだったら、ほかの女の子と遊び歩く時間もないだろうから。
「阿久津先輩に教えてもらったの」
「阿久津さん……」
階段を早足で登っていく憧れの先輩を切ない視線で追っていた乙女の姿がフラッシュバックした。
「え? このみちゃん、ひょっとして……」
「うん、ここンところ、ほぼ毎日会ってるよ」
「毎日って……」
ベッドのヘッドボードに並んで寄りかかり、ショートパンツから伸びる脚を無造作に布団の上に投げ出している私たち。私は午後の日光に透かして吟味していたスケスケショーツを膝の上に置いて彼女に疑念の目を向けた。隣りで敢えて私と視線を合わせようとせず、膝の上に広げた下着を見比べている彼女をじっと見つめる。
バレー部員に女の子とデートする時間なんてあるのかしら? あ、そうか。三年生はもう引退……。納得した。
「私ね、彼の……」
「ん?」
彼女は投げ出された自分の膝に視線を落とし言いよどんでいる。
「いいよ、何でも言って」
私の言葉に曖昧にうなずいてから、ほんの数秒、唇をもごもごさせる。次の瞬間、意を決するような視線が私を射抜いた。
「セフレ、なの……」
私が知っているこのみちゃんではなかった。おとなしくて控えめで、文学とセクシー下着にだけ興味のある彼女ではない。内面のギラギラを臆することなくむき出しにした一人のオンナ。
「だって、阿久津先輩ってカノジョいるじゃん。バスケ部の……」
「だから、……セフレ。カノジョじゃなくて……」
「それって、どういう……」
エアコンの風が剥き出しの肩と太ももを撫でてゆく。そのせいか軽く鳥肌が立った。
本棚や机の上などあちこちにかわいい縫いぐるみが配置されている。イチゴ模様のかわいいカーテン。壁には題名は知らないが、シャガールの絵画が掛けられている。月夜のバルコニーで抱き合う男女の姿。ここはまごうことなき処女の部屋かと思っていたのに……。
南向きの窓から燦々と日光が注ぎ、ベッドの上に散らばった何枚ものシルクショーツをキラキラ輝かしている。
「今日のショーツ、これにする。サキも早く一枚選びなよ。見せ合いっこしようよ」
急激な話題転換。
私の意識はまたショーツに戻る。手に握られた一枚に視線を落とす。ほどんど下着の役割を放棄したような代物。紐の組み合わせでしかない際どいショーツ。
このみちゃんの部屋いっぱいに散らかっているショーツはすべて試作品だそうだ。ものによっては縫製の杜撰なものもある。でも、高校生が趣味で身につける分には何の障害にもならない。カレシに見せるとしたら話は違ってくるだろうけど。
「これ穿いて彼に会う。今日来るから。彼ね、私の下着すっごく喜んでくれるんだよ」
脱線した話題が再び阿久津先輩に戻る。
「このみちゃん……、私、あまりよくわからなくて……。だから、セフレっていうのは……」
「……セックスフレンド。セックスするだけのおともだち……」
「おともだち……」
「そう」
このみちゃんは確信に満ちたような表情でうなずいてみせた。
「恋人じゃなくて、ただのおともだち。セックスを介しての」
仲良しの口から漏れる生々しい言葉に心臓が高鳴り顔が熱くなる。ミツエさんとの出会いがなかったら私の口からは一度も漏れることがなかったであろう言葉。──「セックス」。クラスメイトの口から漏れるたびにいたたまれなくなるような、何か怪しくて、魔法めいて、息苦しくなる言葉。
私のこんなそばにそれを愉しんでいる同級生がいる。平気で口に出す同級生が目の前にいる。モテるけれど奥手である私の住む世界と、おとなしそうで実はエロい仲良しの住む世界のギャップに面食らう。お互い異世界の人間が一つの部屋で仲良く顔をつき合わせているのがとても不思議だ。
「そ、そんなのよくないよ」
私の世界の価値観が通じるかわからないけど、投げかけてみるだけなら許されるだろう。
「どうしてよ? 抱かれている時ってスッゴク幸せなんだから。彼には恋人がいるから、今でこそセフレの立場に甘んじている。でも、あの二人、決してうまくいってるわけじゃないの。私にだって恋人にのし上げれるチャンスはある。先輩のことが好き。先輩も私のこと、気に入ってくれてる。だって、カラダの相性、最高だし……」
「このみちゃん……。私ね、このみちゃんのことが大好きなの。だからこのみちゃんには自分のことをもっと大切にしてほしくて……」
そっと握るこのみちゃんの手はカッカと火照っている。
「大切にしてるよ。自分が大切だから……、エッチするんだよ」
「相手に恋人がいても?」
「でも、カラダの相性は私との方が合っている。私の価値を彼に認めてもらえるのはエッチするときなの。勉強もスポーツもできないけど、エッチでなら彼に認めてもらえる。評価してもらえる。これって、自分を大切にしていることにならないのかなあ?」
このみちゃんとシッカリと視線があった。瞳の色の濃さに驚いた。
そうか。阿久津先輩にとってはこのみちゃんの躰がハイクオリティー商品。それがこのみちゃんの価値……。
私の脚をまたいで勢いよくベッドから降りたこのみちゃんは、床に立ち勢いよくショートパンツと下着を降ろした。もう私の前で何度も繰り返されてきた光景。私のとは比較にならないほど濃くて広い翳り。剛毛の合間から透けて見えるワレメの周辺は色が濃い。ワレメからはみ出し気味のビラビラは、熟してパックリ割れたザクロを想像させ、卑猥な感じがする。彼女は優越感に浸ったように、それを私に見せつける。
──「価値」かあ……。
見ているだけじゃその価値はわからない。このみちゃんの性器を使っている阿久津先輩にしかわからない価値だ。ふたりはどんなセックスをし、そこに阿久津先輩はどんな価値を見出すのだろうか。それは私には未知の世界だ。
今日の彼女の選択は保守路線のようだ。相変わらず腰紐へのこだわりは強いが、アンダーヘアが隠れるほどの面積はある。しかし、透けている。野性的な翳りはシルクの薄膜に覆われるとフェミニンさをまとう。どうしても外に漏れ出てしまう野性を上品に見せたいという女心さえ透けて見えるのだ。
私はベッドに座ったまま腰をひねりながら着古した下着を下げ、輝くようなシルクショーツに脚を通す。シルクさえまとってしまったら、私の幼いその部分もこのみちゃんと同等になる。赤ちゃんみたいにピンク色の性器がこのみちゃんにじっと見つめられる。口元が緩み今にもよだれが垂れて来そうになっている。
その瞬間、私の性器の価値がこのみちゃんに吟味されていることに気づいた。
二人ともお臍の上までのショート丈のキャミソール。私は白でこのみちゃんは黒。その下で個性を発揮するパンツをお互いに鑑賞しあう。
ショーツを選ぶときジュンくんのことを考えていた。ただの知り合いなのか、婚約者なのかわからない彼。会いたいのに会えない彼。バレー部のスタイル抜群の女の子とイチャイチャしているんじゃないかという疑いが頭をもたげる。そんな内面的葛藤が私にこんな大胆なショーツを選ばせたのだろうか。噂の女子に彼はどんな価値》を見出すのだろうか。私はそれを凌駕することができるだろうか。それほどの価値が私の躰にあるだろうか。
レース紐のGストリング。バックのT字部分にバタフライがあしらわれているのが気に入った。フロントは面積が極めて狭いが蝶が大胆に羽を広げたデザインは刺激的だ。今日はこのみちゃんより私の方が大胆でセクシーかも。また価値という言葉が脳裏をかすめる。私は無意識のうちに自分の「価値」を上げようとしている。
ベッドから降りた。
このみちゃんの周りをファッションショーのように一周してみた。ところが……。
やはり試作品だからだろうか。私の淡いヘアさえ隠し切れない細長いフロントの布。それが股間のもう少し後ろまで覆ってくれればよかったのが微妙に足りない。ストリングが歩いているうちにワレメに食い込んで来る。布が紐化し、必然、一番感じやすい部分がスリスリされるのだった。
「あ……、これちょっとヤバいかも……」
「ステキ……」
「え?」
このみちゃんが床に膝をつき、食い込みのありのままを前面から直視している。視線がピンク色のワレメを何度も往復する。シルクをあんぐり
「それがいいの……。最高……」
「ちょっと、このみちゃん……」
バタフライがあしらわれた後ろのT字がつまみ上げられる。フロントの端もつままれてチョイチョイとリズミカルに引っ張り上げられる。ワレメが紐化したシルクをますます深くくわえる。
「ああ……、ダメだったら、このみ……うっ……」
フロントの薄いレースがワレメの端の覆いを捲り上げ、とうとう私が一番恐れる部分が露出してしまった。ピリッと痛みに似た感覚が背骨から脳髄に伝わり、変な声が漏れてしまった。
「これがいいのよ。Gストリングの醍醐味。清楚感あるれる制服スカートの下でワレメに食い込むストリング。欲望と快感の芯をなぶり続けるストリング……。最高よ。サイコー!」
このみちゃんは、前後のレースをピンピンつまみ上げて遊んでいる。ゴクンと唾を飲み込む音まで聞こえてきそう。
「ふうっ……、ダメよ、このみちゃん、刺激が……、ああ……、刺激が強すぎるの、勘弁して、お願い……」
このみちゃんがフロントをつまみ、左右に揺さぶり始める。恥ずかしい毛が右から現れたり左から現れたりしている。意地悪な表情が童顔にいっぱいに広がっている。
「あっ!」
大きな声が漏れてしまった。だって、だって……、
それが、剥かれて、しまった、か、ら……。……っ!
「サキって、クリちゃん、とてもいい感じよ」
「いや、見ないで。も、もう終わりましょう。このみちゃんももう充分に見たでしょう?」
私は両脚をX形にし手を当て、羞恥の源を隠そうとする。でも、このみちゃんが私の両手をお臍あたりに押さえつけ、じろじろ見ている。その視線は熱さえ帯び、私のそこをあきれるほど突いてくる。このみちゃんの力は弱いから、手を引き抜いて恥ずかしい部分を隠そうと思えばいくらでも可能だ。でも私はそれを敢えてしないでいる。本心ではこのみちゃんに見られたがっている私を発見する。
ベッドに押され、私は股を広げた恥ずかしい格好で布団に尻もちをつく。マットレスに躰が弾む。グイっとさらに膝が広げられる。M字開脚の中心にこのみちゃんの頭が差し込まれるのが、ベッドの対面の広い鏡に映っている。
このみちゃんの部屋は洋間で、広さにしてだいたい8畳くらいあるのだそうだ。そこに一面大型鏡が貼られた壁を設置して3対1くらいに仕切り分けられている。こちら側の広い空間にはベッド、机、ワードローブ、ファンシーケースなど普段必要なものが置かれている。ベッド上での出来事はすべて大型鏡に映し出される。
向こうの空間にはまだ入ったことがない。「趣味の部屋なの、へへへ……」と言ってこのみちゃんは見せてくれない。大鏡の脇のドアにはいつも鍵がかかっているようだ。あまりプライベートを明かさないこのみちゃんのことだから、きっと文学書やら下着やらが溢れているのだろうと想像してみた。
「こ、このみちゃん……、ダメだって……、うっ……、くくっ……」
悶える自分の姿が恥ずかしげもなく鏡に映し出される。
おかしい。これも鍼治療の効果だろうか。刺激が強くて、お風呂で洗うとき以外は決して触れなかった尖端が今日はどういうわけか気持ちいい。痛痒さの水面にプツプツプツと快感の泡が弾ける。このみちゃんの指にもてあそばれればもてあそばれるほど、炭酸の泡がプツプツいきおいよく弾けてゆく。充血してパンパンに腫れあがっているのが上からヘア越しに見える。指で、そして手のひらで
「サキ……、とても敏感になっている。かわいい……。もっと
いや、もう十分に虐められている。指が先端をはじくスピードがますます速くなる。鏡の中の自分が顔を真っ赤に染め目を潤ませている。すごくイヤらしい……。オンナの顔だ、と思った。
「あああ……、こ、こ、このみ……。変な感じ……。はじめ、て……、こんなの……」
「サキって、自分で慰めることないの?」
上から撫で下ろされるより、下からすくい上げられるようにしていじめられるほうが気持ちいい。断続的に声が漏れる。
「だって……、変な感じで……、怖くて……。でも今日は気持ちがとっても……ああ……」
「オンナの喜び感じるようになったんだね、サキも……」
このみちゃんが、大鏡に振り返る。私も鏡に目をやる。
「イヤ! 恥ずかしい!」
そう、鏡に映された私の性器。そこに私とこのみちゃんの視線が集中している。下着のクロッチが脇によけられているから、恥ずかしい部分の全貌が丸見えだ。ワレメの上にかすかに黒ずんで見えるのが貧弱なヘアの一群。その下方は赤ちゃんの頬を彷彿とさせる大陰唇。あざやかなピンク色に染まっている。
「かわいい」という形容詞は私の性器のためにあるようなものだ。しかし、全体的な幼さに対し、真ん中の亀裂から覗く真っ赤な襞は成熟したオンナのものだった。小陰唇が短いから、膣口がヒクヒクしているのが克明に見える。
次の瞬間、信じられないことが起こった。
「はうっ‥‥‥」
くちびるが当てられたのだ。
「ひいっ!」
私のクリトリスに!
「んんんっ! こ、こ、このみ‥‥‥」
ぺちゃ‥‥‥、ぺちゃ‥‥‥、ねろっ‥‥‥。
「あっ、ダメ、そこ! おしっこ出るところ‥‥‥、き、汚いから‥‥‥」
チューッと甲高い、いやらしい音が鼓膜を切り裂く。
「ああっ!……、いいっ!」
クリトリスが吸い上げられたのだ。鋭い快感に突き上げられ、とうとう顎を突き出し体を反り返らせてしまった。顎もくちびるもわなわなと震えている。恐ろしかった。だって、こんな快感が世界に存在するなんて知らなかったから。痙攣が止まらない。どうなっちゃうの、私は?
舌で突かれるたびに、嬌声が水しぶきのように吹き上がる。背中が反り返りブリッジのようになる。快感を躰の中にもっともっと取り入れたくて、無意識に足の指を丸める。手を握るように足の指を丸めると快感が強まる。
チューーーーッ!
「んうっ……、はあっ、はあっ……、ふっ……」
脳がしびれ、目の前が真っ白になる。自分の嬌声が自分のものだとは信じられない。私がこんないやらしい声を出すなんて。ウソよ、ウソ。きっと夢見てるんだわ。
「ちっちゃい‥‥‥。サキちゃんのクリ、とっても小さい。でも、ツンって尖っているのがかわいい。ほら、
私も見てみたい。興奮している自分のクリトリスを。でも、見れない。だって体中快感で痺れていてコントロールできないから。
チューーーーッ!
また吸われる。激しい快感が脳にまで突き刺さり、躰が痙攣の波に覆われる。
「はあぁああ……、ダ、ダメよ‥‥‥、んんん!」
もっと剥いてもらいたくて、もっと吸ってもらいたくて、もっと嬲ってもらいたくて、必死に腰を突き出しておねだりをしてしまう。突き出すたびにこのみちゃんは応えてくれる。
チューーーーッ!
また吸われる。あっ! 前歯で噛まれている! 甘噛みされている! うっ! また吸われる! チューーーーッ! くわっ! 激しい快感に全身を貫かれる。
震えたくないのに、痙攣したくないのに。私はバカみたいに腹筋を震わせている。狂ったように腰をしゃくっている。
おかしくなってしまった! 狂ってしまった! 私、本当にタガが外れてしまった! でも、いいの! とってもいいの! 甲高い音が連続で部屋の空気をつんざく。チュー―――ッ! チューーーーッ!ピチュー―――ッ!
「ンンン、クワァーーーーー!」
「サキちゃんのクリ、かわいいよ。もっと喘いで。もっと腰をしゃくって」
額越しに見上げてくるこのみちゃんのくちびるは、粘液でべっとりとしている。顎の方まで白い液が垂れている。私の膣から流れ出た粘液であることは明白だ。
「んあっ! ふうーん、はあっ!」
「喘ぎ声がかわいいよ!大好き、大好き。サキちゃん、大好き……」
「このみちゃん! 大好き! 私も、このみちゃん、大好き!」
こんなに気持ちいいのは初めてだ。もっともっと嘗めてもらいたくて、舌でかき回してもらいたくて、とうとう彼女の頭を両手でつかみ股間に押しつける。
「ムムんンん‥‥‥」
このみちゃんが息が吸えない。苦しそう。でもクリは一生懸命吸ってくれる。鞘を向いて、小さな小さな芯をえぐり出し、一生懸命くちびると舌でかき回してくれる。
「大好き、このみちゃん! 大好き、大好き!」
「サキん‥‥‥。ンん‥‥‥、ムムんンん‥‥‥」
ああ、なんてはしたないことをしているんだろう。まだ高校生なのに。処女なのに。学校で一番かわいいと認定されている美浜咲が、友だちの顔を「まんこ」に押しつけ快感に狂っているなんて!
「私も嬉しいよ。サキちゃんがこんなに感じてくれるなんて」
「このみちゃん、ああ……、ふえーん、いいよ、ふわぁっ! とってもいいよ!」
私に快感を注いでくれるこのみちゃんが愛おしくて、一度離された顔を再度股間に押し付ける。何て思われてもいい。淫乱のレッテルを貼られてもいい。このみちゃんに思われるなら。このみちゃんに貼られるなら。
「く……、く、苦しいよ……」
このみちゃんが窒息しそう。エイ、窒息してしまえばいい。命がけで奉仕しなさい! 私の快感に命を捧げなさい! 私は世界中で一番我儘な女に成り下がったのだ。容赦なくこのみちゃんの頭を抱き、腰をしゃくりあげる。性器を、クリトリスを、このみちゃんのくちびるに押し付ける。自分の欲望のために。自分の快楽のために。
あまりの快感に涙を流している私。喘ぎ声だか泣き声だか、自分でも区別ができない。
「もっともっと感じていいんだよ。女の子なんだもん、もっと喘いでいいんだよ! 女の子には許されているの! もっともっと喘いで!」
このみちゃんが、水泳で息継ぎするように私の股間から顔を上げ、私の快感に許しを与えてくれる。淫乱な私を許してくれる。だから私は貪欲に、ますますいい気になり、我儘になり、彼女の顔を自分の股間に、いや、「まんこ」に押し付ける。
吸われて吸われて吸われまくる。かすかな痛みを伴った、くすぐったいような、痒いような、言葉では表現不可能な快感……。いや、快感以上の快感。超快感!
その時、体の奥の方でプツンと何かが切れた。縄が切れたのだ。そして、縄から解放された何かが走り出した。たぶん子宮の奥の方。激しい愛撫を受けて何かが暴走しだした。何、何? この湧き上がる感じ。きゅうーって疼く感じ。いったいこれは何? 怖いよ。このみちゃん、教えて! これ何? 怖い……。怖いよー。来る、来る!
「ふわあぁあああ!」
膣口から突き刺された長い長い剣が後頭部にまで届き、グワンと突き刺さった感じ。高圧電流が火花を放ち、躰が焼き切れた。嵐のように激しい快感に女体がピンピンと痙攣し、嬌声が絞り出された。とてつもなく大きい気のかたまりに意識が包まれ、丸ごと持っていかれそうになる。
「んんがっ!」
躰の芯がピーンと張り詰めている。後頭部からつま先まで針金を通されたかのようにピーンと突っ張っている。その時私の躰はブリッジになっていた。肩は布団に着けたまま、両膝を開いたまま隆起させる。左右のつま先で体重を支えて痙攣している。
ああ、私は死ぬんだ。──いやらしい嬌声が遠ざかってゆく。
死ぬんだと本気で思った。──耳がつんぼになって、心臓の音しか聞こえない。
遠くの遠くで、誰かが喘ぎ声を上げている。私の嬌声であるような、そうでないような‥‥‥。鼓膜に幕がかかったように、何も聞こえない。心臓の音だけやけに脳髄に響く。ドクン、ドクン、ドクン‥‥‥。
一瞬、ジュンくんの顔が浮かんだ。ああ、できればジュンくんと死にたかった‥‥‥。
落ちる‥‥‥。暗闇へと‥‥‥。ドクン、ドクン、ドクン‥‥‥。
私はジュンくんに手を伸ばす。でも届かない。ジュンくんが消えてゆく。ダメ、消えないで。私を置いて行かないで!
ああ、落ちる‥‥‥。どんどん落ちる。 激しい痙攣。首から頭部がもぎれてしまいそうに激しい痙攣‥‥‥。
く、く、苦しい‥‥‥。酸素が‥‥‥、酸素が足りない‥‥‥。ダメ‥‥‥。ジュンくん‥‥‥、私は、私はもう助からない‥‥‥。死ぬんだ‥‥‥、ああ、死よ! 死よ! 死‥‥‥、よ‥‥‥。
そして、虚脱感……。
地獄の底を背中に感じた‥‥‥。
淫乱地獄‥‥‥。
何だったんだろう今のすごいヤツ? 死をも意識した快美感。内臓が沸騰し溶け出すような恍惚!
大きな気が通過した躰は自分のものであることを放棄したように脱力している。眠い。このまま眠ってしまいたい。
しかしここは友達の部屋。下半身に紐みたいなショーツを穿いて、それもクロッチが脇にずらされて丸見えの状態で気絶していられるようなところじゃない。このみちゃんのご両親や妹さんがいつこの部屋に入って来てもおかしくないのだから。
私は肺が焦げるような激しい呼吸を繰り返し、意識がなんとかこの躰にとどまるように、天井を強い視線で見つめていた。一点のシミもない真っ白な天井。そこへ、口の周りを粘液でべとべとにしたこのみちゃんの顔がヌワーッと現れる。
「サキ……、イったのね?」
私はだらしなく仰向けになって激しい呼吸を繰り返している。ショーツのクロッチはずらされたまま。ドロドロの「まんこ」は露出したまま。
「イったって……?」
このみちゃんの訊いていることを私は理解していなかった。無知な同級生をくすくす笑うこのみちゃん。
「オルガズムだよ……。サキは今、オルガズムを体験したんだよ。わかる?」
「オルガ……」
頭がクルクル空回りする。脳が虫の羽音のようにジーンと音を立てて疼いている。聞いた言葉の反覆さえままならない。
「そう、オルガズム。サキはオルガズムを感じやすい体質に生まれ変わったんだよ。きっとこれからは一人でもエッチができるよ。ここを、ほら、自分で刺激するとね……」
このみちゃんは私の手を下半身に導き、まだ充血の引かない敏感な突起物に触れさせた。
「……っ!」
また大きな声を上げそうになってしまった。緩みきった穴からおしっこが吹き出しそうになり必死でこらえる。いや、正直言うと‥‥‥、ちょっとだけ噴き上げてしまった。たぶん5滴か6滴ぐらい。このみちゃんの顔から水滴がしたたり落ちた。
「へへ! サキの潮、私なめちゃった」
「ご、ごめんね、このみちゃん……」
その時のこのみちゃんが、私は本当に、心の奥底から、躰の奥底から大好きだった。ああ、このみちゃん、このみちゃん。大好き‥‥‥。本当に大好き‥‥‥。今度は私がこのみちゃんにやってあげるからね‥‥‥。
その時だった。ブルッとスマホの震える音がする。このみちゃんがべとべとの手をキャミソールの裾で拭き、タップする。
「あ、先輩!」
待ちに待ったものの到来に顔を輝かせるこのみちゃん。心なしか、声が張り切っているのは私をイかせた勝利感も手伝っているように思われた。
「あ、今家の前だって、先輩……」
「え? それって、阿久津……?」
「そう、阿久津先輩……」
とんでもないことになった。女どうしで楽しみ、まだ淫靡な空気の漂うこの部屋に阿久津先輩が来る。もう玄関前に来ていると言う。
「たいへん! 早く片付けなくちゃ!」
私はあられもない格好でベッドを下りる。床についた足がつるんと滑った。
「きゃっ!」
「サ、サキ、大丈夫⁈」
尻もちをついたとき、肘がベッドの枠に当たり痛かった。
水じゃない。ねばねばしたものが床に垂れていたのだ。ほんの2,3滴という感じだったが、かなり滑った。このみちゃんがクスッと笑って「サキって、漏らしすぎ」と言った。私は顔が火傷するほど真っ赤になった。
穿いてきたショートパンツはどこへ行ったかしらと、布団をめくりあげたり、床を探したりしたが見つからない。
「ちらかっているショーツはそのままでいいから……」
このみちゃんは引き出しからカギを引っ張り出し、大鏡の横のドアにガチャガチャと差し込んだ。
「サキちゃんはとりあえずここに隠れてて……」
私は背中を押され、このみちゃんの趣味の部屋へ押しこまれた。
「あの、私、まだ……」
下、穿いていないの、と言うまえにドアは閉じられ、向こう側からカギがかけられてしまった。
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