#3
天野文が目を開けるとそこは牢獄だった。
「は!ここはどこ?痛い!」
体が動かない。
「ん!!!」
ベットに縛り付けられている。
入口の方を見ると人が通りかかった。
「あの」
小さく呟く。
白衣を着て小さな帽子をかぶっている。
「ここは。。。」
「ここは天岩戸病院です。あなたは警察と救急車でここまで運ばれました」
「お名前は天野文さんですよね?」
「はい」
周りを見回す。どう見たって牢獄だ。
「ここ警察ですよね?私捕まったんですか?」
「いいえ」
白衣の女性はふとため息をつくときりっとした顔になり、こう言った。
「ここは病院です。あなたは逮捕されたわけではありません。措置入院と言って県知事の指示で入院しています」
「凛空!!!」
頭が真っ白になり子供の名前だけ浮かんだ。
「凛空は!!!凛空は!!!」
「お子さんは無事です。今は児童相談所に預けられています。けがもなく無事ですよ!」
看護師らしき人物はそう言った。
外は大雨が降り雷がしきりに鳴っている。
「ここはどう見ても監獄、体も縛られているし、凛空も無事なわけない」
凛空のことを考えるとどうしても頭が回らない。
その時、ひときわ大きな雷が鳴り、壁を照らした。
「誰か。。。いる」
壁に誰かいるようだ。
こちらからは逆光になって見えないが、それでもものすごく美しい女性なのはわかる。
女性は斜めの姿勢になると文に話しかけてきた。
「子供は無事です。御安心なさい」
なんとなくなく信じれる気がする。逆光で陰になっているのに女性は神々しく光って見えた。
「凛空は。。。無事、なの?」
女性の言葉は信じるに足るように感じる。
「あなたは選ばれました」
女性はそう続けた。
「選ばれた?何に?」
言葉にしようとするのだが、女性に話しかけられない。目線をやるのもおこがましい美しさだ。
女性の背後からは後光の光が差し、こちらからはその顔を見ることができない。いや視線を向けることさえ恐れ多いと思われた。
やがてその女性の影は薄さを増し、だんだん見えなくなってきた。
「あ、あの」
恐れ多くて声が出ない。
「あの」
最後の勇気を振り絞って声を出した。
「あなたは選ばれたのです」
最後に女性はそういうと後光の光と共に消えていった。
文は再び気を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます