第八譚:牡丹燈記 其の壱
たんと伝わる 昔の話
嘘か誠か 知らねども
昔々の 事なれば
誠の事と 聞かねばならぬ
昔々、昔は
旧正月を少し過ぎたころ、喬生は夜更けに一人夜道を
牡丹燈籠の少女と美女を追い越した喬生は、他に誰もいない夜道で二人に話しかけた。聞けばその美女は
麗卿の美しさに惚れ込んだ喬生は、金蓮に案内され喬生のもとにやってくる麗卿との逢瀬を楽しんだ。あまりに入れ込み過ぎた喬生は寝食をも忘れ、次第にやつれていき身なりの乱れも気に留めなくなっていた。そんな姿を意にも介さず無く、歓待してくれる麗卿のことで喬生の頭は一杯になっていた。
しかしとある日あきらかに様子のおかしい喬生を見かねた友人が、魑魅魍魎に詳しい導師を訪ねた。その導師はしばらく喬生の様子を探っていた。とある日導師がこっそり様子を
導師は朝になって喬生に忠告した。喬生が夜な夜な逢引きを楽しんでいる相手は
その夜喬生は麗卿たちがやってくるのを今か今かと待っていた。しかし麗卿たちはいつになっても現れない。それもそのはず、邪鬼除けの結界が麗卿を寄せ付けないのだ。一緒に来た金蓮はさめざめと泣きながら、おかっぱ頭を振って導師をなじった。
二人を
金蓮の迫力に驚いた導師その迫力にたじろぎ、思わず邪鬼除けの結界を解いてしまった。その行為に金蓮はにっこりと微笑み、その夜は喬生の家に足を踏み入れることなく、麗卿と喬生を引き連れて牡丹燈籠に照らされた夜道を歩き始めた。
翌朝我に帰った導師が昨夜のものであろう足跡を辿っていくと、そこには石造りの墓があり、中には棺が一つ置かれていた。導師がそっと棺を開けると、そこにはさきほどまで生きていたような麗卿と喬生がその美しい屍を重ねたまま息絶えていたという。
その後牡丹燈籠を持った少女に連れられた麗卿と喬生の姿を夜道に見る者が後を絶たなかった。夜道を進む牡丹燈籠に照らされた喬生と麗卿の姿は生前のように美しく、そして幸せに溢れていたと伝えられている。
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