第六譚:狐の嫁入り 其の弐

「あきら?」

 朝日の眩しいホテルのバルコニーで佇んでいた私を呼ぶ声がした。しまった、起こしてしまったか。

「おはよう。」

 私は最大限の笑顔で応える。一糸纏わぬ姿でベッドに横たわり、白いベッドにきわどく着飾られたようにその肌を隠す私の大事な姫に。そんな貞淑な姿に惚れ直しているところで、私の姫は奔放にも生まれたままの美しい裸身を曝け出し、私の待つバルコニーへ飛び出してきた。まったく、私の姫にも困ったものだ。仕方なしに私が身に着けていたバスローブを姫に着せてやる。

「あきらが、見られちゃう、よ。」

 着せたバスローブが昨夜の情熱が醒め切らない姫の身体を刺激しているのか、途切れ途切れの声で訴える。

「私はいいんだよ。」

 そう言って抗議したりないであろう唇を唇で塞いだ。

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