第四譚:善知鳥 其の参

 青年漁師と怪鳥と化した善知鳥の親鳥、その死闘を物陰からひっそり見ていたものがいた。青年漁師が祈りを終えてその場を後にしたのを確認し、ようやくそのものは姿を現した。

 横たわる怪鳥の死骸はいつしかその大きさを縮め、普通の善知鳥に戻っていた。その姿は生前そのもの、善知鳥の子供を育みこれまで守ってきた親鳥の姿に戻っていた。

 善知鳥の親鳥は子供たちに怪鳥と化した姿を見せることは無く、子供たちも親鳥が土饅頭に、地獄に堕ちた漁師に復讐していることも知らなかった。さきほど姿を現した善知鳥の若鳥は、初めて狂わんばかりにたぎる親鳥の怒りを目の当たりにした。

 そして卑怯にもあの青年漁師は、卑劣にも善知鳥の子供が親を呼ぶ鳴き真似をして、親鳥の隙を誘いその命を屠った。

 親をだまし討ちで殺された怒りにその体を震わせながら、若い善知鳥が復讐に羽ばたく。静寂の中、波の音だけが若い善知鳥の復讐を鼓舞しているように鳴り響いていた。

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