第二譚:青入道 其の参

 大治少年は恐れることなく荒れ寺の中へと入っていった。スマホのライトに照らされた荒れ寺の中には【青入道】以外見当たらない。【青入道】にライトを向けると、【青入道】の上半身は血まみれ、顔は真っ青のままであった。そして窓にしがみついている両手と上半身はあるのに、下半身が無い。食いちぎられたかのように避けた袈裟けさの下半分と同じく【青入道】には腰から下が無かった。

 【青入道】は大治少年が寺に入ってきたのを見て悲し気な溜息をついた。大治少年は近くによって【青入道】をもっとよく観察しようとしたとき、自分の後ろに気配を感じた。振り返れば自分自身の影が立ち上がり、その大きさを数倍に膨らませ、その影は大治少年が知る、鬼の姿に変わっていた。

 恐怖の虜となり動くこともできない大治少年、そしてその光景を見つめながら、警告が届かず救えなかった命に悲しく手を合わせる【青入道】が青い顔を悲痛に歪めて佇んでいた。

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