第二譚:青入道 其の弐

「これが噂の荒れ寺らしいぞ。」

 高校生と思しき少年が秋の夜更けに荒れ寺の嬉しそうな声を上げた。連れの少年が不安げに後ろからついて歩いていた。不安げな少年が言う。

大治だいじ、もう帰ろうぜ。」

 大治と呼ばれた少年はいたずらっぽく微笑み、連れに声をかけた。

信良のぶよし、びびってるだろ。」

「び、びびるだろ普通。」

 連れの信良が震える声で返した。

「ならお前はママのところに帰ればいいさ。俺は一人でも【青入道】を探して見せるから。」

 ママという言葉に気分を損ねたのか、信良少年は怒って本当に帰ってしまい、大治一人が荒れ寺の前に取り残された。

「さてと、まずは松を踏めば良いんだっけ?」

 独り言を言いながら荒れ寺の前にある松を踏もうとしたとき、

「松踏むな。」

と寺の方から声がした。声がする方を見れば荒れ寺のぼろぼろになった窓から確かに青白い顔をした坊主が顔を出しているではないか。あれが噂の【青入道】かと大治少年は怖がるどころか嬉しそうに飛び跳ね、今度は敷石を踏もうとした。

「石踏むな。」

 予想通りの返答に大治少年は有頂天、怖いもの知らずが過ぎるこの少年は、恐れもせずに荒れ寺の中へと足を進めた。


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