第19話
ロフシーの作業場である建物に、何人ものリザードマンが出入りしていた。テーブルや椅子、棚や何かが入った箱や
「この作業台はこっちでいいのか? それよりも、こっち側に寄せたほうがやりやすいだろ」
作業場にはリザードマンだけでなくパニメットもいた。そしてロフシーも。
「じゃ、じゃあそれで」
「ロフシー、自分の作業場なんだからちゃんと考えろよ。後で困るのは自分なんだからな」
「そう言われても……」
リザードマン達は作業台や材料を保管するための棚などを、作業場へ運んでいた。どこに何を置くのかはここで作業するロフシーが決めるべきなのだが、何も指示できていなかった。かわりにパニメットがレイアウトを決めてしまっている。
「こんな広い作業場なんて使ったことないですよ~」
「はあー。ったく、この万力は作業台の右と左ぢっちが使いやすいんだ?」
「そ、そうですね? 右かな?」
「じゃあ棚はこっちにしたほうがいいな」
パニメットが手で示すと、棚を持ったリザードマンがそちらへ運んでいく。彼女にはリザードマンの言葉は理解できないが、リザードマンには彼女の言葉が理解できる。この程度の指示なら可能だ。
「これはどうする?」
「えっと、こっちに……」
朝から始めて昼には作業場が完成した。まだ棚には何も入っていないが、必要な設備がそろった様子は職人の仕事場としてふさわしいものに見える。
「終わったか」
「ガイラさん。はい、終わりました」
「こちらもだ。確認のために来い」
作業場の二階は生活住居になっている。部屋数は少ないが、一人で暮らすには十分だった。
「ここがお前の部屋だ。自由にしろと言ったから、その通りにしたぞ」
「すごい……」
部屋は決して広い部屋ではなかった。しかし窓には模様が染色されたカーテンがあり、小柄なロフシーには大きすぎるほどのベッドには白いシーツが敷かれ、鏡のある化粧台が置かれた部屋はまるでお姫様が暮らしているような場所に思えた。
「ここに私が住めるなんてすごいです!」
「……本当にここで生活する気か。館にいたほうが楽だと思うがな」
「豪華すぎて落ち着きませんよ。それにやっぱり、作業場がすぐ近くにあるのが好きなんです。お母さんと住んでた家もそうだったから」
「そうか。ならばこの者と共に暮らせ」
ガイラが視線を向けたのは、ロフシーの横に立つリザードマンだ。首に青銅コインのペンダントをしている。
「リザードマンさんと一緒にですか?」
「仕事の助手のようなものだ。これまでもそうだったのだろう。他に家事をやる者も定期的に通わせる」
「でも、お給金は……」
「いらん。お前が仕事に集中できるようにだ。こちらの都合なのだから気にするな」
「あ、ありがとうございます」
「ただ……調理場はまだ時間がかかりそうだ。完成まで朝と昼はこちらへ運べるが、夕食は館へ食べに来るんだ。いいな」
「わかりました」
夕食も運んでくればいいのだが、そこにロフシーは気づかなかった。
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