第12話
ガイラは地面に平伏するパニメットから、視線を傍らのリザードマンへ向ける。
「腕は確かという話だったな」
「はい」
それ以上ガイラは口を開かないとわかると、リザードマンは言う。
「あなたには、こちらのロフシーが用水路の修復をする手伝いをしてもらう。出水口の像を作るための青銅が必要になる。またロフシーが像を製作するための道具も作ってもらう」
パニメットはリザードマンをちらりと見て、ロフシーへ助けを懇願する目を向けた。
「頼むよ。アタシには言葉がわからないんだよ……」
ガイラが大きく息をはく。
「……ロフシー、お前が説明してやれ」
「えっと、畑の用水路の水が出るところに青銅の像があるんですけど、それが壊れてるので交換するんです。それで青銅が欲しくて」
「……青銅の量によるけど、それは大丈夫だと思う。ただアタシは像何て作れない」
「私が作ります」
「ならいいけど、一回実物を見ておきたいな」
リザードマンが答える。
「ならば明日に案内するとしよう」
「だから言葉がわからないんだってば」
「明日、案内するって言ってます」
ロフシーの言葉にパニメットは頷く。
「ロフシー。他にもあっただろう」
ガイラの言葉に、ロフシーは先ほどのリザードマンの言葉を思い出そうとする。
「そういえば、私の道具も作ってくれるって言ってたような?」
「どんな道具だい? 実物があればいいんだが」
「あっ、あります」
ロフシーは背負っていた袋の中から、古びているが丈夫そうな革製の道具入れを取り出した。
「これです」
「手に取ってもいいかい?」
「どうぞ」
先端が鋭く尖った鉄針になっている物をパニメットは真剣な目で観察する。先端が真っ直ぐなだけではなく、曲がっているものもあった。その他には色々な形状の彫刻用小刀と、鉄のヘラがあった。
「どれも使い込まれているけど、ちゃんと手入れされているね。実力のある職人の道具だね」
「はい! お母さんが使ってました!」
母親を誉められた気がしてロフシーはとても嬉しかった。
「ただ多少くたびれているのもあるね。まだ研げば使えるけど、予備をいくつか作っておこう。この道具、ちょっと預かってもいいかい? 明日には返すから」
ロフシーはガイラへ顔を向けて、どうしましょうかと聞く。
「急ぐことではない。お前がいいならそれでいい」
「わかりました。じゃあパニメットさん、お願いします」
「ああ。この道具に恥じない仕事をするよ」
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