命綱もなしに。

@yabikarabouni

第1話

「あんまりインタネットばっかりしてると、碌な人間になりませんよ!!!」



母の言葉を無視して、日課のネットサーフィンをしていると、あるツイートが目に入った。

「どれどれ、どんなリプが付いているのかな……」

俺はリプライ欄を開く。


初めに目に入ったのは、投稿主によるアフィリエイトリンクだった。

ニュースサイトのリンクが、ズラリと並んでいる。


何も珍しいことではない。こんな転載ツイートで金儲けを企む、業者の常套手段だ。


リプライはこのアフィの下に埋まっている。


俺はページのスクロールを始めた。


ホイールの一回転


二回転


三回転……


十回転ほどした時、俺は違和感を覚えた。


アフィリエイトが、長すぎる。


不意に、とてつもない恐怖感に襲われた。


まるで、底の見えない渓谷の際に立っているかのような、そんな感覚だ。


――――このアフィリエイトに、終わりはあるのだろうか。


――――このアフィリエイトの先に、一体何があるのだろうか。


もうこれ以上スクロールするな!という静止と、先を見たいという好奇心がせめぎ合い、指先が震え出した。


気が付くと俺はホイールをクリックして、アフィリエイトの先へと進んでいた。


「レイプされた小学生に父親がかけた意外な一言とは……」

「海外で作られているスイカはちみつが美味しそう」


しょうもない記事のリンクが飛び飛びに、目の前を横切る。


もはや恐怖はなかった。


そうして、私はスクロールし続け、数十年が経過した……


それからさらに数百年……


数千年……


意識すら曖昧になったある日、ついに「底」へとたどり着いた。


ホルマリン漬けの脳だけとなった私に、全身を感電させられたかのような衝撃が走った。


徐々に表れていく、投稿主のとは異なったアイコン、そしてツイート。


既に捨てたはずの心臓が、高鳴るのを感じた。


ゴクリ……。


「それはとても良い!❤」


これは……


これは………………


これは………………………………………………………………


AIbotじゃねえかあああああああああああああああああああああああ!ぁ!


その瞬間、私の意識は途絶えた。


最期になって、私は母の偉大さを知ったのだった。


母「ほーらやっぱり碌な人間にならなかった!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

命綱もなしに。 @yabikarabouni

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画