「油」(8月23日)
「はい、どうもー。シンタマカブリでーす」
「よろしくお願いしまーす。元気な
「
「お客様は神様ですけどね」
「じゃあ、お前が柏手を打たねえとな」
「(パン、パンと客席に向かって手を打つ)」
「本当にやらなくてもいいんだよ。さっさと漫才はじめるぞ」
「そういえば、ちょっと聞いてほしい話があったんだ。このまえ母親から『あぶらを買ってきて』って言われてさ」
「うんうん」
「スーパーに行ったら、めっちゃ色んな種類の油が置いてあるじゃん」
「あー、確かにね」
「どれを買えばいいのか、まったく分からなくてさ。適当に買って帰ったらめっちゃ怒られたんだけど、どれを買えばが正解だったん?」
「知るかあ! そんなん、買う前にかーちゃんに連絡すればいいだけだろ」
「そんときたまたまスマホの電源切れてて、連絡ができなかったのよ。そういうときに買うべき油はどれだと思う?」
「えー、そんなんサラダ油でいーんじゃないの?」
「いやいやいや。サラダ油って。そんな得体の知れない油を買うなんてできるわけないじゃん」
「得体は知れてるだろ。この国で一番有名な油なんだから」
「じゃあお前、サラダ油が何からできてるか知ってるか?」
「え?」
「だから。油っていっても原料が必要だろ? ごま油は何からできてるよ?」
「ごま」
「オリーブオイルは?」
「オリーブ」
「ココナッツオイルは?」
「ココナッツ」
「サラダ油は?」
「ああああああ! 本当だあああ!! 俺はサラダ油のことを全然知らない!!」
「だろ? 僕からすれば、原料もわからない油なんか買っていけないわけよ」
「一理ある。じゃあごま油にしたら?」
「あいつはちょっと主張が強いんだよね。ごま油を使ったらぜんぶ中華になっちゃいそう」
「言いすぎだろうと思いつつ、同意している自分がいる。オリーブオイルは?」
「あれは速水もこみち専用だから」
「違うよお!!? たしかにもこみちさんのイメージは強いけど。別に彼しか使っちゃダメなんて決まりはないから」
「でもさあ。オリーブオイルを買って帰って母親から『あらあら、この子ったら速水もこみちに憧れてこんなもの買ってきたのね』とか思われたら恥ずいじゃん」
「お前んちのかーちゃんって、そんな感じなの? それはちょっとヤダな。じゃあえごま油にしよう」
「高い」
「え?」
「えごま油は値段が高い。持たされた資金では買えない」
「あー。なるほどね。でも、そうなると買える油がなくない?」
「いやあ、ホントにそう。何かないかってスーパーの中を必死で探したからね」
「そこまでやっても怒られるんだから、買い物って大変だな。結局なにを買って帰ったのさ」
「ぎゅうし」
「……は?」
「牛脂」
「……はあ?」
「だから、牛の脂をね」
「知ってる、知ってる。そりゃ怒られるよ」
「やっぱラードの方が良かったかな?」
「牛か豚かって話はしてないから」
「じゃあ、バターとか」
「なんでさっきから固形ばっかりなんだよ。もっと液体状のものを買っていかないと使い勝手が悪いでしょうが」
「ああっ! そっか。そうだよな!」
「やっとわかってくれた?」
「正解はラー油だったかあ」
「ダメだコイツ。いい加減にしろ」
【了】
🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤
8月23日は「油の日」です。
宇佐八幡宮が九州から大山崎に遷宮された出来事にちなんで……なんで油?
と思ったら、日本の精油発祥の地が関係しているとか。
ちなみに『サラダ油』の原料は菜種、大豆、トウモロコシ、ゴマなどの油を調合したものだろうです。へええええ。
さあ。残りは8本!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます