「献血」(8月21日)
「はい、どうもー。シンタマカブリでーす」
「よろしくお願いしまーす。拍手ありがとうございまーす。僕が低血圧というわけでもないのに朝起きられない進藤で、隣にいるのが高血圧をかたくなに認めようとしない玉城ですー」
「だから、認めないとかじゃなくて。130台はギリギリセーフなんだって」
「……どなたか良かったら、彼に胡麻麦茶を差し入れしてあげてくださーい」
「たしかにあのCMだと130から飲んでるけどもっ」
「僕、最近ね。なにか世間様のお役に立てるようなことないかなあって考えてる」
「なになに? どうしたの、急に。お前そんなこと言うタイプだっけ?」
「こんな毒にも薬にもならないような漫才してても、誰かの役に立ててる実感って湧かないじゃん」
「いやいやいや。誰かを笑わせるって大切なエンタメよ?」
「舞台で滑り倒すのもエンタメ?」
「それは前のめりに転んでるだけだから、大目に見て」
「とにかくさ。手軽にちゃちゃっと世間様のお役に立ちたいわけよ」
「手軽にちゃちゃっと、て。心の根っこにいるブスが顔出しちゃってるぞ」
「気軽に参加できて、すぐに終わって、体力的にもキツくなくて、お得感もある、みたいなヤツない?」
「そんな『どっかに楽で高収入なバイトない?』みたいな聞き方されてもだな」
「やっぱないかあ」
「あるよ」
「ないよなあ。そんな都合のいいもの、あるわけ……えっ! あるのぉぉぉ!?」
「都内なら色んなところで気軽に参加できるし、15分くらいで終わるし、体力はいっさい要らないし、終わったらマンガ読みながらジュースをタダで飲める。そんなヤツあるよ」
「マジか! ちょっと教えて、教えて」
「知らない? 献血っていうんだけど」
「ケンケツ?」
「手術とかで使う輸血用の血液なんかで必要な血を提供するボランティアだよ」
「本当ならちょっとやってみたいけど、不安だから練習させてよ」
「俺もそんな詳しくないけど、やってみるか」
「すみませーん。ケンエツ? ケンセツ? 的なアレしたいんですけどー」
「ケンケツだよ。四文字くらいは覚えてくれよ。まあいいや。献血にご協力頂きありがとうございまーす。それではこちらの申込用紙に記入をお願いします」
「えー。めんどくさいー。そんなんあるなんて聞いてない」
「最初だけ。最初だけだから。これくらい我慢してよ」
「もう。今回だけだぞ?」
「むしろ本番でやってくれよ。……はい、ありがとうございます。それではいくつか問診していきますね。今日の体調はいかがですか?」
「はい元気です!」
「小学生みたいな元気の良いお返事ですね。最近、薬を飲んだり、注射を受けたりしましたか?」
「あっ! さっき目薬さしちゃいました」
「目薬は大丈夫でーす」
「あと『オモシロクナ~ル』もちょっと飲んじゃいました」
「薬ラムネも大丈夫でーす。っていうか、アレまだ売ってたんだ!?」
「なんで『オモシロクナ~ル』を飲んでるのに面白くならないんですかね?」
「それはバッファロー吾郎さんに聞いてもらっていいかな。まあ、こんな感じでいくつか質問されるから、正直に答えて」
「なんか献血って思ったより大変なんだな」
「他人の体の中に入るものだからな。事前のチェックが大切なのよ」
「他人の体の中に入るって、なんかエロい」
「変な妄想してるところ悪いけど、相手はニブイチで男だぞ」
「モチベーション下がること言うなよ」
「ごめん、ごめん。まあ、こんな感じで血圧とか体重とか熱とか測って、注射でサッと血を採るわけよ」
「それが終わったら、ジュース飲みながらマンガ読んでダラダラできちゃうわけだ」
「ダラダラできるかは知らんけど、まあ大体そんな感じ。いいボランティアだろ?」
「話を聞いた感じ、悪くないね。じゃあ早速、明日一緒に行こうぜ」
「あ、俺は無理。高血圧は献血できないから」
「「ありがとうございましたー」」
【了】
🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤
8月21日は「献血の日」です。
『輸血用血液を献血により確保する体制を確立』することを閣議決定した日なんですねえ。さあ、皆さんもLet’s献血!!
ついに残り10本。最終回に向けてカウントダウンです!
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