「パイナップル」(8月17日)
「はい、どうもー。シンタマカブリでーす」
「よろしくお願いしまーす。拍手ありがとうございまーす。まーいにーちー、まーいにーちー、僕らはぶーたいのー、上で、やらーされーて、嫌んなってますー♪」
「『およげ!たいやきくん』の替え歌で愚痴を言ってんじゃないよ」
「お前さ、パイナップルのことどう思う?」
「どう思う? パイナップルを? ちょっと意味がわからん」
「だから、パイナップルという果物について思うところはないか、って聞いてんの」
「別にないよ。パイナップルに思うことなんて」
「(黙って相手の顔をみつめながら)…………ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー。って、古い古い。今どき、みのもんたの真似しながらそんなこと言うの四十代のオッサンだけだぞ」
「いや、僕ね。酢豚に入ってるパイナップルが許せないのよ」
「あー、いるいる。ネットで『酢豚 パイナップル』って入れたら、サジェストで『いらない』って出てくるもんな」
「タイムマシンが開発されたら、酢豚にはじめてパイナップルを入れたヤツを始末するって決めてんだ」
「怖い怖い怖い。歴史が変わるかもしれんから絶対やめて」
「それからパイナップルケーキ。あれも許せない」
「パイナップルケーキって台湾のお土産とかでもらうやつ?」
「そうそう。台湾に旅行いったヤツ、みんなアレ買ってくるでしょ?」
「まあ、定番のお土産だからね」
「マジで迷惑」
「なんでよ。パイナップルケーキは美味しいからいいじゃん」
「パイナップルケーキ『は』、て」
「おっと、本音がポロリ」
「とにかくさ、パイナップルケーキなんか日本でも全然売ってるから。なんならカルディでも売ってんだよ。わざわざ台湾行ってまで買ってくる意味なんかないぞ、あんなもん」
「あんなもんとか言うな。そうかも知れんけど、お土産っていうのは気持ちなんだから。文句つけてんじゃないよ」
「それからパイナップル!」
「ついに本体にもクレームきた」
「お前、ガードが固すぎるだろ」
「ガード、て」
「分厚い、堅い、棘付きって。カットするだけで手がボロボロになるだろうが」
「お前の手もガードしてやれよ」
「この前、海外のYouTuberがパイナップルの皮を使って盾作ってたからな」
「マジで? 剣と盾の、あの盾?」
「マジマジ、あの盾。パイナップル10個分の皮を繋ぎ合わせて、形もちゃんと盾型にして、持ち手まで付けてた」
「こだわりが強い。海外にも中二病っているんだなあ」
「火炎放射器で炎を当てて『ぜんぜん熱くないね』とか『まるでドラゴンシールドだ』とか言いたい放題よ」
「酢豚やらケーキやらにされてきたパイナップルも、さすがに盾にされるとは思わなかっただろうな」
「あとね、パイナップルって名前も気に入らない」
「名前?」
「パイナップルって松ぼっくりを意味する『パイン』とリンゴの『アップル』を組み合わせた造語なんだけどさ、『リンゴのように甘くて美味しい松ぼっくり』って意味なんだってよ」
「これね。諸説ありますんで、パイナップル警察の方はどうかお手柔らかにお願いしますー」
「パイナップルとリンゴは全然味違うだろ!」
「確かに。その二つはぜんぜん味が違うよね」
「君ってリンゴに味が似てるよね、って言われてパイナップルが喜ぶと思ってんのか!?」
「喜ぶわけがない! これは間違いなくハラスメント」
「僕は決めた! タイムマシンが開発されたら、パイナップルにパイナップルって名前をつけたヤツを始末しにいくよ」
「おい!」
「止めないでくれ! もう……決めたんだ」
「一緒に行くから、その時は俺も呼んでくれ」
「「どうも、ありがとうございましたー」」
【了】
🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤
8月17日は「パイナップルの日」です。
久しぶりの語呂合わせ系記念日。8(ぱ)1(い)7(なっぷる)です。
7が背負ってる文字数エグいですね。
さて、残りは14本。
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