第18話 残り6日。ナマコ、カニ、そして
女子を連れた男子高校生と大学生らしき男三人。
一体どちらの足が早いのか? そんなのは明白だ。
俺が実は空手の有段者とか、
ボクシングを習っているとか、
ムキムキのマッチョマンだとか、
そんな異世界話みたいな、俺TUEEE展開が待っているはずもない。
ただひたすら、必死こいて、みのりの腕を強く握ったまま走った。
「ケイちゃんっ」
「────ッ!!」
後ろを振り返る。
俺はみのりを押し出した。
「お前は岩場まで逃げて隠れてろ!」
俺は立ち止まって、両手を広げ、この先に進めないように邪魔をした。
三対一なんて分が悪い。
どうなるかなんて目に見えている。
「だからって、立ち向かわないって選択肢があるわけないだろっ!」
***
遠くから「ゴルァ! なにやってんだー!」と声が聞こえる。
男達が「やべっ」と言って去って行くのが分かった。
俺は丸まってた身体を、ゴロンと動かして、天を仰ぐ。
「あー……いってぇ……」
アイツら人を殺す気か。手加減ってものを知らんのか。
これだからケンカをしたことのない若者は、って俺も若者か。
みのりを横からかっさらった報復に、俺はボコスカと殴られ、蹴られた。
みのりといえば、どうやら上手いこと隠れることが出来たようで、アイツらに見つからなかったようだった。
それもあって、更に殴られちゃったけど、みのりが無事なのは良かった。
「これがほんとのタコ殴り~……ってかぁ」
今日は顔面にナマコ、股間にカニ、お次はタコときたもんだ。
もうなにが来ても、俺は驚かないぞ。
「大丈夫か?」
そう声をかけてくれたのは、先ほど「ゴルァ!」と声をあげてくれた人。ガタイの良い、ちょっと強面の男の人だ。なるほど……それでアイツら逃げたんだな。
差しだされた手を掴んで、俺は身体を起こす。それから、「すみません。ありがとうございました」とお礼を言って、その人と別れた。
俺はヨロヨロ歩きながら、岩場へ向かう。
「おーい! みのりー! もう出てきていいぞー!」
何度か大声を張り上げて、みのりを呼ぶ。
すると小さな声で「ケイちゃぁん」と聞こえてきた。
声のする方へ行くと、涙をいっぱいに溜めたみのりが、そこに座り込んでいた。
「おう! もう出てきて大丈夫だぞ。アイツら、いなくなったから」
「……うう……うぅ」
口がへの字になって、それまで頑張って留まっていた涙が零れはじめる。
「なんだ? どうした? 大丈夫か?」
「だっ、大丈夫じゃないのは、ケイちゃんの……ほうだよぉおお」
「えっ? 俺?」
「ごめん……なさぃい~」
みのりがボロボロと泣いて、俺はオロオロする。
俺が鏡を見て、自分の顔の状況を確認するのは、もう少し後のことだった。
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