第14話 残り10日。ショッピングモールでお買い物

「まさか、みのりに断られるとは……」


 昨晩、買い物に誘った返事が返ってきた。

 返事は「ノー」だった。どうやら先約があったらしい。


(…………)


 先約はきっと女の子だろう。女の子だと思う。

 男ではないと、思う。たぶん。


 俺はショッピングモールへ行き、水着を扱ってるお店を探す。

 二階の広めの通路に、水着の特設コーナーが作られていた。


 特にこだわりもないし、適当に選んで、ちょっとお昼は豪勢にしようかな。

 なんて考えていると後ろから声をかけられる。


「あれー? もしかして、門川?」

「……凛那か」


 私服姿の凛那が、俺に近づいてきた。

 俺が手に持っていた水着を見て、凛那が「だっさ!」と言う。


「なんで、タチウオ柄の水着なの? そのセンス、全く理解できないんだけど~!」

「いや、これを選ぼうと思ったわけじゃねーよ。珍しいなと手に取っただけで」

「はいはい。言い訳は結構」


 え。本当に珍しいと思っただけだぞ?

 なんで、センスゼロ認定されてるんだよ。ちょっと待て。


「ちげーし! 俺が買おうと思ってたのはこっちだし!」


 バッと手に取った水着を凛那に見せる。

 凛那は、「へぇ……」と微妙な顔をしていた。

 俺は手に持っている水着に視線を落とす。


 ──中央部分が金色のブーメラン水着。


「あ、いや、ちがっ!」


 ダメだ。タチウオ柄以上のダメージを喰らってしまった。

 うっうっと心で涙を流しながら、俺はそれを戻す。

 凛那は「仕方ないなぁ」と言いながら、俺の隣に並んだ。


「凛那……?」

「あんた、センスなさすぎるから、アタシが選んであげる」


 カチャカチャとテンポ良くハンガーを動かし、水着をチェックする凛那。

 赤、青、緑とカラーごとに、センスの良い水着をホイホイ抜き取っていく。


「あんたが何色が好きか分かんないから、色ごとに選び出してみた。どう? これだっ! ってのある?」

「そうだなぁ……この緑のヤツとか好きかも」

「あんた分かってるじゃーん! アタシもそれが一番いいと思う!」


 バッチリ決めたメイクの顔がニカッと笑う。

 金髪なのことも影響しているのか、ひまわりを思わせるような笑顔ドキッと心臓が跳ねた。


 俺は「買ってくる」と言って、慌ててレジへ向かう。

 ちょっと顔が赤くなりそうな自分を誤魔化した。



「じゃあ、行こっか! 門川」

「……どこに?」


 会計を済ませた俺を凛那は待っていた。

 そして、どこかに行くと言う。


「えー? アタシのおかげで水着決まったんでしょ? なにか奢りなさいよ」


 スマホで時間を確認すると、あと30分でお昼時だ。

 確かにコイツのおかげで早々に水着が決まった部分はある。

 ふぅ……仕方ないなぁ。


「フードコート内のもの限定な。高いものは頼むなよ」

「えっマジでいいの!? らっきー! 言ってみるもんだねっ!」


 俺と凛那は三階のフードコートへ移動した。

 ザワザワとするフードコートで、俺と凛那は向かい合って、お昼ご飯を食べる。


「……ん?」

「どうした? 門川」

「あ、いや。なんか、みのりがいたような気がして……」

「えっ? そうなの?」


 凛那は周りをキョロキョロする。

 俺も見回したが、みのりらしき人は見当たらなかった。


「気のせい……か?」


 更に人が増えてきたようだ。

 ザワザワとするフードコート内で、みのりらしき姿を見ることは、もうなかったのだった。

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