第6話 残り18日。キャットファイト

「アハハハハ! みのりママ最高ー!」


 凛那はそう言って爆笑している。

 目の前にある、とてつもなく長いそうめんスライダーを見て、大爆笑していた。



 凛那が爆笑する少し前──キャットファイトが始まると、生唾をゴクリと飲んで、スマホを構え、待っていた俺なのだが、その期待は外れて終わった。


『俺のことを取り合うふたり』


 それは、俺の考えた物語の中で、これから起こること。


 現実世界のふたりは、そもそも、俺に惚れてなんていないのだ。

 惚れてもいない、ただの同級生同士が出会ったら、どうなるのか?


「あっれー? みのりじゃん! なんでここに?」

「つばさちゃんだ~! あっネコちゃんもいる~! ケイちゃん、このネコちゃんどうしたの?」


 ──仲良く会話をするだけでした。キャットファイト終了。ちーん。お疲れ様でした。

 しかも、ふたりは結構仲が良かったらしい。キャッキャと話が弾んでいる。

 知らなかった。ギャルと天然って、息が合うんだな。


 ふたりは、互いの状況を確認したのち、お昼は一緒にそうめんを食べようという流れになった。



 三人でみのりの家に来て、おばさんが流すそうめんを、凛那とみのりが仲良くすくって食べている。



「ニャーオ」



 俺は腕から抜け出そうとする猫を、抱きかかえ直す。

 ふたりが食べ終わるまで、コイツがスライダーに手を出さないように見張る係だ。


(……ライバルキャラがヒロインと仲が良い。困ったな。どうやって話を展開しよう……?)


 あ。あと、それとなく凛那に、誕生日や身長、好きな食べ物や好きな異性のタイプを聞かねば。キャラ設定は大事だ。

 小説のことを考えて、うんうん唸っていると、どうやら猫を強く抱きしめていたらしい。怒った猫がガブッと俺の手に噛みついた。


「いっでぇええええええええええ!!!」


 みのり家に俺の悲鳴が轟く。


「こんのぉ! お前ぇ! 恩人に噛みつくとはいい度胸だ!」

「フーッ!」


 ドタドタドタと家の中を俺と猫が走り回る。

 俺とキャットのファイトが、今まさに始まったのだった。

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