第4話 残り20日。ライバルはどうする?

 8月12日、月曜日。


 ジャンルは決まった。

 主人公もヒロインも決まった。


 あとはこのふたりをくっつける為に必要なもの、それは──ヒロインのライバルだ。


「主人公を取り合うキャラが必要だよな」


 幼馴染のみのりは、ほわほわ系の天然だ。

 ならば、ライバルキャラは対極な位置にいる人物がいいだろう。


「みのりと正反対のヤツかぁ……うーん」


 どんなヤツがいいだろう?

 生徒会長? お嬢様? スポーツ系女子?


「……ダメだ。思いつかない」


 俺はオーバーヒートをおこした脳みそを冷やすべく、自室を出て、一階へと降りる。

 キッチンへ行き、冷蔵庫を開けてアイスを食べ──


「……ない」


 買っておいたはずのアイスがない。

 さては、母さんがまた勝手に俺のアイスを食べたな?


「ないと食べたくなるのが人間……」


 無性にアイスが食べたい。食べたいぞ。


 俺は着替えて、スニーカーを履き、くそ暑い外へと出る。

 目的地は歩いて五分もかからないコンビニだ。


 ジリジリと照りつける太陽の日差しは、凶器そのもの。

 毛穴という毛穴に突き刺さり、正直痛いくらいだ。

 汗をダラダラかきながら、帽子を被ってくるんだったと後悔する。


 信号を渡って、ようやく店にたどり着いたとき、誰かが店の人と言い争っている声が聞こえた。


「だーかーらー! ちょっとだけって言ってるじゃん!」

「そう言われても、ダメなものはダメなんだよ」


 見覚えのある高校の制服、見覚えのある金髪、見覚えのある浅黒く、日焼けした肌。手首にはピンク色のシュシュ。


「……凛那りんなつばさ?」


 同じクラスのギャルが、元気なさそうな猫を抱いている。

 名前を呼ばれて振り返った凛那と俺の目が合った。


「え? 門川?」


 ──俺の中でライバルキャラが決まった瞬間だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る