第2話 残り22日。カテゴリーはラブコメ。さてどうする?

 8月10日。

 朝の7時に俺は目が覚めた。



 昨日、カタカタとキーボードを叩きまくったものの、いまいち筆が乗らず、一文字だけ残して、俺は他の文章を削除した。


 うっ、卑怯でごめん。

 運営さん、ちゃんと書くから許して。


 削除した後も、うんうん唸ったけれど、やはり良い案は出てこない。

 仕方がないので、昨晩は悩みながら、そのまま寝た。


 そして朝、ガバッと起きて、俺はひらめく。


「そうだ、ジャンルはラブコメにしよう!」


 自分が学生であることを武器にした物語。

 これが一番、手っ取り早い。


 青い春の真っ盛り。

 ピッチピチの17歳。

 これを活用しない手はない。


「主人公の名前は、どうしようかな。うーん……いっそ、俺にするか?」


 ああ、現実とは無常ナリ。

 門川圭17歳。現在、彼女なし。


 彼女の『か』の字もない俺は、空想の世界で彼女を得ることに決める。


「…………」


 うっ……なぜだろうな……涙が零れそうだ。


 ジャンルは決まった。

 主人公も決まった。

 さて、あとはヒロインだ。


 脳みそを捻っていたら、あっという間に時間ときが経ち、俺のお腹がぐぅと鳴る。


「腹減ったぁ~……もう12時か」


 階段を下りて、リビングへ行く。

 父さんと母さんは、昼間は仕事で家にいない。

 夏休みの間、家にいるのは俺ひとりだ。


 冷蔵庫を開けて、中を物色していると、ピンポーンとインターホンが鳴った。

 モニターを確認するとそこに映っていたのは、隣に住んでいる幼馴染の姿。


 俺は玄関に行き、そのドアを開く。


「ケイちゃんご飯もう食べた~? お母さんが、まだなら一緒にそうめんスライダーやらないか? だって~」


 俺の前に現れたのは、肩につかないくらいのボブで黒髪、少し太めの眉と奥二重の目を持つ女の子。

 ほんわかとした雰囲気をまとう、癒しと天然の集合体──それが俺の幼馴染、『藤見ふじみみのり』だ。


 お昼ご飯のお誘いに、俺はラッキーとそれに乗る。


「おばさん、またスライダーやるの? 好きだねぇ」

「今日はね~麺がカラフルなんだよ~」

「麺の色が変わっても、味は変わらないだろうに……」


 部屋着のまま、スニーカーを履いて、家を出る。

 こうして、俺は幼馴染の住む隣の家へ行き、昼飯にありつくのだった。




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